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かけがえない物  作者: ひだまり
10/21

進行

仕事が終わった帰り道、今日の夕飯の買い物をするのが毎日の日課だが、スーパーには子供連れのお母さん方が多く、胸が痛む



あの子がお腹の中にいた頃を思い出す、正直実感はあまりなかった、ただただ体の不調と眠気、吐き気にまいりながら、それでも何かしら食べたくなる欲求にされるがままになっていた



恋人は毎日自分のお腹を撫でて、「行ってきます」と仕事にでかけた



妊娠したとわかったのは、生理が遅れて一週間だった、生理不順とはほど遠い体質の自分が、生理の代わりに生理予定日から腹痛と腹部の張りを感じ始め、検査薬なんて使わなくても妊娠を確信していた



そして一週間待ち、検査薬ではっきりさせた



恋人は子供が大好きで、喜んでくれた、ただ自分は、恋人と違い子供が苦手だ、産むとなれば仕事も辞めなくてはならず、不安に思った



ただ、恋人の子供がお腹にいるという事実だけは、言葉にできようもないくらい、嬉しかった



できる限り産む方向で、自分達はお互いの抱える問題の解決に取り組んだ



子供に関してはまず、名前を決めた、自分は男の子が良かった、恋人にそっくりな、自分達の分身を望んだ



字画や運勢など調べ、男の子でも女の子でも使える様な、なるべく奇抜にならない名前に決めた、恋人の名前の一文字を使いたかったが、女の子には無理そうだったし字画的にも一番良い名前にした



その後はずっと、名前で呼んで話しかけていた、そういうやりとりは、本当に幸せを感じた



だが問題が解決できなかった時の事も考えなければならなかった、自分は軽薄にも、「この子がダメでも、また産めばいい」という言葉を口にした



何もわかっていなかった、バカだった、言葉の上ではわかっていても、子供を諦めるという事が、どれ程の罪か実感として理解していなかった



次に妊娠した子供を産んだところでその子は最初の子供ではない、生まれ変わりでもない、子供を殺した事実は消えず、自分が口にした言葉は、「子供の代わりはいる」という意味だ、そんなものがいるはずもないのに



なんとも浅はかで愚かな言葉は、お腹のあの子にも届いたであろう、自分は、あの子が生きてまだ問題がどうなるかわからない段階から既にもう、傷付けていた



それから妊娠初期となる12週まで、自分は待った、けれど状況は好転せず、自分は、子供だけではなく自分も一緒に死ぬ事も考えた



なぜそうしなかったのかとも、考える、お腹が大きい自分の遺体が発見されれば、まだお腹の子供が生きていれば子供だけは助かったかも知れない



だけど自分には、生まれて来る事だけが幸せではない、という考えもあった、無責任に子供を生んで、ちゃんとした状況下で育てる事ができないならば、生まれて来ても不幸なのではないかとも



スーパーからの帰り道、後悔してもしきれない自分の愚かさに、毎日泣きながら帰るのも日課に加わった、

自分はうつ気味なのかも知れない、手術以来、涙が流れない日はなく、恋人にわからない様に一人の場所を探すのに必死だ



少し下腹部に痛みが現れ出した、少し経てばすぐにおさまる程度だが



自分の償いは始まりだした様だ、これが正しいと、確信もないままに













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