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第38話 地震

 それは、僕が棚に新しく商品を並べている時に起きた。

 棚がゆらゆらと揺れて、置いてあるポーションの瓶がことんと横に倒れたのだ。

「……?」

 僕は倒れた瓶を直そうと棚に手を伸ばした。

 その時。

 ずん、と足下がまるで巨大な生き物が地面を踏みつけたように激しく揺れ始めた。

 僕はびっくりして、その場に尻餅をついてしまった。

「じ……地震!?」

 棚から、次々と商品が落ちていく。

 棚はずれ動き、床は散らばった商品で埋もれ、店内は目茶苦茶だ。

 建物……潰れないよな、大丈夫だよな!?

 外の方でも悲鳴が上がっているのを聞きながら、僕は自分の身の安全よりも店の無事を願うのだった。


 地震は三分ほど続き、店内を散々ひっくり返してようやく収まった。


 ああ……大惨事だ。

 商品が散らばる床を見つめながら、僕は溜め息をついた。

 棚に載っていた商品は残らず床に落とされていた。幸い瓶が割れたとかそういうことはないのだが、元通りに片付けるのに時間がかかりそうだと考えると憂鬱な気分になった。

 嘆いていても状況は変わらない。このままじゃ商売にならないし、片付けよう。

 僕が店内の片付けを始めると、ほどなくして、外から買い物に来た冒険者たちが入ってきた。

「……うわ、凄いな。まるで雪崩じゃん」

 冒険者の一人が店内を見て唖然とした。

 彼の連れらしい別の冒険者が、商品を拾い集める僕の元にやって来る。

「あの、手伝いましょうか?」

「……ごめん。宜しく頼むよ」

 僕は正直に頭を下げて、皆に片付けの助っ人をお願いした。

 ずれた棚の位置を直して、商品を元の場所に戻して。

 数人がかりで作業をしたお陰で、店は三十分ほどで綺麗になった。

 片付いた店内を見回して、僕はふぅっと息をついた。

「ありがとう。助かったよ」

「凄い地震だったね。ここ最近地震なんてなかったから余計に驚いたよ」

 冒険者は仲間と顔を見合わせながら、言った。

「大きな地震の後はダンジョンができる、っていうけど、何処かにできたのかな、ダンジョン」

「うーん、どうかな?」

 大きな地震が起きると、決まって新しいダンジョンが発見されるのだ。

 地中に埋もれていたダンジョンが地震で姿を現すのだとか、ダンジョンを生み出している自然の力が地震を起こしているのだとか言われているが、正確なことは分かっていない。

 しかしダンジョンが発見されるのは紛れもない事実であり、地震が起きると新たな冒険の場を求める冒険者がダンジョン探しの旅に出るのは、もはや一種の決まりごとのようなものなのだ。

 この分だと、今頃冒険者ギルドは情報を求める冒険者たちで賑わっていることだろう。

 そして、この店も。身支度を整える冒険者がこぞって品物を買いに来て繁盛するはず。

 久々に忙しくなりそうだな。

「冒険者ギルドに行ってみようよ。何か情報が出てるかも」

「そうだなぁ。……あ、マスター。ポーションくれる?」

「いいよ。片付けるの手伝ってくれたからサービスするよ」

「本当? ラッキー」

 さあ、商品を作り足しておかなくちゃ。

 僕はカウンターに立ちながら、この冒険者たちが帰ったら早速商品作りを始めようと思うのだった。

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