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第37話 それがよろず屋だから

「それじゃあ、これ」

 僕はアリスさんに、しっかりとページを閉じた書物を渡した。

「すみませんでした。私が持ち込んだこの本のせいで、危険な目に遭わせてしまって」

 アリスさんは書物をしっかりと腕の中に抱いて、深々と頭を下げた。

 僕はかぶりを振った。

「君が体を張って戦ってくれたから、僕たちはこうして無事に戻ってこれたんだ。こっちこそありがとう。僕のことを守ってくれて」

 起きてしまったことは仕方のないことだ。

 状況の打破のために彼女は力を尽くしてくれたのだから、それは素直に感謝したいと思う。

 もう二度と、同じ目に遭うのは御免だけどね。

「その本、王都の図書館なら喜んで買い取ってくれると思う。なくさないように大事に持って行くんだよ」

「はい」

 彼女は頷いた。

「今度は、もっと一般的な宝物を見つけて持ってきます。そうしたら、買取してくれますか?」

「ああ、いいよ」

 よろず屋は、時には人に骨董品と思われるような品物だって取り扱う。

 それがよろず屋と呼ばれる所以であり、よろず屋の存在意義だからだ。

「それでは……ありがとうございました」

 アリスさんは礼を述べて、店から去っていった。

 一人店に残された僕は、腰に手を当てて店内を見回した。

 いつもの棚に並ぶ、いつもの商品。

 僕が錬金術を使って丹精込めて作った、自慢の一品。

 これらが無事に売れていくように、見栄え良く手入れをしてやろう、と思う。

 掘り出し物がなくたって、これらだけでも十分に店は成り立つのだから。

「こんにちは。マスター、魔術師用の杖って置いてる? 魔物に折られちゃってさー」

「いらっしゃい。あるよ。どんな杖がいい? 良さそうなのを見繕ってあげるよ」

 訪れた客に希望の品を見せながら、僕は何気なく店の外に目を向けた。

 店の前の通りは、街外れであるにも拘らず多くの通行人が往来している。

 この様子なら、まだまだ客は来るだろうな。

 一人でも多くの客が店を覗いていってくれることを願いつつ、僕はいつものようによろず屋の店主として店内を忙しく動き回るのだった。

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