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かけがえない物  作者: ひだまり
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11/21

愛し合う事

休日の今日は恋人と、チキンバターカレーを作る



鶏肉をヨーグルトに漬け込みトマトジュースと水で煮込むレシピに恋人は信じられない様な顔をしていたが、「楽しみだね」と鍋の中のカレーを混ぜている



生クリームを入れたので仕方ないのだが、想像以上に辛くなくなってしまったカレーに苦笑いしながら、カレーパウダーを振りかけ仲良く食べた



下腹部の痛みは頻度も痛みもそのまま、何の変化もない、もしかしたら違う病気が併発していて、そちらの痛みなのではとも思うが、病院に行っていないのでわからない



それでも今こうしている間にも病気は自分の体を蝕み続けていて、命のカウントダウンが始まっている事だけは、わかっている



自分達はいつも一緒にお風呂に入るのだが、すっかり暑くなったこのシーズン、自分は暑さに弱く長風呂が苦手なのでお互いシャワーで済ましていた



カレーの後片付けをしていると、「後はやっておくからシャワー行ってきなよ」と、シャワー上がりでサッパリした恋人が声をかける



甘えさせてもらって、後は食器を拭くだけに仕上げてシャワーを浴びる、暑さには弱いくせにぬるいシャワーは嫌いだ、限界まで熱くしたシャワーで全身を流す



一人の入浴は格好の泣き場所だ、涙も汗もシャンプーも、流せる物は全て流す



リビングに戻ると恋人はアイスを食べながら座っていて、「おいで」と食べかけのアイスを向ける



自分はアイスが苦手で、美味しいとは思うのだが一人分食べきれない、いつも恋人のアイスを少し貰って食べる



隣に座ろうとすると腰に手を回されて引き寄せられ、膝の上に座る、アイスを一口かじり、自分がその一口を食べている間に恋人は全部食べてしまう



そのまま肩を抱かれてキスをし、抱かれたままソファーに寝かされた



恋人の手がキスをしたまま自分の胸に触れる、手術から三ヶ月、自分達はあれ以来、一度もしていない



「大好きだよ」



自分の顔を両手で撫で、見つめながら恋人が言う、そしてまた、キスをして自分の体を撫でる



受け入れていいのか抵抗があった、何に対してなのかわからない、恋人の事は大好きだ、産まなかった子供に対してなのか、子供を殺してまた恋人と愛し合う自分になのか、わからない



久しぶりの、日常とはまた違う愛情に胸が苦しくなる、体は素直に反応し、好きな気持ちが止まらなくなる



胸や背中に優しく触れられ、キスしていた唇は今度は首筋から鎖骨辺りに来る、自分も恋人を抱きしめながら、恋人の背中を撫でる



胸を口に含まれて、思わず声が漏れる、たまらなくなって恋人の顔をこちらに向けさせ、もう一度キスをねだる



愛しているとはこういう感情だろうか、自分も恋人に気持ち良くなって欲しくて、恋人の体中にキスをしたり舌をはわせる



自分は愛とはどういう物かわからない、愛とは慈しむ事だと聞いた事があるが、何かを慈しんだ実感がない



ペットに対するあの気持ちが、近い物なのだろうか



久しぶりだからなのか、もうすぐ終わる関係だとわかっているからか、それとも純粋に恋人を想う気持ちからなのかはわからない、ただただ夢中になって、もっと近づきたい、もっと繋がりたいと、全身で恋人を感じた



「次に子供ができたら、絶対に産もう」



恋人の余韻に動けず、抱き合ったまま横になっていた時、恋人が言った



手術前からその約束はしていた、そして現に恋人は、あの時抱えていた問題を解決に向かわせていた



頭ごと抱えこむ様にして、「大好きだよ、ずっと一緒にいよう」と抱きしめられる



「私も」と答え、泣いてしまう、手術から初めて、自分は恋人の胸で泣いた


















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