第27話:再起動(リブート)と軍団(レギオン)への誓い
静寂。そして、果てしない白。
胸を穿たれた冷たい感触と、視界を埋め尽くした「0」の数値。
死の直前、レンの目に焼き付いていたのは、光の粒子となって消えていったアイアン、アーチェ、フィア、ハック、そしてクレイの姿だった。
「……ッハ……!?」
突如として肺に流れ込んできた空気の重みに、レンは激しく咳き込んだ。
固い石畳の感触。立ち昇る潮と埃の匂い。
跳ね起きるように周囲を見回すと、そこは廃都の地下水道ではなく、見覚えのある「初期街の裏通り」――リスポーン地点だった。
「生き……ている、のか」
自身の両手を見つめる。HPゲージは全快。デスペナによるステータスダウンの通知がシステムウィンドウに虚しく点滅していた。
あの敗北は、夢ではない。
前世の知識と最適化を過信し、生身のプレイヤーが持つ「閃き」と「結束」、そして「プレイスキル」の暴力に圧殺された事実。
「アイアン……アーチェ……ハック……フィア……クレイ……」
レンは低く掠れた声で名を呼んだ。だが、当然ながら返答はない。
急いでメニュー画面を開き、Botのステータス管理タブを叩く。
『対象Bot:ロスト(再生成・データ初期化待機中)』
赤く表示された文字。
全滅し、コアを破壊されたBotたちは、システム上「初期状態」へ戻され、世界のどこかにあるBot配置拠点へ再配置されていた。
「消えて……いない。探せば、また会える」
レンの瞳に、暗く静かな火が灯った。
敗北の悔しさが、胸の奥で苛烈な冷気となって思考を研ぎ澄ましていく。
敗因は明確だ。
小規模な「オフライン軍隊(小隊)」の限界。システム上の理論値だけで組まれた陣形は、人間の柔軟なアドリブと圧倒的な火力連携の前に破綻した。
「なら……『最適化』の規模を変える」
レンは端末のコードを高速で打ち込み、世界マップのBotスポーンデータを再構築し始めた。
単なる5人の小隊ではない。
各地に野良として放置されている棄てられたBot、システムエラーを起こした自律型アーティファクト、そして初期化されたかつての仲間たち――。
それら全てをハッキングし、一元管理(統制)するシステムネットワークを構築する。
「数で押してくるなら、こちらも数で叩き潰す。……『軍隊』で届かないなら、『軍団』を作ればいい」
一度死んだ男は、静かに闇へと歩き出した。
奪われた仲間たちを回収し、各地のBotを従え、巨大ギルド『天狼』を完膚なきまでに踏みにじるための、第二の最適化が始まる。




