47 新学期開始の話
四月。
桜が咲き、その桜が散り始めるそんな時期。
「月さんおはよー」
「あ、蘇芳。鉄は?」
「うーん、てっちゃんはお仕事が早く終わったら来れるってー」
中学三年の入学式の翌日。
今日は、新入生と在校生が初めて顔を合わせる始業式。
本来は中学生として制服を着てこなければならないのだが、蘇芳の強大な霊力は良い妖怪の餌になってしまう可能性がある為、特注で制服を発注したのだが、入学が決まった時期がすでに春休みだった為始業式に間に合わなかったのだ。
「月さん、なんで私はこんなに注目されてるの?」
学校側も、知り合いがいた方が良いだろうとのことで、双子は蒼月と同じクラスになっている。
「和服だからってことだろうけど………」
一番窓側で、後ろから二番目という席に座る和装の少女。
その肌は日に溶けてしまいそうに白く、薄く開いた桜色の唇は、まるで桜の花びらのように儚い。
蘇芳の様子は、とても神々しく、少々近寄りがたいものだった。
「じゃあ、てっちゃんが来たら、もっと注目されるね!」
笑う蘇芳の様子に、蒼月ですら後ずさる。
「あはは………やっぱそうだよね………」
今まで取りつかれていただけ蘇芳とは違い、藍鉄は別に特注の制服を着なくても平気だという話になったのだが、ただの学ランでは呪符を持ち歩けないから、ということで学ランの上に羽織を羽織って登校すると話していたのだ。
蘇芳とふり二つの顔で、さらに奇抜な格好をしていたら、目立たないわけがない。
「まぁ、蘇芳も藍鉄も俺の友人だって言えばすぐに友達できると思うぞ」
笑いながら、蒼月は蘇芳の横に座る。
そこが蒼月の定位置だ。
藍鉄の席は蘇芳の後ろである。
「そっかー。月さんはお友達いっぱいだもんねー」
蒼月が座って話始めたところで、何人か蘇芳に話しかけるきっかけとなり、教師が入って来るまでに、蘇芳はその持前の明るさで友人を何人も得ることができていた。
「月さん」
「うん? どーしたの」
「これ、中学の教科書?」
「あ、うん、そう」
「随分薄い教科書なんだね………いつもてっちゃんが睨めっこしてるのはさっき買うべきって言われた事典みたいなものだよ?」
あれは特別だと思う、と考えるが言葉には出さない蒼月。
「あ、てっちゃん?」
教科書が配り終わり、新しくできたお友達と話していた蘇芳は、すいっと外へ目を向ける。
それを追って蒼月やその周りの人も目を外に向けると、大きなバイクの後ろから飛び降りる少年が目に入る。
フルフェイスのヘルメットをバイクの操縦者に投げ、いくつか言葉を交わすと、そのバイクは校門から離れていく。黒い学ランに、羽織を着て鞄を下げた藍鉄が登校してきた。
「えっと、蘇芳ちゃんのお兄さん?」
「そうだよー! てっちゃんは自慢のお兄ちゃん!!」
校庭を突っ切って来る藍鉄に数人の教師が駆け寄り、その教師と何事か会話をしながら、藍鉄は校舎に入る。
「月さん、てっちゃん、どこに行くのかな?」
「えっと、多分職員室か生徒指導室」
「私行ってみたい! 皆さん、私、月さんに案内してもらいます。お友達になってくれてありがとう。お兄ちゃん共々、よろしくお願いします」
ぺこっと頭を下げた蘇芳に、あまりにも丁寧なその様子に顔を赤く染めた生徒たち。
「ごきげんよう」
あまりにも型にはまったその様子に誰もが教室を出ていく様子を見送った。
「蘇芳、月さん。どうしたんです?」
一方、入ってきた藍鉄は、駆けてきた蘇芳をしかり、蒼月に蘇芳の世話のお礼を言いながら、職員室に足を踏み入れる。
「ああ、そうだ。月さん」
「何?」
「まだ、陰陽に興味がありますか?」
「そりゃもちろん!」
あの妖狐について考えることは放棄したが、魂を食べる存在が“存在”することには否定的であることに変わりはないため、まだ将来の方針は変わっていない。
「じゃあ、職員室で申請してしまいましょう」
「申請?」
「はい。学校を正式に抜け出す申請です」
双子は中学に入学した。
三年からだが、これkらは二人だけの人生ではなくなるだろう。
「この三人で、お仕事しましょうか」
………藍鉄は陰陽師として、蘇芳は巫女見習い、蒼月は式見習いとして、よく中学を抜け出すことになる。
物語は進むのか終わるのか、それは、これからの彼ら次第だろう。
これにて終了。
個人的に閑話を上げる予定。
よぴこと話し合って、高校生編も上がるかもしれない。
そしたら連載に戻すかもしれない。
どうなるかわからない現在。
読んでくださった方ありがとうございました!




