世界の終わり
よろしくお願いします!
その日は雲一つない晴天。心地よい涼しい風…多くの人にとってはそれはいい天気だ。
だが、俺はそうは思わない。
俺の名前は桜本正也。昨日まではどこにでもいる平凡な高校生のはずだった。
今日からは違う。クラスのみんなはバラバラになり、再編成される。
それは地獄を意味していた。
俺のいたクラスは元々訳ありな子たちを集めたクラスで、矯正組と呼ばれていた。
学校は社会復帰を目指す子供たちの支援に力を入れていたらしいが、言わせてみればこれは建前だ。
本音は歯向かうこともできない孤立した子供をまとめたクラスで、教師や他のクラスの子たちにとって都合のいいサンドバックだ。
だが、昨日まではこうはならなかった。井出先生、担任の先生が守ってくれていたからだ。
先生は優しく、頼りがいのある大好きな人だった。昨日自室で殺されているのが見つかったらしい。
それはそれは目を俯くほど壮絶だったらしい。
昨日の夜警察の人が家に来てそう言われた。
昨日は泣いた。喉がかれるほど泣きまくった。
だが…俺にはいかなくてはいけない理由がある。
「ねえ、大丈夫?」
俺の隣から心配そうな声で黒髪の少女が声をかけてくる。
彼女の名前は桜本優花。苗字は一緒だが、彼女とは幼稚園の頃から付き合いがあって、同じ屋根の下で一緒に暮らしてる女の子だ。彼女とは兄弟ではないあくまでも幼馴染だ。
じつはこれこそが俺が学校に行かなければならない理由である。
「…なんでもない。」
「ホントに?」
「うん。ホントに。」
勿論噓だ。訴えても何も変わらない。
だから何事もないように振る舞う。
あと1年、この1年我慢したらこの学校からおさらばできる。
なんで我慢する。
「…。」
「…。」
2人とも沈黙を守る。とても気まずい。
手元でスマホをいじって、話題を探す。ウェブサイトのトップニュースを見ても、芸能人の熱愛報道やら熱中症注意…別に興味がないんだよね。
他は…「さらに行方不明者が増える。神隠しか?」「円盤状の飛行物体!?UFOか?」
オカルトも好きじゃない。でも、確かに行方不明者は増えてるよな。俺のクラスでも大沼神威、雛月栞奈、近藤正嗣、大宮佳織の4人がいなくなってるし、他のクラスでもちらほらといる。
だが、会話をするほどのトピックではない。特に彼女は怖がりだし、間違いなくひかれるだろう。
なにより全然面白くない。
「ん?」
何かを見つけたかのようなフリをする。
「どうしたの?」
彼女はその言葉に反応する。
「今、あそこになんかいなかったか?」
俺は路地裏を指指す。
その指の先には何もいない。
「なんもいないじゃない。猫でもいたんじゃないの?」
(よし!)
かかった。このきっかけがあれば十分だ。
「ちょっと見てくる。優花先行っておいて。」
「ちょっと!?もう、遅れないでね!」
路地裏に走って入ると、そこは薄暗く誰もいない。
「ちょっと休憩。」
スマホの時間を見て、ぎりぎりまでここにいる。
「現実感ないな。…今日からどうなるんだろ。」
キーンコーンカーンコーン
遠くから予鈴のチャイムが聞こえてくる。
「そろそろ行くか。」
そうしていこうとした時だった。
「行く必要はない。」
奥から足音と声が聞こえてくる。
「誰?」
「自己紹介は後ほど。今はゆっくりとしておくとよい。」
現れたのは黒髪の青年だった。だが、年相応とは思えずとてもミステリアスな感じがした。
それよりも気になる部分がある。何故か俺のクラスの生徒帳を持っている。
「なんで生徒帳を?初対面だよな?」
「それで合ってる。」
「何故それを?」
「言わないし。言うわけないし。言おうとも思わない。
終末を迎えるというのにのんきな奴だ。」
ん?終末?…週末か。何を言ってんだ?
「今日は水曜日ですよ?疲れてるんじゃないですか?」
「…そうくるか。空を見てみろ。」
空を見る。空は真っ暗だった。
ここで時計を確認する。午前8時30分。真っ暗になる時間ではない。
「そうか。疲れているのか。」
確かにこれならすべての辻褄が合う。昨日あんまり眠れてないからな。
「愉快な奴だ。」
なんか鼻で笑われている気がしないでもないけど、気にしない。
だけど…真っ暗闇が落ちてきてね?
「これ現実?」
「現実。」
「マジ?」
「大マジよ。」
マジかあ。あれに呑まれたらどうなるんだ?どう見ても死にそう。
けど…まいいか。
刻々と暗闇が迫ってきている。
5歳のころに両親を交通事故で失って、優花の両親に養子として入って、飯田にはめられてコンビニ万引きの烙印押されて、警察沙汰に。優花の親戚からは冷たい目で見られる。
改めて思い返すと…なんだこの人生!?
どんな星の下に生まれたらこんな人生送るんだよ!?
「うん。最悪な人生だった!」
俺はその言葉だけ残して、闇に呑まれた。
体がどんどん軽くなっていく。感覚が徐々に消えてゆく。
「私の名前はスニッパー。向こうの世界でまた会おう。」
その言葉を最後に俺は意識がなくなった。
補足:飯田はこの学校の生徒のことです。




