廃屋
指定された住所へ行くと、そこは打ち捨てられて久しい廃屋だった。
表札も、風化が激しくて読むことができない。
ここの登記簿を見る必要があるなと思いながら、さび付いた門を開ける。
不快なギィという音を鳴らしながら、門はゆっくりと開いた。
「こんにちは、誰かいませんか」
こんなところで誰かと会うわけがないだろうと思ったが、私書箱の転送先がここになっているということを考えると、誰かがここにきて受け取っているはずだ。
だが、俺の声にこたえるものは、住み着いているであろう鳩とスズメぐらいだ。
「入りますよー」
俺は次の手掛かりを求めて、家の中へと入ることにした。
おもわず口と鼻を覆いたくなるようなカビ臭さが、建物に入るとすぐにきた。
「誰かいませんかー」
返事する者はない。
腐りかかっている床を、踏み抜かないように慎重に歩き、2階と1階のすべての部屋をしらみつぶしに調べる。
誰かがいたという形跡はあるが、それが誰かということはわからない。
最後に入った部屋に、その形跡はあった。
部屋の真ん中に置かれた4脚の椅子と1つの丸机。
机の上にはトランプのキングが5枚、なぜかスペードだけが2枚ある。
それに、部屋から入ってすぐに見えるように置かれているダーツの的。
何か手がかりになるかもしれないと思い、トランプのカードだけをジップロックに入れ、すぐに廃屋から出た。