旅行の営業マンの小言〜甘くねーけど、嬉しい事は沢山ある!営業の醍醐味はこれだ!〜
『ちょっとした事が次の日の力になる!』
17時半過ぎに退社して、ある契約に向かった俺。
俺は30歳の売れないとある営業マンである。
その契約を30分程で終え車に乗ったのだが、ふと思い出すことがあって気になっていた場所に車を走らせた。
たどり着いたのはA町。
事務所から北方面に40分程の町だが、時刻的に夕飯の時間が迫っていた為、少しだけ顔を出そうと思ったのだ。
一度だけ営業に顔を出したままでは、営業マンとしてもやり切れない気持ちばかり…。だが、顔を出し過ぎても相手側にとっては迷惑につながる可能性もある。
その事を十二分に気をつけながら、丁重に顔を出させて頂いたのだが、まさかの嬉し過ぎること、いや、心が浄化させられることが起こった。
「こんばんわ〜!すみません…忙しい時間に…こんな何回も来られたら迷惑だと思いつつ気になってきてしまいました…」
俺の言葉にそのお客様は、台所から前掛けで手を拭きながら俺に次の様に話してきた。田舎ならではの雰囲気だが…。
「ごめんね〜気にはしてたんだけど、丁度行きたいコースが日にち合わなくて…。若松からわざわざ来たの〜?」
俺は怒られる覚悟で伺ったものの、この労いにも近い言葉に更に恐縮してしまった。
「いいえぇ!私、実家がこっちなもので〜!逆にほんっと忙しい時間に申し訳ありません。」
するとそのお客様は
「そーなだー!なんか、わざわざ悪いからお粗末だけど食べてって!夕飯まだでしょー?」
なんと、思っていなかった言葉をかけて頂いた。
何度か断ったが、嬉しい言葉の連続に甘えてしまった。
「おいしーです!これすげぇ!うめぇっす!」
いつの間にか、遠慮さえ無くなってしまうほど美味しい料理に夢中になっている俺を見ていた旦那様が一言。
「あんた!?酒飲めんだべ?」
「実家では寝酒程度にしてます。昔はかなり飲んでたんですけど…。」
「んじゃぁ!一杯くれぇよ!いいべ?」
代行と明日の仕事を理由にしばらく拒んでいたが、遂に旦那様の勧めに負けてしまった。
それから、旦那様が好きだと言う地元の地酒を一合半と焼酎の水割りを一杯だけ頂いた。
その旦那様は徐々に酔っ払い、顔を赤くしながら言っていた。
「俺にもよ…あんたと同じくらいの息子いてよ!もぉ10数年連絡もねーし、話もしてもいねーし、会ってもねー。だから今日は良かった!あんたさんと少しでも飲めて良かった!」
「いゃいゃ…私こそ、こんなにご馳走になってしまって…申し訳ありません。」
そう答えると旦那様は「またな…!おぃっ!お母さん!代行呼んでやれ!…」と一言残して寝床へと去っていった。
「ご馳走様でした!美味しかったです!」
散々ご馳走になった上に、旦那様が休んで数分後に代行が到着。
俺が玄関で挨拶をしようとした際、奥様から衝撃の事実を聞いた。
「ウチの人、10年前に息子亡くして、一度も飲めず悔やんでばっかりなの…逆に今日は付き合わせちゃってごめんなさいね!」
俺は、こんな事が現実に起こるのかと疑ったが、その後物凄く嬉しい言葉をかけて頂いた。
「いつか…お父さんと一緒に2人で旅行行きたいから、その時はお願いします!どこでもいーから、ウチの人と思い出になる場所!きっと、ハネムーン以来、最初で最後の旅行になると思うから!」
俺は代行に乗りながら、しばらく考え込んだ。
こんなありがたくて嬉しい、あったかい話ってあるんだ!と。
俺…心だけは腐んねーよに、熱い気持ちだけはいつまでも捨てたくねーって思ったな!
営業って仕事は辛いと思われがちだが、こんな奇跡的に心救われる事が起こるのだ。
いいなぁ…!!




