熱
「ノシュキルの防衛!? それに、ウルフ・ハルベルトの殺害って……」
リンネが驚きのあまり立ち上がる。
それも当然。
シタンの口から飛び出した依頼内容は、あまりにも突拍子のないものであったのだ。
「それはつまり、ウルフがノシュキルの町を襲撃しようとしている……ということで間違いありませんか」
あくまで落ち着き払った口調でシンピが確認する。
しかし、その内心が穏やかでないことは察するに余りあった。
「そういうことだね。タイミングと大凡の規模についても目星がついてる」
「それは……確かな情報なのですか?」
「間違いないよ」
涼しい表情のままのシタンが飄々と断言する。
されど一同の面持ちが疑念を抱えたままだったので、仕方ないといった風にシタンは言葉を続けた。
「情報源については秘密……と言いたいところだったんだけどね。君たちにはこの前の恩もあるし信頼関係も築きたい。だから特別に教えよう。ただし口外は無用だ。いいね?」
一同が頷くのを確認して、シタンは情報源を開示する。
「スパイだよ。ギルド本部は様々な町や団体に信頼できる人材を送り込むことでその行動を把握している……勿論ノシュキルの町やウルフ・ハルベルトの組織だって例外じゃない」
ある意味では安直な情報源に一同は衝撃を受ける。
「スパイっつったって口で言うのは簡単だけどよ……実際できんのか? そんなこと」
ごもっともなビーディーの質問に、シタンは笑顔を浮かべてみせた。
「不可能ならこんな依頼、君たちに出来ないよ……とは言っても勿論簡単じゃない。特にウルフ・ハルベルトの組織は難しくてね……その全容については未だに把握出来てないんだ。だが、組織全体に流れる情報であればこうして掴むことができた。だから」
シタンの眼が鋭く光る。
それは、いつもの好青年らしいシタンのものではなく、連邦ギルド長としてのシタンのものであった。
「だから、頼む。今度こそウルフ・ハルベルトを殺してほしい……あの日と同じ悲劇を、繰り返さないためにも」
その言葉にレオンの胸がほのかに熱を帯びる。
右の拳を強く握り締め、奥歯を強く嚙み締める。
返答はもう決まっていた。
「任せてください、シタンさん。ノシュキルの町に来る魔獣、俺が一匹残らず狩りつくします」
レオンの言葉にララは頷き、リンネは呆れたように、しかしどこか嬉しそうにため息をついた。
「そうだよ。私達が守るから」
「まったく……仕方ないわね。今回も付き合ってあげるわよ」
そう言って笑いあう三人に釣られて、シタンも少し、笑った。
「それじゃあ、頼むよ。僕は他の冒険者たちにも協力を仰いでくる」
「はい。私達もできる限りの準備をしておきます」
シンピの言葉にシタンが頷く。
そしてシタンは、レオンに呼びかけた。
「レオン君」
「はい?」
シタンは小さく笑う。
それは瞳は、勝負に燃える少年の如き眼差しであった。
「勝とう。必ず」
「……! はい!」
確かな熱量を持って応えるレオンを見やり、シタンは去っていった。
その背中に期待と渇望を背負って。




