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『本日付けで辞めます!』〜突然会社を去った者の心情を探る〜


会社の退職理由には『本音と建前』が存在すると思う。


私はこの春30歳を迎えるが、22歳で初就職し、既に数度会社を変えている。

携わった業界は、福祉業界、飲食業界、製造・営業業界などであるが、無論、共通点や関連性も見出すことができない。勿論その都度、退職・再就職の理由や心の内は、明確に提示している。


賛否両論あるが、良く言えば、「若いうちから豊富な経験をした。」又は「新しい事に挑戦し積極的だ。」との評価が下され、逆に悪く言えば、「石の上にも三年」という(ことわざ)を思い切り(あざ)むいているのかもしれない。


それにしても、やはり再就職の志望理由、退職の理由は明確且つスマートに伝える事が社会人として最低限の常識であり、次へのステップの基本中の基本なのだろう。



そこでだ。会社やバイトを辞める際、本音と建前を上手に伝えて円満退職をする方が、最近少なくなってきていると感じる。



出張で仙台を訪れた際、仕事が片付き、ビジネスホテル付近の居酒屋で晩酌をしていた私。

2杯程ビールを飲み干し、焼酎を頼もうとした瞬間、厨房から店員同士の言い争う声が聞こえた。


「こんな店、辞めてやります!給料も低いし、休みはないし!」


「勝手にしろ!明日から来るなっ!」


私は唖然としながら、勝手口から出て行った青年を気の毒に思い、焼酎水割りを別の店員へ気まずそうに頼んだ覚えがある。

彼の将来を勝手に心配し、組織に属する事の難しさを感じた一コマだった。


他にも数件あるのだが、東京出張の際にお客様の付き合いでスナックに訪れた時の一例。


私がお手洗いに立った際、化粧ルームから聞こえてきた会話。


「私…やっぱりこの仕事に向いてないです。私、最近人とうまく話せません。3年お世話になりましたが、本日で辞めさせて下さい。」


そんなに簡単に辞められるのか、辞めて明日からどう生きていくのか、次の就職先はあるのか…?


ここでも勝手に彼女の明日を心配し、お店側にも新スタッフ補充の困難ささえ感じた。


この様に「突然退職を願い出る場面」と出くわしてしまう事が、私にとって稀ではないのだ。



さて、この様な方々に共通する傾向とは、一体どの様な傾向なのか…?


そこで最近読んでいる、精神科医・医学博士の斎藤茂太さんの著書『「こんな会社やめてやる!」と思ったら読む本』を参考に、会社を辞めてしまう人にありがちな特徴を二つ程書き著していきたいと思う。


斎藤茂太先生が、次に挙げる二つの特徴は、誰しもが少なからずあてはまる可能性があるのではないか。

自分がどちらの傾向が強いかを、知っておくのも良い機会かもしれない。




① 自罰傾向が強い人


一つ目は、「自分」を責める傾向が強い方。


これを「自罰傾向」と呼ぶが、筆者は著書の中で次の様に述べています。


<「自罰の人」は、自分をダメ人間とののしり、もう将来がない、みんなに迷惑をかけている、ここでは必要とされてはいない、自分は何も期待されていないと自分を責め、自己嫌悪と自信喪失の日々を過ごし、「会社は悪くないのだが、自分がダメだからやめる」という論理を持っている。>


スナックで働くスタッフの退職理由と合致するが、誰しも、仕事が上手く行かない時など、「自分はダメ人間だ…」「能力がない」と思う事はあるはず。

それが運悪く重なり続けると、鬱の様な気分になり、自分の存在自体を否定してしまうケースに陥る。


「日常的に自分を責める傾向が強いかも…。」と感じる方は、視野を広げ客観的に物事を見たり、信頼できる人に相談する事で、最善の方法を模索するなど、鬱状態に陥らない為の抜け道は沢山あると思うのだ。




② 他罰傾向が強い人


二つ目は、自分ではなく「他人」を責める傾向が強い方。


これを「他罰傾向」と呼び、この傾向を持つ方は、次の様な方と筆者は示している。


<「他罰の人」は、上司が悪い、同僚が気に入らない、あんな経営方針にはついていけない、あの会社には将来性がない、あの会社は従業員を大切にしない、「自分は悪くない。会社が悪いからやめるんだ」という論理を持っている。>


私が仙台の居酒屋で体験した一例と合致するが、彼の様に「自分は悪くない」、「悪いのは経営者」などといった思考回路ばかりが働くのであれば、冷静になり、組織や団体を良くする為の相談や提案をする事も社会人として必要だと思う。



以上、斎藤茂太先生の文献を一部引用させて頂き、「会社を辞めてやる!」と、急に辞めてしまう人の、危険な二つの傾向について考察してみた。


この書物の伝えたい事を整理すると、自罰・他罰のどちらの傾向も、ストレスが溜まり、そこに何かのトラブルが発生した結果、爆発して「辞めてやる!」となってしまうという事である。


そうなる前に、まずは溜め込まず、趣味を活かした息抜き、リラックスをする事で予防するのが必要であろう。


そして、辞める際には、ことわざにもあるように、「立つ鳥跡を濁さず」の言葉を大切にしなければならないと思う。


【参考】


※ 斎藤茂太(2010)『「こんな会社やめてやる!」と思ったら読む本』(PHP研究所)

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