表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/18

魔王城に招待

日本海沖に浮かぶ漆黒の城――それは今や、世界最大級の“未知との接触拠点”となっていた。


佐倉美月が初めて魔王城に足を踏み入れた日、空は一面の曇天だった。海上自衛隊の船で沖まで運ばれ、そこからは一人、魔力で敷かれた“見えない道”を歩いた。海面の上を歩くという非現実的な体験にも、彼女は眉ひとつ動かさなかった。


「ようこそ、我が居城へ」


門を開いたのはヴァルザグレス本人だった。魔王の城とは思えない、穏やかな迎え。


「驚いたわ。こんな巨大な建造物が、何の支えもなく浮かんでるなんて。しかも、魔力で完全に安定している…物理法則が泣いてるわね」


「ここは“理”から外れたもの。そなたらの世界の法に従う必要はない。だが、学ぶ必要はある」


広大な廊下、宙に浮かぶ光の灯火、無人で動く家具たち。だが何より佐倉を驚かせたのは、その一室だった。


書斎。数千冊の本が並ぶ空間。


「すべて、異世界の知識かしら?」


「違う。昨日そなたから受け取った通信端末と、ネットという仕組みを通して“吸収”した知識だ。この世界の病、貧困、環境破壊、政治不信、精神疾患……どれも、放置されてはならぬ」


「……そんな短時間で、どこまで読んだの?」


「目を通しただけだ。だが、我が力があれば、この世界の諸問題の根を断つことができると確信している」


佐倉は少し息を呑んだ。確かにこの男は、本気で世界平和を目指している。しかもそれは、支配や征服を望むものではない。


「君に一つ聞きたい、美月。――人間は、真に平和を望んでいるのか?」


「それは……難しい質問ね。多くの人は、平和を願ってる。でも現実には、利害や感情や無関心が邪魔をする」

「ならば、その障害ごと壊せばいい」


「……それは“破壊”よ」


「違う。障害は、我が力で優しく“無力化”する。誰も傷つけず、誰も排除せず、それでいて機能する世界。――我はこの地でそれを目指す」


その後、佐倉は魔王に現代の社会問題を一つずつ伝え始めた。


労働問題。ブラック企業。少子化。自殺率の高さ。情報格差。気候変動。


ヴァルザグレスはそれらを一つずつ理解し、時には魔法を使い、時には論理で分析し、あるいは新しい“制度”の案すら提示し始めた。


「“行政システムに魔力分散装置を組み込む”ことで、役所の手続きを魔法で自動化……?」

それでいて機能する世界。――我はこの地でそれを目指す」

その後、佐倉は魔王に現代の社会問題を一つずつ伝え始めた。


労働問題。ブラック企業。少子化。自殺率の高さ。情報格差。気候変動。


ヴァルザグレスはそれらを一つずつ理解し、時には魔法を使い、時には論理で分析し、あるいは新しい“制度”の案すら提示し始めた。


「“行政システムに魔力分散装置を組み込む”ことで、役所の手続きを魔法で自動化……?」


「そなたらは“手間”に時間を奪われすぎている。人生とは、もっと違うところに使われるべきだ」


「確かに合理的ではあるけど、法制度が……」


「ならば、法を変えればいい。そなたが、その窓口になってくれるなら」


佐倉美月は気づいていた。

この魔王は、もはや“魔”の存在ではない。


変革を願う“希望”の象徴となりつつある。


だが同時に、その力の大きさが、やがて人々の恐れを呼ぶことも予感していた。


「……あなたの夢が実現するなら、日本だけじゃない。世界そのものが変わるわ」


「では問おう、佐倉美月。世界は変わる用意があるか?」


彼女は静かにうなずいた。


「少なくとも私は――その準備があると思うわ」


そして、日本海に浮かぶ魔王城は、世界中の視線を集める“改革の震源地”となっていく。


――つづく

まとまらない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ