第56話 鉄の防壁、あるいは一月の重圧
1月6日
いつもは7時には目が覚めるんだけれど、時刻は8時……大寝坊だ。昨夜はあまり寝付けなかったんだ。
普通のPvPと違い、敗れてしまえばそこで予選は終わる。いままでの三戦は、順調に勝ててきた。というより、あまりにも順調すぎた。
今週末の第四戦――準決勝のことが気に掛かり、おかげで寝坊してしまった。
今日から新しい年。二期制だから新学期じゃないけど、オンライン授業が始まる前のホームルームには間に合った。
けど、ゲームが生活のリズムに影響するなんて……だめだなぁ、僕は。
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1月12日
第四戦、準決勝の日。今日勝てば本戦進出、負ければおしまい。
対戦相手は、『アイアン・フォートレス』――リーダーのバロン以下、5人のユニットだ。
ベルさんの情報によれば、彼らの特徴は「圧倒的な防御力」だという。
防御力……また、予選第二戦のような「盾」を使ってくるんだろうか。
戦場は「凍てついた円形大広場」、廃都市の中心部にある、遮蔽物の極めて少ない広場。
戦闘が始まる。
目の前に現れたのは、その名のとおりヘルメットからブーツまでを全身アーマーで固めた集団だった。
動きは軽快で、それでいて銃弾を寄せ付けない強靭さを感じさせる。人間というよりは、SF映画に登場する装甲兵そのものだ。
彼らはその装甲に物を言わせ、遮蔽物がなくても平然と歩いて距離を詰めてくる。そしてミニミを腰だめに構え、空間を圧殺するようなフルオートの弾幕を容赦なく浴びせてくる。
陣形は、リーダー・バロンを中心に方位179、距離151。一人で正面を受け持ち、重厚な装甲で狙撃をわざと「受けて」注意を引くつもりだ。
残り四人は、左翼(方位151・距離113)と、右翼(方位211・距離127)に二人一組で展開し、三方から包囲するように圧殺陣形を敷いてくる。
全員でミニミをフルオート射撃し、僕たちの数少ない遮蔽物を削りながら前進してくる。
「テツさん、ミニミで応戦。けど、相手は左右に分かれているから左を中心に掃射」僕は近い方の敵を指示する。
「うらー」
パパパパパパパパ!
敵のミニミの発射音にあわせ、テツさんのミニミの発射音。
「エイトはグレネードで、右と中央の手前5前後に連射。アシスト・マーカー入れて」
「お、おう!」
アシスト・マーカーを入れることで、敵のゴーグル内には予測線が見えるから牽制にもなる。
スポン!
M16A4のバレルの下に装着されたM203から放たれたグレネードは、大きく山なりに飛翔する。
2秒後ドン! という音と共にオレンジ色の閃光と、砕け散った石の粉塵が右側の敵の前に舞い上がる。
続いて10秒後、またスポンという音。
今度は中央だ。
僕はそのすきに右側の敵の装甲の首周りを狙う。
ジャッ――カチッ――ガチッ――ドコォォォォンッ!!
吸い込まれるように、炸裂弾が硬質な装甲の隙間で弾け内部から粉砕した。
一人、続いてもう一人、ポリゴン化していく。
左翼の敵兵は、テツさんと応戦していたが、反対側で起きた惨状を見て中央のリーダーの元に逃げる。
僕はその二人の股関節あたりを捉え、倒していく。
残るはリーダーのみ。
彼は敗色が色濃くなったのを知り、捨て身でミニミを乱射しながら突進してくる。
僕らは全員で、応戦した――。




