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落ちこぼれの魔獣狩り  作者: 織田遥季
あなたへ
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あなたへ

筆が乗ったのでいつもより少し長めです。

あとTwitter始めました→ @0D4H4RUK1

――心の底から殺してやりたい


 そう思ったのは、リンネにとってこれが()()()だった。


「お前は、私が殺す」


「やってみろエルフ。ただ……『浮遊束縛(フロート・バインド)』!」


 博士がもう意識のなくなりかけているリディアに魔法をかけ、己の前に浮遊させる。


「こちらには盾がある! そう簡単に攻撃……」


「黙れ」


 一切の躊躇なくリンネが剣を投げつける。

 その軌道は直線で、このままいけば間違いなくリディアに突き刺さる。


「ぎゃはは! お前気でも狂ったか!?」


「……」


 博士の問いにリンネは答えない。


「りんね……?」


 ララが不安そうにリンネを見る。

 それでもリンネは真っ直ぐに剣を見つめて動かない。

 リディアに剣が突き刺さるまであと数センチ――


――今だ!


「『座標転移(ポイント・ワープ)』!」


 リンネの魔法によって、剣が消える。


「ぐうっ!?」


 そして消えた剣は、気がつけば博士の腹部に深々と突き刺さっていた。


「な、に……?」


 博士の魔法が解け、リディアが崩れ落ちる。


「まま!」


 駆け寄ってそれを支えたのはララだった。


「……ララ」


「まま、だいじょうぶ……?」


「……ええ。ママは大丈夫よ……ゴホッゴホッ!」


 リディアが血を吐く。

 大丈夫とは言ったものの、もう死が近いことは誰よりも理解していた。


「ままぁ……しなないで……しなないでよぉ……!」


「ララ、少し見せてもらってもいいか?」


 そう声をかけたのは、いつの間にだろうか、魔獣の群れを壊滅させていたシンピだった。

 涙でぐちゃぐちゃになった顔で、ララが頷く。


「ありがとう。『治癒神の瞳(アスクレピオス・アイ)』」


 魔法によってリディアの状態を解析したが、既にシンピの手におえる容体ではなかった。

 特に内蔵へのダメージが酷く、今すぐ医者に見せたとしても救えるかわからない。


「……シンピ、久しぶりね」


「ああ、久しぶり……会えてうれしいよ」


「本当に……ありがとうね。最期、あなたに会えて嬉しいわ」


「それは良かった。あとでベル達のところに連れていくから……ララのことも私が責任を持ってなんとかする。今はララと話して、あとはゆっくり休むといい」


「ええ。本当にありがとう……シンピ、大好きよ」


「私も大好きだ、リディア。愛してる……それじゃあまた」


 そう言ってシンピは立ち上がる。

 振り返る前、リディアが笑顔だったことが嬉しくて、悲しくてどうしようもなかった。


「ララ、ママは疲れたから少し寝るみたいだ……おやすみを言ってあげてくれ」


「しんぴ、ままは……!」


「……すまない」


 その一言で、ララは幼いながらに理解した。

 母はもう助からないのだと。


「……わかった」


 近づいて、そっと膝を折ってララは母の傍らに座る。

 その場所は、この四年間を親子が過ごした場所だった。


「まま」


 溢れる涙を抑えきれないままでララが話しかける。


「ララ……ありがとうね、迎えに来てくれて……」


 ララは首を横に振る。

 嗚咽と悲しみが溢れて、彼女は言葉を紡ぐことも難しかった。


「わたしのっ……せいで……!」


「……違うわ、ララ。あなたのおかげで、私は大切な人に会えたわ」


 リディアはもう力の入らない手で、ララの頭を撫でる。


「本当にありがとう、ララ。あなたは……優しい子よ……」


 そう言って、リディアは笑ってみせる。

 その笑顔はとても、とても優しかった。


「あなたの、力は……大切な人のために……」


「うん……! うんっ……!」


 涙と鼻水まみれの顔でララは頷く。

 それを見て、リディアは安心したように瞳を閉じた。


「……ママ、疲れちゃった……そろそろ、寝るね……」


「うんっ……おやずみ、まま……」


「おや……す、み……」


 その言葉と共に、ララの頭からリディアの手が落ちる。

 部屋には、ララの泣く声が響いた。





「た、助けてくれっ……!」


 時は少し遡り、リディアから少しだけ離れた同室内。

 体に剣が突き刺さり、命乞いをする博士の前にはリンネが立っていた。


「……“奴”はこの研究所でなにをしようとしていたの?」


「“奴”? ああ……魔獣王様のことか。それに答えたら見逃してもらえるんだろうな……?」


「ええ。それでいいわ。話して」


 それを聞いて、博士の口角は吊り上がった。


「いいだろう……あのお方はここで自分の駒を作ろうとしていた。普通の魔獣よりも強力な駒だ」


「それが魔獣と人間のハーフ?」


「ああそうだ。魔獣王様がそうだったようにな」


――そういうことか


 リンネは獄狼と戦っているレオンに目を向ける。


――きっとレオンは知らないはず。それなら、まだ


「……“奴”の居場所は? それと、ここ以外に研究所はある?」


「知らない。なにも聞かされてない……おい! もういいだろ! 質問には答えたから早く……」


「そう。それなら死ね」


 リンネは博士から剣を引き抜き、ゆっくりと構えた。


「ま、待て! 話が違うだろうが!」


「あら。言ったじゃない」


 そして剣は振り下ろされる。


「お前は、私が殺すって」


 そうして禿げ上がった博士の頭は、見事二つに割れた。

 返り血で、リンネの美しい金髪が赤に染まる。


「……これで私も地獄行きね」


 目の前の醜い死体を前に、そのエルフは一人呟いた。

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