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1000年後の未来からやって来たアラサーの世界統一  作者: カズミ


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第42話 有馬家 肥後国統一

ハイペリアン乗組員

坂本リョウマ    日系アジア人 28歳 男性 中佐 戦略参謀 

西郷たかお     日系アジア人 28歳 男性 中佐 内政参謀 内政担当

大久保トシオ    日系アジア人 28歳 男性 中佐 外務参謀 外交担当

勝りん太郎     日系アジア人 25歳 男性 少佐 海軍参謀 

乾タイスケ     日系アジア人 25歳 男性 少佐 陸軍参謀

福沢ゆー吉     日系アジア人 25歳 男性 少佐 財務参謀  財政全般


ヘレン ダルク   フランス人  25歳 女性 少佐 医療参謀  医療技術

服部ハンゾウ    日系アジア人 25歳 男性 少佐 警察参謀  情報捜査

杉原 ねね     日系アジア人 20歳 女性 少佐 教育参謀 


陸軍副参謀サユリ:戦略戦術立案用アンドロイド、日系アジア人20歳女性

志筑忠雄     陸軍技術開発部  



橘商会 敦賀支店 支店長  道川兵三郎 元敦賀港の川舟座の頭

    奥州地区 支店長  蠣崎義広   元安東家家臣

    横須賀港  店長  蠣崎光広   元安東家家臣

    長崎支店 支店長  長崎 一朗太  元長崎豪族 




 1496年8月


 日野江城(ひのえじょう)有馬家居城


 雨が上がりかけの夕暮れ、有馬晴純は書院に一人座していた。


 年老いた指先で茶碗を回す。

 障子の向こうから、足音が近づく。


「――父上。」

 晴純が顔を上げると、そこに立っていたのは

 蝦夷国から帰って来た、有馬義貞だった。


「呼び戻してくださり、感謝します。

 それと遅れましたが、

 新政府の参与に就任おめでとうございます。」


 晴純は頷くと、黙って湯を注ぎ、義貞に手渡す。


「これから、ますます忙しくなるので、晴純を呼んだのよ!

 儂は京の御所で政務を取る形になるので、肥前は、

 そちに任せるので頼んだぞ。


 蝦夷国の様子は、どうだった。」


 義貞は茶を一口飲むと、小さく息を吐き、静かに言葉を紡いだ。


「父上……、別世界でした。」


 義貞は懐から蝦夷国で受け取った新政府の書状、設計図の写し、

 そして小さな鋼の部品を机の上に並べる。


「これが彼らの船を動かす蒸気機関の一部、

 これは新政府の鉄道の構想図、

 そしてこれが有馬陸軍に標準装備する戦車と

 エンフィールド銃の設計図と見本です。」


 晴純が、エンフィールド銃を持って。

「これが、細川軍を引かせた銃か、火縄とは根本的に違うな。」


 義貞はその瞳を父に向けて。

「これからはこの日本から戦いを無くして

 民が笑ってを暮らして行ける国にしたいです。」


 晴純は微かに笑った。


「……義貞、お前はあちらで、ずいぶん学んだな。」


 義貞は深く頷いた。


「まだまだ、覚えることが沢山あります」

 と苦笑した。


 数日後――


 潮風に煙と鉄の匂いが混じる、長崎軍港の奥地。


 そこでは、蝦夷国から派遣された乾少佐が、

 新たな時代を動かす工場を築いていた。


 港に横付けされた橘商会の蒸気船から、

 ハイペリアン内で製造された、

 ミスリル製ブロック、ユニット建築型モジュールを

 トラックに積み替えていく。


 埠頭を見下ろす小高い丘で、

 乾少佐は作業服の裾をまくり、汗をぬぐった。

「よし、順調だな。」

 陸軍副参謀サユリ:戦略戦術立案用アンドロイド

「はい、本日中には工場建屋は完成しますので、

 明日からは組立ラインの設置となります。」


 乾少佐は小さく息を吐き、ぼやくように呟いた。

「……もっと人足が欲しいところだが、

 どこも人手不足だ――贅沢は言えんか。」


 工場建屋が完成すると

 乾少佐の指揮のもと、港から次々と積み込まれた機材が

 建てたばかりの工場棟に運び込まれていった。


 蝦夷国から送られた大型旋盤、プレス機、鋳造炉。

 無限軌道を組むための溶接ロボットも、

 黙々と定位置に据えられていく。


 乾少佐はヘルメットを外し、

 無機質な工場の奥に目をやった。


「しかし、この……溶接ロボットは、明らかに

 オーバースペックだよなあ。今の技術ではできるのは、

 ロボのメンテぐらいかな。」


 そのすぐ隣では、戦車及び鉄砲製造棟の建屋も完成し、

 同じように銃身を削り出す旋盤や、

 弾丸の薬莢をプレスする機械が運ばれていく。


 8月中旬


 戦車、鉄砲の製造のラインも、完成した。


 工場地帯の裏手――

 赤土のグラウンドに、鉄砲を握った有馬家の若武者たちが

 一列に並んでいた。


 指導しているのは有馬 義貞。

 蝦夷国で仕込んできた“銃の構造”を叩き込むために、

 連日、休む暇などない。


「腕の力で撃つな! 肩で受けろ!

 的を外すな、次――!」


 乾いた銃声が、野に散る。

 撃ち慣れない若者たちは、初めての反動に肩を痛めながらも、

 弾が的に食い込むたびに、声を潜めて笑った。


 野戦訓練場に散らばる火薬の匂い。

 兵士たちの汗と弾丸の音が響くのであった。


 鉄砲ラインの裏手――

 その隣の敷地では、また別の音が響いていた。


 大政奉還のあと、有馬家に続々と臣従してきた周辺の豪族たちが、

 整然と列を組み、弓を握っていた。


 握っているのは、ただの弓ではない。

 蝦夷国で設計されたコンパウンドクロスボウだ。


 木製のフレームに、鉄製の滑車とワイヤーが組まれた物。


「構え、狙え――放て!」


 号令を飛ばしているのは、義貞の側近――井手口 兵庫。


 古くから有馬家を支えてきた老練の武人だが、

 この弓だけは、自分もまだ試しながら教えている。


 木の感触は馴染みがいい。

 なのに、狙いを定めて引き絞るのは拍子抜けするほど軽い。


 初心者でもすぐに扱えるように調整された

 “蝦夷仕様”のこのクロスボウは、

 矢が放たれると、まるで鉄砲のように一直線に飛んでいく。

 特訓の結果、近距離では100発100中の好成績を

 出せるようになった。


 昼の野戦訓練場。

 射撃場の奥で、有馬義貞は展開図を片手に立っていた。


 彼の頭の中では、もう何度も同じ光景が描かれている。

 鉄砲の咆哮と、戦車の履帯が土煙を上げる未来の戦場だ。


 鉄砲隊は前衛。

 敵の先鋒が踏み込んでくる前に、戦車の砲撃で

 で威嚇する。

 敵が怯んだ隙を狙って、エンフィールド銃の弾幕で

 戦意の喪失を狙い、

 戦車隊が後衛から前線を押し上げる。


 一方で、クロスボウ隊の役割は夜襲、奇襲、遊撃担当。

 有効射程はせいぜい50メートルほどなので

 影のような部隊に仕上げるつもりでいたのだった。。


 数日後


「あとは、職人の訓練だな」乾少佐は後から派遣されてきた、

 陸軍技術開発部 志筑忠雄に言った。


 志筑忠雄

「はい、少佐、小樽の工房から若いのを10人連れてきたので

 早速有馬の職人たちに戦車生産ラインの動かし方、

 鉄砲の製造方法を、ガッチリ

 叩き込んでやりますよ。

 尚、専門学校も作り若手職人の育成もしますよ。」


 乾少佐

「うむ、頼むよ。

 来年には大友との戦いになりそうだからな。

 月戦車1台、鉄砲10丁の量産にしたいね。」


 翌日から、有馬家の職人たちが集められて志筑忠雄たちの

 地獄の特訓が開始されたのであった。


 8月下旬

 橘商会の長崎一朗太が乾少佐の元へやって来た。

「乾少佐、やっと小樽港から戦車2両が到着しました。

 只今、点検整備をしておりますので、明日から訓練に使えます。」

 満面の笑みで言った。


 乾少佐

「お、待ってたぞ。」


 翌日から、有馬家の士官を集めて、操縦訓練が開始されたのであった。


挿絵(By みてみん)


 数日後


 長崎軍港の奥に広がる工場群は、

 今日も鉄の火花を撒き散らしていた。


 その一角――

 新政府兼橘商会の商館に、ひときわ目立つ一団が現れた。


 前を歩くのは、肥前の古豪、龍造寺 康家。

 白髪混じりの髷をゆるく結い、

 まなじりを鋭く上げた目が、どこか老獪さを隠さない。


 蝦夷国の情報部が、数ヶ月に渡り

 龍造寺家の内紛を水面下で整理してきた結果――

 ついに龍造寺家は、新政府への臣従を決めたのだ。


 執務棟の一室で、有馬晴純、乾少佐が立ち上がった。


 有馬晴純

「康家殿、お久しぶりです。

 また遠路ご足労いただき、恐れ入ります。

 こうして我が国と共に歩んでいただけるとは、

 頼もしい限りです。」


 康家は深々と頭を下げ、

 唇の端を僅かに持ち上げた。


「こちらこそ、晴純殿もご達者で何よりです。

 我らも、この日の本のため助力致したく存じます。」


 乾少佐

「私は蝦夷国、陸軍参謀、乾タイスケです。

 よろしくお願いします。」

 と言うと。


 背後の襖をスッと開けさせる。


 その向こうには、整然と並んだ戦車の設計図、

 組み立て途中の砲塔、そして試作銃が無造作に置かれていた。


 康家の瞳が、一瞬だけ光る。


「……これが、戦車か。」


 乾少佐はにこりと笑った。


「ええ、これからはこの戦車と共に

 貴殿の領民をお守りいたします。」


 そして乾少佐は、目の前の低い机に、

 蝦夷国の新政府が用意した誓約文が置いた。


 康家の背後には、肩を張った家臣団が息を潜めている。

 誰もが、これが龍造寺家の未来を決める瞬間だと理解していた。


 幸太郎はゆっくりと口を開いた。


「――条件はお伝えした通りです。

 肥前国・佐賀郡の領地は返還します。

 代官としての身分、そして収入も【蝦夷銭】で保障する。」


 康家の眉が僅かに動く。

 口元には、老練な男に似つかわしくないわずかな安堵が浮かんだ。


「我が家臣たちにも、同じく身分と禄を保証してくれるのか?」


 乾少佐は頷く。


「もちろんです。彼らにも家族があり、

 鉄砲や戦車を握るには、腹を満たさねばなりませんから。」


 室内に、硬い笑い声が小さく漏れた。

 康家は指先で机を叩き、一枚の朱筆を手に取る。


 康家は誓約文に目を落とし、力強く読み上げた。


「この龍造寺康家、6ヶ月間、蝦夷国にて学ぶ。」


 乾少佐は笑みを浮かべ、

 机の端に置かれた印章を差し出した。


 有馬晴純

「ご安心を。有馬家が家臣団を引き受け、

 軍事訓練はみっちりと。

 佐賀に戻る頃には、皆さん立派な【新政府の兵】です。」


 康家の家臣たちの背筋が、思わず伸びる。

 新しい武具、新しい戦い、新しい秩序――

 もう後戻りはできない。


 康家は朱筆を置き、静かに笑った。

「お頼み申す。」


 硝子窓の外、長崎の港に停泊する蝦夷国の蒸気船が

 黒煙を静かに吐き続けていた。


 こうして、肥前国は、有馬家に統一されたのであった。












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