対峙と能力
前回からだいぶ時間がたってしまい、誠に申し訳ない...
読んでくださる方には大きな感謝を!!!
それでは、どうぞ!
「んで、姉さんは何をしてんの?」
高速タイピングを終えたステラは片耳にヘットフォンを当てている。
「無線を聞いているのよ。そろそろ来るだろうし」
「まさか・・・・・・っ!?」
車の後方から微かに、だが徐々に近づいてくるサイレンの音。車内に緊張が走る。ノックスのハンドルを握る手に力が入り、ケルムはミラーを凝視、ステラも無線の言葉をよく聞く。
『ーーーそこの車止まれぇぇ!!!』
「「「キタァァァァ!?」」」
ノックスはアクセルを全力で踏む。少しウィリーをしながら急発進し、前の車を避けながら走る。
「やばいって!なんでここにいるんだよっ!」
「知るかよ!どうせご自慢の鼻だろうよ!」
「いいから早く!追いつかれるでしょ!」
迫るのはパトカー。ランプをまわし、サイレンを鳴らしながら迫ってくる。助手席から身を乗り出して拡声器を持っている女性がハウリングしながら怒鳴る。
『待てぇぇ!!逃がさないわよ!』
「俟てと言われてーーー」
「ーー待つ馬鹿はいねぇ!!」
「コトハちゃんは仕事熱心ね嬉しくないけど!!」
『なんか知らないけど馬鹿にされた気がする!この黒崎琴羽から逃げられると思わないことね!!』
女性ーーー黒崎琴羽は彼らを追う警察の対紅目特殊部隊の人間。名前の通り日本人で、今も長い黒髪を風になびかせて黒い目で睨んでいる。紅目でありながら警察にいる彼女は、犯罪者である彼らと出会ってから執拗にに追い回している。が・・・・・・、
「結局逃げれるけどな!!」
「戦績的には6723戦、こっちの全勝だけどね」
いままで何度も対峙していたが、すべてにおいて勝ってきたステラたち。最初のうちは全力で戦っていたが、徐々に面倒になっていた。
「今度は何にする?」
「後ろの箱に唐辛子爆弾あるぞ」
「なんちゅうものを・・・・・・」
ステラは早速箱の中から筒状のものに導火線がついたものを取り出した。それに火をつけて天窓から投げる。それはちょうどパトカーのワイパー部分に引っかかった。
『やばっ!?振り落としーーー』
拡声器をつけたまま、琴羽が叫ぶが間に合わず、
ブォフン
気の抜けた音とともに今度は緑の煙が出てくる。慌てて路肩に止めるが、外に出ていた琴羽はその煙を思いっきり吸い込んでしまい、
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
女性とは思えないような雄叫びを上げる。運転席にいた女性も軽く吸い込む。すぐに席に引っ込んだが、涙目になって無線を掴んで叫ぶ。
『犯人が逃走!犯人はメインストリートを逃走中!!ゴフッ!奴ら、ワサビなんてものを!!』
無線を聞いていたステラたちは笑う。
「あはっはっは!おまえワサビなんて仕入れてたのかよ!」
「くっくっく、日本人の主食らしいからなぁ」
「くっふふ、それは違うわ。マスタードと同じようなものよ。ふふふ」
ケルムは涙をためて膝を叩き爆笑。ノックスもハンドルを握り笑いをこらえる。ステラは上品に笑う。どうやらネット通販で手に入れた山葵をスモークグレネードに混ぜ込んだようだ。目に入れば失明の恐れがあるが適量であれば目が痛くなり鼻がツーンとする。
「とにかくこのまま進んで!撒いたら二人は歩きね」
「まぁ、そうなるかねっ!!」
「うぉい!急発進は勘弁しろって!!」
アクセルを踏み込んで車を走らせる。端末を落としそうになったケルムの抗議を笑いながらごまかすノックス。ハンドルを切って路地へと進路を変えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『逃がすな!追え!』
「ふむ、姉さんの方には行ってないな」
「完全にこっちにしか来てねぇ。捕まえられるやつを確実にってところか」
路地で徒歩になったノックスたちは、未だ警察に追いかけられていた。どうやら包囲されつつあるらしいことを、事前に渡されていた無線で聞いていた。
「んで、どうするか」
「どうするって言ったって・・・」
とりあえず路地裏へ逃げる二人。完全に包囲されれば逃げることは難しい。一応面白発明(?)はいろいろ持ってきてはいるが、二度も同じ手は使えないだろう。
「どうすっかなぁ・・・」
「どうもしないわ!ただ捕まる、それだけよ!!」
高らかに宣言された直後、二人にライトが当たる。目を細めてみてみるとライトの奥に人影があった。その数、ざっと十数人。一人を除いて銃を構えている。二人はため息をついて手を上げておく。
「ようやく来たのかい、コトハちゃん」
「えぇ、あなたのおかげでいろいろ大変でしたけどね!!」
若干目が充血している琴羽はやけくそになって怒る。あれから本部に連絡しようにも鼻水が止まらず、特技も使うことができずに追跡が止まっていた。
「やっぱ犬だな」
「そうだな」
「犬じゃないし!!どっちかって言うと狼だっつうの!!」
目を紅く染め、琴羽の体に変化が起こる。少し筋肉で体が膨張し、頭の上に三角の耳、鼻が少し出る。スカートの端からは毛の先が見える。軽く唸っている口元からは鋭い牙が見える。
「・・・どっちかと言えば人狼だな」
紅目の能力は大きく分けて二つ。体を変質させるものと精神が変化するものだ。ノックスやケルムの能力も体に出るもので、琴羽のも同じだ。
「と、言うわけでおとなしく捕まりなさい・・・っ!」
手には少しながらも爪が伸びており、それを構える。それを合図に周りにいた警官も銃を構え直す。それを見た二人は諦めるーーー訳ではなく、むしろ笑みを浮かべていた。
「そう言われてーーー」
「ーーー捕まる馬鹿は」
「「いねぇんだよ!!」」
ノックスが投げたのは普通のスタングレネード。光と音を撒き散らすそれは、路地を光で染め上げる。琴羽は同じ手は喰らわないと目を覆うが耳が聞かなくなり、ほかの警官も同じように悶えていた。耳を抑えながら目を開けると、そこには異形のモノがいた。
ーー頭に牛のような角を生やし、尻尾を揺らす褐色の生物
ーー同じく尻尾を生やし、両手の爪を研ぐ生物
その二人の顔はニヤニヤと悪人顔だ。
「「さぁ、反撃させてもらおうか!!!」」
二人ーーノックスとケルムはそう宣言して警官隊に突っ込んだ。
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次回更新はまた未定です...
早めにあげますので、宜しくお願いします