山を登れ
電車からバスに乗り換え、長時間揺られた後に、ようやく登山を開始した。
今は5月ということもあって、まだ少し寒い。
3000メートル級の山ということでかなり警戒していたが、山道は想像していたほど険しいものではなくて、少しキツいピクニック気分という感じだった。
ただし、楽なのは登山道に従って進んでいる間だけ。
<賢治さま、ここからは道を外れます>
そう言ってメタトロンが指し示した方向は、完全なる断崖絶壁だった。
一般人がトライしてはいけないような、レベルだ。足場は20センチほどしかなく、壁に張り付いて進むしか無いが……
(……ヤバそうだな)
滑落すれば死ぬだろう。というルート。
当然、俺も怖いが、
(私、無理かもしれません)
(ウチも無理っス!)
ミカンと凜音の二人も首をブンブン振って否定している。
……ここまで来てリタイアか。仕方ないと言えば仕方ないが……
そう思って立ち往生していると、メタトロンが口を挟んだ。
<賢治様、私に一つ考えがあるのですが、よろしいですか?>
(考え?)
<はい。神の風呂敷に凜音様と蜜柑様を収納するのです。そうすればいざという時、お二人の命は私がなんとか助けます>
(なるほど……一つ聞きたいが、その『いざという時』に、俺はどうなる?)
<……解答を拒否します。しかし、賢治様は神の加護の影響で現実世界でもダンジョン内と変わらない身体能力を持っています。三人の中でも、この世界であれば賢治さまが圧倒的に身体能力が高いので、お一人で進むのが賢明かと。仮想演算でも、その方法が最も安全だという結果になりました>
(二宮さん、お願いします)
(先輩、すみません。ウチもお願いするっス)
くそ、つまり俺が二人を運ぶってことか。
なんだか下働きさせられているみたいで腹が立つが……しかたない。
(分かった、そうしよう)
すぐさま、凜音とミカンの二人を収納し、壁に張り付いた。
断崖絶壁ということもあって、風もすごい。吹き飛ばされそうだ。
だが、不思議とそれほど不安は感じない。
……ああ、きっとこれは、禁区で黒い騎士と対面したときと比べると、大した恐怖じゃないからだ。
あの時、死は目前に迫っているのを感じた。けど、今は違う。
足を滑らせたら死ぬかもしれないし、手を滑らせてもやっぱり死ぬかもしれない。
けど……それだけだ。
慎重に、手足を滑らせないように気を使い、突風にも耐えられるように心構えをしておく。
下を見ると心が竦むから、なるべく壁面だけを見て、安心できそうな足場を選び続けるだけだ。
かなりの寒さのおかげで、汗で手を滑らせることもなく、10分ほどで最も危険度の高いエリアは抜けた。そして、更に五分ほど道なき道を進んだところで、小さくて簡易的な社を見つけた。
<賢治様、おみごとです。目的座標に到着しました>
やっぱり平気だったな。出来る予感がしていたんだ。
※以下、少し短いので、おまけです。現時点での凜音と賢治のステータスになります
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悪道凜音 マナ総量:125150
基礎ステータス
力:77
体力:55
技術:60
素早さ:96
魔力:32
魅力:40
運:1
残ステータスポイント:0
残スキルポイント 0
ユニークスキル:『正々堂々』:『全ステータス向上』『魔法攻撃耐性(弱)』『状態異常耐性』
スキル:剣LV5 鈍器LV3 軽装備LV4 煙幕LV3
取得可能スキル:二刀流 マジギレ ぶちかまし 特攻 ……その他10種
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二宮賢治 マナ総量:200270
基礎ステータス
力:40
体力:37
技術:55
素早さ:80
魔力:18
魅力:10
運:100
残ステータスポイント:0
残スキルポイント 0
ユニークスキル:『神の叡智』:『完全記憶』『解析』『神の風呂敷』『神の加護』『自己管理』
スキル:鈍器LV5 中装備LV5 ふんばりLV1 危機回避LV9 逃走術LV6
取得可能スキル:暗視 火事場の馬鹿力 集中 幸福 戦闘本能……その他35種
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