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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者


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認めてくれた初めての人

食事を終え、次の目的地である水族館へ向かって歩いていると、不意に東雲さんがくるりとこちらを振り返った。少し肩の力を抜いたような様子で、どこか安心したように俺を見る。


「にしてもちょっと安心したかも。連って、思ってたより話しやすいんだね」

「……俺って、そんなに取っつきにくいイメージあったの?」


思わず聞き返すと、東雲さんはあっさり頷いた。


「うん。あったよ。だって、何でもできる人じゃん。……だから、もっと気取ってるのかなって思っていた」

「うっ、マジか……そんな気取ってるつもりなかったんだけどな」


自分では、できるだけ自然体でいるつもりだった。クラスメイトとして、悩みを打ち明けられるくらいの距離感ではいたいとも思っている。


それなのに、逆に近寄りがたいと思われていたのだとしたら、少し自分の行動を省みた方がいいだろう。もう少し、自分から話しかけたりした方がいいのだろうか。


そんなことを考えていると、東雲さんが慌てたように両手を振った。


「あっ……いっとくけど、連に罪はないよ。ただ……文武両道で隙が無いから近寄りがたいだけ」

「それはそれで問題だろ……それに俺自身はほんとに大したことないんだけどな……」


肩を小さくすくめながら苦笑してしまう。褒められるのは嬉しいが、少し過剰評価な気がする。現に、目の前にいる二人の方が俺よりもずっと優れているのだから。


東雲さんの気さくな態度は、相手に信頼されやすくみんな頼りにしている。望未は相手の気持ちをよく見ていて、会話の流れをさりげなく整えるのが上手い。誰かが話しづらそうにしていると、自然に話題を振ったり、タイミングよく相槌を打ったりする。


そんな俺の気持ちを悟ったのだろうか、望未は俺の方を向いて、柔らかい笑みを浮かべる。


「連君は、自分の事を過小評価しすぎだと思うよ」


まっすぐな視線だった。からかいでも、気休めでもない。ただ、思ったことをそのまま伝えてくれている。————そんな目で俺を見つめてくれる。


「遠目で見た体育。チームメイトが楽しめるように積極的にパスしたり、防御に徹したりしてたよね。そんな風に周りを見て動けるのって、誰にでもできることじゃないと思うよ」


俺を肯定してくれるその言葉に、思わず息が詰まる。確かに、彼女の言う通りの立ち回りはしていた。けれど、それを指摘されたことは涼花意外には一度もなかった。上手く立ち回れていたつもりだった。だからこそ、余計に驚く。


(……まさか、そんなところを見ていてくれたなんて)


そんな誰も見ていない部分に彼女だけは気付いていてくれて、恥ずかしいと思う気持ちと、それ以上に嬉しさを感じる。けどやっぱり恥ずかしくて、思わず口元を右手の甲で隠してしまう。


……バレてたの、恥っず。逸らした視界の端で東雲さんも驚いたのだろう、思わず声をあげる。


「えっ……マジで?」


確認するように望未の方をまじまじと見つめる。


「そうだよ」


東雲さんは今度は俺の方を見た。まるで本当なのか確かめるような視線だった。当の俺はというと、まださっきの恥ずかしさが抜けていなかった。それを確認すると。


「へぇ~、連ってそんなこと考えながらプレーしてたんだ」


なんて、にやにやと悪戯っぽい笑みを浮かべながら俺の方を見ている。なんか今日は、やたらといじられている気がする。


「まぁ、そうだけどっ……どうせならその時間を楽しいでほしいじゃん」


少しだけ拗ねたように言い返すと、


「ふぅ~ん、良いと思うよ」


なんて感心したように見つめていた。その視線はどこか生暖かいものへと変わっている。どこか認めているようなそうな視線を気付けばしていて、望未も同じように俺を見ている。


それが余計に恥ずかしくて、この空気から逃げるように少し歩く速度を上げる。


「ほら、先を急ごうよっ。どうせなら長く見たいし」

「あっ、連照れてるんだー」

「あー、もう。そうだよ」


観念して認めると、東雲さんがくすくすと笑った。その横で、望未はどこか優しい目で俺たちのやり取りを見ている。


そんな二人の視線を感じながら、俺たちは水族館へと向かって歩いていく。これまでの人生でも恥ずかしい出来事上位に入ると思う。……でも、正直に言えば。


妹以外の誰かに、こうして自分を認めてもらえたのは、正直すごく嬉しかった。けど、初めてのことで、感謝の言葉が上手く出てこない。恥ずかしさの方が先に立って、ありがとうの一言すら伝えられない。


だからきっと。誰かに想いを伝えるとき、人はプレゼントだったり、手紙だったり言葉以外の力を借りようとするのかもしれない。


そんなことをぼんやり考えながら、俺は二人の後ろ姿を追って水族館へと歩いていた。



***



「ついに水族館に来たーー」


望未達に連れられてきた水族館を見て、思わずテンションが上がる。その様子を見て、東雲さんがくすっと笑った。


「ほんと連って、水族館の話になると楽しそうだよね」

「まぁね。……でも、きっかけをくれたのは望未なんだよ」

「え?」


ピンと来なかったのだろう。彼女は首をかしげ、不思議そうな表情を浮かべる。


「覚えてない? 幼稚園にいたニワトリを一緒に観察したこと」

「もちろん覚えているよ。……けど、それがどうしたの?」


……それはそうだろう。俺の内心なんて、伝えていなければ分かるはずもない。自分でも少しおかしくなって、苦笑しながら言葉を続ける。


「望未がさ、コケコッコーが挨拶じゃなくて、縄張りの主張なんだって教えてくれたり、ニワトリは三歩歩いたら忘れるっていうのは嘘で、ちゃんと学習能力があるって話してくたでしょ?」

「うん……そうだね」

「……それが、生き物に興味をもつきっかけだったんだよ。俺も望未みたいに知っていたら色んな見方できて楽しいだろうなって」


まあ、望未と出会うまでは、そんな"原点"に気付かなかった。けれど、振り返ってみると、あの頃から、周囲の人たちにも気を配れるようになった気がする。気にも留めていなかった当たり前の景色に、ふと目を向けるようになったのは、目の前にいる望未のおかげだ。


そう伝えると、望未は驚いたように目を丸くする。それから、少しだけ照れたように笑った。


「……そうだったんだ」


その笑顔は、どこか誇らしげで、でも照れくさそうでもあった。


「だから今日はそんな望未と一緒に見られるのを、ちょっと楽しみにしている」


思ったままを口にすると、


「私も楽しみだよ。連君と一緒に見られるの」


迷いのない声で、まっすぐ返ってくる。その言葉に、ふっと空気がやわらぐ。水族館の入口を行き交う人の会話も、どこか遠くに聞こえるような気がした。


その横で、葵が小さく息をついた。


「なんかさ、私ここにいるの、ちょっと場違いじゃない?」

「そんなことないって。知らないことが多い東雲さんの反応は気になるし」

「ねっ!! 何事も素直に楽しめる葵がいたら、絶対に楽しくなる。だから一緒に周ろ?」


そんな彼女の言葉に東雲さんはふっと柔らかい笑みを浮かべる。


「……ほんと、望未ってそういうところだよね」


小さくそう呟くと、彼女はすっと手を伸ばし、ぎゅっと望未を抱きしめた。


「私も望未と一緒にいるといつも元気を貰ってるよ、ありがと」

「それは私もだよ」


なんて二人して、くすっと笑い合う。そんな温かい彼女の雰囲気に俺も自然と笑みが零れていた。もう少しこの場では二人にした方がいいかななんて思って提案する。流石に、ずっと立ち往生するのは周りの迷惑にもなるしな。


「チケットだけど、まとめて買ってきていい?」

「うん、お願い」「頼んだ」


二人の言葉を受け、俺は売り場へと向かう。戻って来て、購入したチケットを二人に渡すと、財布を取り出そうとしたので、俺は軽く首を振った。


「ここの代金は俺に持たせてよ。今日の為に色々と考えてくれたお礼ってことで」

「えっ……いいの!?」「流石に悪いよ」


対照的な反応に、思わず苦笑しつつ伝える。


「単純にその方が嬉しいんだ。ダメかな、望未?」


そう伝えると、


「ずるいな……そのいいかた」


なんて肩の力を抜くように、小さく笑って受け入れてくれる。


「じゃ、早速行こう!!」

「はいはい、ついて行きますよ」


なんて、東雲さんも少し楽しそうに応えてくれる。その後ろを追いかけてくる望未の気配が一瞬、俺の方に近付いて来た。そして


「ありがとね、連君」


小さく、でもちゃんと聞こえる声で囁いてきた。それに驚いて、彼女の方へ振り返る。そこには、優し気な笑みを浮かべている彼女の姿があった。どこか大人びた深い笑みを口元に浮かべていて、自然と視線が吸い寄せられる。


気づけば、言葉も出ないまま見惚れてしまう。そんな俺に対して彼女が首を傾けて不思議そうにする。


それでも————しばらく、彼女から目を離すことができなかった。

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