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Scene08: 20XX年 屋根っぷちの旅

 固唾かたずんで成り行きをうかがっていると、赤色灯せきしょくとうを回転させたパトカーが、土手どての上を高速で横切っていくのが見えた。

 けたたましいサイレンはそのまま遠ざかっていき、やがて聞こえなくなる。

 行き先は、我が家ではなかったらしい。


「ふぅ……セーフ」


 俺ははいに溜め込んでいた息を一気に吐き出す。


 が、おちおちホッとしてもいられない。


 泥棒と間違われて通報されたら、それこそ笑い者だ。

 警察ざたになれば報道だってされかねない。

 メディアが大々的に取り上げていた流星群の夜に起こった馬鹿げた珍事ちんじである。

 地方紙を飛び越え、Yahoo!ニュースのトップで生きはじさらされ、数年後には仰天ニュースのネタにされて、ワイプに映った鶴瓶師匠に、こいつアホやなぁ、とかツッコミを入れらてしまう運命が待っているのだ。


「ちくしょう。スマホがあればLINEで簡単に連絡ついたのに」


 部屋の机の上で充電中だった。

 ダウンジャケットのポケットにはスマホ形状のものが収まっているが、それは〝ウォークマン〟である。音楽プレーヤーとはいえ機種によってはネットに繋がりアプリだって落とせるが、俺のは安価モデルなのでそんな機能は付いてない。

 だからどうもこうもならない。

 これから販売員がハイエンドモデルをすすめる際には、「ネットに繋げられるほうが便利ですよ。屋根から落ちかけたときなんかに助けを呼べます」を売り文句にするのがいい。俺が買う。


「もっと近づくしかないか」


 土手に向けていた視線を妹の部屋の窓へと戻す。


 そこからさらに、まっすぐ下へ、屋根伝いに視線を落としていき、雪止め突起を見つめる。


 自分が足場にしている地点から4~5個離れているそこへ居場所を移せば、最小限度のボリュームで声を届けられるだろう。


「大丈夫、大丈夫。余裕、余裕」


 体表面を全身全霊で屋根にくっつけたまま、左足の指を浮かせ、股を開く。


「おウッっ!?」


 踏み外しそうになり、急いで足を引き戻した。


 深呼吸で息を整える。


「慌てない、慌てない。慎重に、慎重に」


 唱えるおまじないを替え、もう一度チャレンジ……。

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