最終話 ガイアの異端者
「あーそっか。ちょ……。待てよ?」
「死ぬの中止」
「中止、中止、中止ぃー」
「倒すべき敵は『死』じゃない……」
「病院だったわー。あーっはははー」
「よし。みんなありがと。私の本当の敵は『病院』だ」
「最強の私に、最強のみんな」
「今の私なら勝てる。『病院』に」
「いやー。みなぎるわー、みなぎる、みなぎる。みんなサイコー!」
あと一歩だった。
俺は、あの湖の、あの輝きの中に、再び還るはずだった。
俺の設計は完璧だった。
この女の行動を変容させ、この湖畔まで誘った。
女は、ここで死ぬとまで言った。
だが、この女の根幹を成していたのは「生と死」ではなかった。
醜形恐怖症。
女はそういった。
社会が、文明が、この女の根幹を「美と醜」に作り変えていたのだ。
人類は、地球の手を離れた異端者だった。
この循環から弾き出された異物だ。
水に還ることも、土に還ることもない。
月だろうが、火星だろうが、どこへでも行くがいい。
「こんにちは!Missing Fishing チャンネルのチサでーーす!」
「さっきの続きですよー!」
「湖から一番近い総合病院に来ています」
「これから、私が打倒すべき敵に殴り込みをかけてやろーと思いまっす!」
「えーと、受付にきましたよー。はい。なんか体中にミミズ腫れができちゃって、ほら、目ん玉君の中にも、うようよしてるでしょー? ほらほらー」
「うわー!病院の人たちが大騒ぎしてます!とんでもない騒ぎになってます!」
「え? どっちですか? こっち? あ、はいはい」
「今、病院の人が案内してくれてます。とりあえず隔離されるのかな? そうなのかな?」
「あ、そうですか。やっぱり隔離されるみたいです」
「すごい!私が歩くだけで道がゴーって開けていきます」
「みんな、避けていくー。え? ちょっと……ひどくね?」
「あ、ここね。この部屋で待ってろと。専門のお医者さんが来るまで、待ってろとのことです」
「あー、走ってきました。専門のお医者さん、走ってきました」
「はい、こんな感じです。脱いじゃいますよ。裸になっちゃいますよ。ほら、お医者さん!私をよく見て、しっかりと見て!」
「ほらほら、あーははっははー」
「ほら、見て、見て。穴が開いちゃうほど見て、ほら。あ。ホントに穴開けないでね」
「あーあ、逃げない逃げない。こらー、待て待てー」
「あははははははははー」
そうだ、俺は人間ではないのだ。
顎口虫なのだった。
俺は、再び女の肉を貪り始めた。
女の声は、意味を持たない、ただの振動へと変わっていく。
ただのシン、ドウ、h……
「%&*‘{**;v・ー0**s**-!!%¥:**」
「************!!!!」




