↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

第14話 魔力残滓②





「さてと! 説明する前に、工房裏の試し切り場に行くか!」




ガレスはそう言うと、俺たちを工房の裏へ連れていった。




そこには藁束や木の的。


そして、使い古された鎧がいくつも並べられていた。




「まずはこいつからだな!」




ガレスは壁に掛かっていた一本の剣を手に取った。




「兵士が使うとすれば、まずはこれだ」




幅広の両刃剣。




修練場で兵士たちが使っているものと、ほとんど同じ形だ。




「両刃だから斬る、突く、防ぐ。なんでもござれだ!」




そう言いながら、ガレスは剣を構える。




そして――




「ふんっ!」




刹那。




ドゴォォォン!!




「うわっ!?」




轟音と共に、試し切り用の鎧が吹き飛んだ。




地面を転がった鎧は、胸の部分が大きくひしゃげている。




「まあ、鎧を着た相手だと綺麗に斬るってより、こうやって叩きつけるような使い方も多いな」




「…………」




いや。




参考にならない。




完全にガレスの馬鹿力でひしゃげてるだろ、これ。




「お次はこいつだ!」




ガレスは剣を戻し、今度は一本の槍を手に取った。




「実際のところ、集団戦じゃこっちの方が重要だな」




「剣より?」




「あったりめぇだ!」




ガレスは即答した。




「好き好んで敵に近づく馬鹿がいるか!」




「届くなら長ぇ方がいい!」




「…………たしかに」




身も蓋もないが、ど正論だ。




「それにな」




ガレスは槍を軽く回す。




「こいつは武器の心得がなくても、突くだけならそれなりに扱える」




「何十人、何百人で並んで一斉に突き出しゃ、それだけでも脅威になる」




なるほど。




個人の強さだけじゃなく、兵士たちが集団で使うことを考えれば、剣より槍の方が都合がいいのか。




「それに――」




ガレスが槍を構えた。




「突きの威力は強力だ!」




ドゴォォォン!!




「…………」




鎧の胸に。




大穴が空いた。




「どうだ!」




「…………すごいですね」




いや。




それは槍がすごいんじゃなくて。




ガレスがすごいんじゃないのか?




「後は、よく見るのはこいつだな」




続いてガレスが取り出したのは――




弓。




「弓か」




「おう」




ガレスは慣れた手つきで矢をつがえる。




「こいつは遠くから敵を攻撃できる。それだけでも十分強ぇんだが、使い方も色々ある」




「例えば、敵の後ろにいる魔法使いを狙いたい時なんかは――」




ガレスが斜め上へ弓を向ける。




「こうやって高く撃つ」




「ああ」




これは分かる。




矢を山なりに飛ばして、遠くの敵を狙う。




前世でやっていたシミュレーションゲームでもよく見た光景だ。




「何十人、何百人で一斉に撃てば、敵の頭上から矢を降らせることもできる」




うん。




ここまでは分かる。




「そして――」




ガレスが弓を構えた。




ギリギリギリ――。




弦が引き絞られる。




「弓は――」




パァァン!!




矢が放たれた。




次の瞬間。




ガンッ!!




一体目。




ガンッ!!




二体目。




三体目。




四体目。




「…………は?」




そして――




五体目の鎧に矢が突き刺さった。




「貫通力にも優れる!」




「…………」




いやいやいやいや。




おかしい!!




剣はまだ分かる。




槍も百歩譲って分かる。




ガレスが化け物みたいな腕力をしてるんだろう。




でも。




矢が鎧を四枚も貫通するのはおかしいだろ!!




弓を引く力が強ければ、多少は威力も上がる。




それくらい俺にだって分かる。




だが、これはそんな次元じゃない。




「…………」




何かある。




流石に武器そのものに、何か仕掛けがあるんじゃないのか?




こういう時こそ――




《鑑定》。




俺はガレスが持っている弓へ意識を向けた。




《トレントの弓》


《トレントの木材から作られた弓》


《魔力残滓:残り十二秒》




「…………ん?」




魔力残滓?




なんだ、それ。




聞いたことがない。




俺は急いで、鎧に刺さった矢へ目を向ける。




《鑑定》。




《鉄鏃の矢》


《鉄製の鏃を用いた矢》


《魔力残滓:残り四秒》




「…………」




こっちにもある。




しかも――




減ってる?




俺が見ている間にも。




三秒。




二秒。




一秒。




そして。




《魔力残滓》の表示が消えた。




「…………なんだこれ」




間違いない。




さっき矢を撃った時に何かが起きている。




なら――




「ガレスさん」




「あ?」




「ガレスさんって、魔法使えます?」




「…………はぁ?」




ガレスが眉間に皺を寄せる。




「俺が、ちんたら魔法唱えてるようなヒョロヒョロ野郎に見えるか?」




「いや、そこまでは言ってないけど……」




「魔法なんざ、生まれてこのかた一度も使ったことねぇよ」




魔法は使えない。




じゃあ――




権能か?




俺はガレスへ意識を向ける。




《鑑定》。




《名前:ガレス》


《年齢:69歳》


《種族:人間》


《権能:なし》


《特記事項:武器の申し子/剣帝/槍鬼/弓鬼》




「…………は?」




権能――なし。




じゃあ、さっきの《魔力残滓》は何なんだ?




…………。




いや。




その前に。




剣帝。




槍鬼。




弓鬼。




「…………」




こいつも大概化け物じゃねぇか!!




セバスが《剣鬼》だったはずだ。




それより一つ上の《剣帝》。




しかも槍と弓まで。




元騎士団長って聞いた時点で強いとは思ってたけど。




強すぎるだろ!




「…………」




待てよ。




魔法は使えない。




権能もない。




それなのに。




ガレスが使った武器には《魔力残滓》が残った。




ということは――




武器の熟練度が上がると、無意識に魔力が宿るのか?




それとも。




熟練者は、知らないうちに身体の魔力を武器へ流している?




あるいは――




もっと別の何か?




「…………分からん」




疑問は増えるばかりだ。




「アーク様?」




セバスの声で我に返る。




見ると、セバスが自慢のカイゼル髭を撫でながら、心配そうにこちらを見ていた。




「先ほどから黙り込んでおられますが、何かありましたかな?」




「…………」




どうする?




話してみるか?




いや。




まだ俺自身、何を見ているのか分かっていない。




もう少し調べてからでも遅くない。




「いや! なんでもないよ!」




「左様ですか?」




「うん!」




俺はガレスを見る。




「ガレスさん、ありがとう!」




「おうよ!」




ガレスが豪快に笑う。




「武器のことなら、またなんでも聞いてくれ!」




「はい!」




その時。




「そういえば、ガレス」




セバスが何かを思い出したように口を開いた。




「あ?」




「アーク様に鍛錬用の木剣を作ってくれませんか?」




「木剣?」




「ええ」




「今使っている兵士用のものでは、アーク様には少々長いようでしてな」




「なるほどな」




ガレスが俺の身体を見る。




「確かに坊ちゃまには、ちとでけぇか」




「お安い御用よ!」




そう言うと、ガレスは工房へ戻っていった。




     ◇◇◇




数分後。




「お待たせ!」




ガレスが一本の木剣を持って戻ってきた。




「こんなんでどうだ?」




「おお!」




受け取ってみる。




軽い。




何度か振ってみる。




「すごい! 振りやすい!」




長さも重さもちょうどいい。




「ありがとうございます!」




「いいってことよ!」




ガレスは嬉しそうに笑った。




「それと――」




「ん?」




「坊ちゃまには、こいつもやろう!」




ガレスが背中に隠していた、もう一本の木剣を差し出した。




「…………!」




片刃。




そして、僅かに反った刀身。




不格好ではある。




だが――




どう見ても。




刀だ。




「本物を見たことがねぇからな」




ガレスが頭を掻く。




「噂で聞いた話と、俺の想像だけで作ったもんだから不格好だが」




「よかったら持ってけ」




「…………」




俺は木刀を受け取る。




握る。




構えてみる。




「…………おおおお」




いい。




めちゃくちゃいい。




「ガレスさん!!」




「お、おう?」




「ありがとうございます!!!!」




「そんなに喜ぶか?」




「喜ぶよ!!」




やはり。




身体が五歳だからなのか。




それとも。




男という生き物は何歳になっても変わらないのか。




分からない。




ただ一つ言える。




ジャパニーズ・カタナ。




日本刀には――




ロマンがある。




いくつになっても。




こればっかりは、止められない。

よかったらブックマークやコメントお待ちしてます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。