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テンメイズヘル  作者: アントン
序章
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1/9

地獄と化した仙台

江戸時代。

陸奥(東北地方)最大の城下町・仙台。

伊達政宗が築いたこの町は、多くの人々で賑わっていた。

その仙台城下に、一人の少女が立っていた。


―――なにも、ない。


「夢なら、覚めてよ……」

少女は呆然と立ち尽くしていた。


街に活気はなく、人の姿はない。

あれほど賑わっていた仙台城下に、聞こえるのは風の音だけ。

あたりにはすえた臭いが立ち込めている。

曇天に濁る空を見上げても、太陽は見えない。

世界から、色という色が消えていた。


少女―――リンは恐る恐る歩き出す。

ここは、どこなのか。

今まで自分が住んでいた「仙台」ではないのか。

見慣れたはずの街並み、何度も歩いた寺子屋への道。

そのどれもが記憶にあるはずなのに、彼女の知るものとはかけ離れていた。

店は開いておらず、軒先も壊れている。

まるで長い間、放置されていた廃墟のよう。


一日前の自分は想像もしていなかっただろう。

平和で、何の変哲もない日常に満足していた自分が、まさかこんな状況になるとは。

人の気配はおろか、ネズミ一匹すら見当たらない街が、あの仙台城下であろうとは。


不安を抱えながら歩き続ける鈴は、この街が滅びるまでの日々を思い起こす。

鈴が今まで過ごしていた「天明元年(西暦1781年)」の仙台。

物語は、鈴がいつも通り寺子屋へ向かった朝へとさかのぼる―――。

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