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第47話 まだ見ぬ人のために

「それでは、これ。約束の依頼料です」

 カウンターの上に革袋を置いて、アデルさんは頭を下げた。

「シルカさんのお陰で無事にダンジョンを制覇できました。ありがとうございます」

 革袋の中には、金貨が十枚入っていた。

 僕がダンジョン探索で役に立ったのはダンジョンの入口に張られた結界を解く時だけだ。それを考えたら、この金額は少々貰いすぎな気がしないでもない。

 そう言うと、今回のダンジョンでは結構な数の宝を手に入れられたから、その分け前も含まれているのだという答えが返ってきた。

 何でも、ダンジョンの中で僕たちがばらばらになった時、合流する途中でかなりの宝箱を発見できたのだとか。

 そういうことなら、有難く貰っておくことにしよう。

 僕は貰ったお金を金庫にしまおうとして──水晶の短剣の存在に気が付いた。

 そういえば、これも貰ったんだっけ。

 僕は、ふとアラグのことを思い出した。

 これと同じ短剣を持って、こいつに関する情報を集めてくると言い残して旅立った彼は、今頃どの辺りを冒険しているのだろう。

 僕が同じ短剣を手に入れたと知ったら、何と言うだろうか。彼は。

「シルカさんは、これからも此処で商売を?」

 アデルさんの問いに、僕は頷いて答えた。

「僕は商売人だからね。この店をたたんで旅に出るなんてことはありえないよ」

「錬金術師として旅をすれば商売をするより儲かるのに。もったいない」

 腕を組んで顎を撫でるサーファさんの横で、アミィさんがぽつりと言った。

「彼は気が小さいから、冒険者には向いてない」

 ……本人を前にして気が小さいときっぱり言うのはどうかと思うが、彼女の言う通りだ。

 僕には魔物を前にして平然としていられるような心臓は持ち合わせていない。冒険者には向いてないと思う。

 二人をこらこらと嗜めて、アデルさんは微笑みを見せた。

「私たちのように、貴方の錬金術に助けられる人はこれからも大勢いると思います。これからも、その力を皆のために役立ててあげて下さいね」

 これからも……か。

 今回のようにダンジョンに連れて行かれるのは御免だが、街の助けになる範囲で錬金術を役立てていきたいとは思っている。

 錬金術は、皆の身近にある学問だから。それを感じてもらうために、僕は此処でよろず屋を経営しながら錬金術師であり続けるのだ。

 それでは……とアデルさんたちはカウンターから離れた。

「それでは、私たちは帰ります。これからの日々が、貴方にとって良きものでありますように」

 彼らは街の宿に宿泊しているらしい。今日はそこで一泊して、明日アメミヤを発つのだそうだ。

 去っていく彼らを、僕は笑顔で見送った。

「道具が入用の時は是非おいで。安くしてあげるよ」


 夜が更けていく。

 店の掃除を簡単に済ませた僕は、戸口を閉めて鍵を掛けた。

 もう、ダンジョンには行かない。此処で商売をしながら平穏に暮らすんだ。

 そう、心の中で思いつつ──

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