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「痛い……」
ナヴィさんに治療をしてもらいながら、俺らが降りて来ただろう上を見上げると、僅かに光が見える。だが図書館の扉は徐々に閉まっていき、ガチャンっという音と共に光も見えなくなった。
……あそこから落ちて来たと思うと、よく右足だけで済んだと思う。
逆にあそこから落ちて何故この3人はピンピンしているのだろうか。
俺は何事もなかったように平然としているティナとドラゴンを見ながら、
「ナヴィさん……ステータスってどうやって早く上げるんですか?」
「えっと、ステータスですか? そうですね、色々な方法はありますけど一番早いのはやはりモンスターを倒すことですかね。でも、そこにも個体差はあるんですよ、ステータスにもそれぞれ上限はありますから。それより大丈夫ですかシュウさん? こう言うのもなんですが、まだラッキーだったのかも知れませんね。本棚の上に落ちてなきゃ本当に危なかったかも知れませんし」
「あはは……そうですね」
俺は甘かった。さっきまで扉が馬鹿でかいなんて騒いでいたが、図書館に入った今はむしろ小さいとさえ思えてくる。
俺が今治療を受けて貰っているのは紛れもなく本棚の上。確かに、ここは雰囲気としては図書館といえば図書館なのだが、あえて例えるなら普通の図書館に迷い込んだアリになった気分だ。
デカすぎるわ異世界の図書館。
「ほう、世界3大ダンジョンと言われるだけのことはあるではないか。どこまで続いてるかは知らんが全く奥が見えん。我とて初のダンジョンだ、肉以外にも少し興が湧いてきたぞ」
「ほんと大っきいわねぇ。そういえばナヴィは一度来たことがあるんだっけ? その時はどんな感じだったの?」
「ここからさらに地下がありまして、確かあの時は私の連れがこれ以上は危険だと言い出しまして、扉を3、4回降りた辺りで断念しました。実は今私達が見ているのは図書館の一部に過ぎないんですよ。当時、私は幼かったので気にはなりませんでしたが、今となっては図書館の最奥がどうなってるかちょっと興味がありますね」
おい、ちょっと待て扉を3、4回降りたって、俺はその度に足を折らないといけないの!?
というか大きいを除けばここって普通の図書館だが、肉だの金だの結局どうやって手に入れるのやら、なにが危険なのやら、ナヴィさんに聞きたいことは山ほどあるが、足の治療をしながら順を追って説明してもうおう。
俺がそう考えていると、横から不機嫌そうな顔をしたドラゴンがこんな事を言ってきた。
「確かにここは中々に面白い。だが、やはりそれとこれとは別だ。そのバカ毛が何回も何回も何回もやらかしおって限界の限界の限界なのだ。我はもう先に行くぞ。エルフ、肉はどこにある?」
「え、いや、あの、ドラゴン様……」
散々な言われようだが……やっぱりこうなったか。ドラゴンは初めて会った時から肉ばっか要求してくる鬱陶しい奴だが、買う金が無いとはいえ、まだ一度も肉を食べさせてあげたことがない。いま遅れてることに関しても俺に責任がある。
うん、そうだな、ドラゴンには魔力を貰うより先に、大切なことがあった。
「良いことを教えてやる、よく聞けドラゴン。急がば回れって言葉があってだな? そう! 近い道より遠い道の方が最終的にはオーケーってこともあるんだよ!」
「良いこと言ったみたいな顔するでないわ! 遠回りし過ぎだたわけ! 後にここで集合だ、我はもう行くぞ!」
「ちょっと待ちなさいよドラゴン。そんなんだからガキだのロリだの言われるのよ。私だって我慢してるんだからね。あ、待ってってば! ……あーあ、行っちゃった。シュウどうするのよ」
「大丈夫大丈夫。あいつどうせすぐ帰ってくるよ。あとロリはお前な!」
10分後
「あ、お帰りなさいドラゴン様! 良かった、シュウさんの言う通り本当にすぐ帰ってきましたね。……一体どうなされたんですか? そんな険しそうな顔をして……」
「肉ってどこにあるのだ」
「あ、そういえばお二人には説明しましたが、ドラゴン様にはまだでしたね。欲しい物の本を探して、そのページに魔力を注ぐと、具現化されて欲しいものが出てくるんですよ。だから特定の欲しいものを見つけるのに物凄く根気が必要なんです」
「そうであったか。では後にここで集合だ。ところで本とは何なのだ?」
「え、えーと、本というのはですね」
さらに20分後
「エルフ、貴様嘘を付いたな!? ようやく肉の本を見つけ、美味そうな肉のページに魔力を注いだらモンスターが出てきたではないか! 覚悟は出来てるのであろうな? 我は嘘が大嫌いなのだ」
「あ、お帰りドラゴン。てか魔法をこっちに向けるなよ、ナヴィさんが泣いちゃうだろ。そもそもお前が、ナヴィさんの話の途中で行っちゃうのが悪いんだろうが」
「なんだと?」
「本にもダミーがあるんだと。魔力を注ぐと爆発したりモンスターが出たり、過去に冒険者がモンスターを出して、そのまま放置されたモンスターもたくさんいるそうだ。そりゃそうだよな、そうでなきゃ取りたい放題だし。てかお前俺に魔力くれよ、俺が自分で本から出せないじゃんか」
「ちっ、そういうことは早く言えエルフ。では後にここに集合だ」
「おいドラゴン魔力……あの野郎!」
さらに30分後
「あら、お帰りなさいドラゴン。見て! ようやくシュウの足が治ったわ。私ちゃんと我慢して待ったわよ! まぁ、あなたより大人だから当然なんだけどね! ……というかどうしたのそんな悲しそうな顔して」
「肉の本を見つけたのだが……」
「へぇ、見してみなさいよ……ふーん、結構美味しそうじゃない。でもこれって生肉よね……ドラゴンあなたまさか?」
「我……焼かないと食べれんのだ」
「ドラゴンなのに!? 私てっきりドラゴンって生肉食べてるもんだと思ってたんだけど! いやでも、生肉で食べられないなら自分で焼けばいいじゃない。そうよ、ドラゴンの属性って炎でしょ?」
「か……加減が苦手なのだ。何回か試したが全部消し炭になった」
「そ、それは気の毒ね。シュウが急がば回れって言ったのもあながち本当だったのかもしれないわね」
その言葉を聞いてドラゴンはさらに悲しそうな顔になった。




