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あなたの仰ってる事は全くわかりません  作者: しげむろゆうき


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3/3

3


「ぎゃあああっーーーーー!!」


 静けさに包まれた午前中、学院にある使われていない部屋で大きな悲鳴が上がった。

 それが合図となりアルト様含む騎士達が突入も。


「さあ、行くぞ」

「はい」


 安全が約束されているので父と私も彼らの後に続いて。「ネイダン」という獣が罠にかかったているのを確認するために。

 それも私の格好をした騎士の男性によって組み伏せられている……


「全く、この方は白薔薇姫と男の見分けもつかないのか……」


 そう呟きながらアルト様は呆れた様子で目の前の光景を見つめる。

 父の方は怒り心頭とばかりに殿下に歩みよったが。


「何をしたかわかっていますかね?」


 言葉は丁寧だったけれど睨み付けながら……と、殿下は恐怖に慄く。

 

「ひっ! ち、違う、これは! 私がアリーナに誘われ……あれ、なんでアリーナがそこに? うわっ、誰だお前は!?」

「私の部下ですよ。それに無理矢理連れ込んだの間違いでしょうが」


 そう言って、後ろからレンゼル様が頭をかきながら部屋に入ってくる。

 目の前の光景を見て溜め息を吐き、アルト様と同じことを呟かれて。

 ただし、「ぼ、僕を騙したのか? ふざけるな!!」

 そう殿下が怒鳴ってきたことで顔をすぐ顰められたが。

 それは父も。


「人聞きの悪い。私の大切な娘を守る為ですよ。どこかの羽虫にたかられないようにね」


 そう言いながら。


「は、羽虫だと!?」


 しかも殿下がそう尋ねると父はわざと驚いた表情にもなって。

 まあ、瞳の中に殺意を抱いてだけれど。


「おや、自分を羽虫だと思ってしまうということは娘を襲おうとしたのは自覚してるのですね」


 そう言うなりやはり腰に下げた剣に手をかけてしまって。

 ただし、いつも通りにネイダン様はそんなことも察することもできずに開き直ろうとしてきたが。


「あ、ち、違う、私は話があるからたまたま空いている部屋に連れて行っただけだ!」


 この期に及んで……と、アルト様にすぐ否定される。


「入念に下調べをしたのはバレてます。それに王妃様に既成事実を作れと言われているのもね」


 だから、殿下は驚愕の表情を浮かべ「なっ……」と。

 つまり、なぜ、バレたんだ? と。

 まあ、父は優しいのであっさり教えてあげたが。


「王家で唯一まともな第二王子が色々と手伝ってくれましたね。迷惑をかけると頭まで下げて」

「あ、あいつか! でも、母上……」

「ああ、今、伝令を送ったので陛下の耳にもすぐに届くでしょうから王妃には期待しないで下さい。伝令が伝わったと同時に離宮の奥に幽閉されますからね」

「じ、じゃあ、僕はどうなるんだ!?」

「廃嫡に決まってるじゃないですか。そもそもあなたがこの国の国王になったら終わりでしょうが」

「あ、ああーーー! やだあああっ!!」


 そう叫びながら殿下は突然、暴れだし私の方に手を伸ばしてくる。


「アリーナ! 僕を助けろ! お前が僕と一緒になれば全て解決するんだ! さっさとしろおおぉぉ!!」


 よくわからないことを叫んできながら……と、私は大きく息を吐いてしまう。

 そして、拳を握りしめて殿下を睨みつけるアルト様に「私に任せて下さい」と笑顔を。

 何しろ、私も早く終わらせたかったので。


「ただし、私のやり方でだけれど」


 そう呟きながら私は殿下の前に行く。


「ふん、さっさとこいつらに言ってやれ! 僕達は愛しあっているってな! お前ら覚悟しとけよ!」


 そう叫んでくる勘違い者を全否定するために。


「殿下」

「なんだいアリーナ?」

「あなたの仰ってる事は全くわかりません。でも、わかる必要はないんです。だって、私は二度とあなたと会いたくないと思っていますし、もう会う事もないですから」

「えっ……。な、何を言ってるんだ?」

「全く、少しは人の話を聞いて考える努力をして下さいよ。良いですか。自分勝手で人の痛みも理解できないあなたの顔なんか見たくないですし声も聞きたくないんです。これだけ言えばわかってもらえますよね?」

「う、嘘だよな……。アリーナは僕と婚約……」

「名前で呼ぶのはおやめ下さい。私達はもう婚約解消していますから」

「で、でも、小さい頃……」

「愛情はありません。あったのは同じような重圧を一緒に背負って頑張っていこうという戦友、つまり友情ですから」

「そんな……」

「けれど、もし結婚をしたら愛して支えようと思っていました。けれどあなたは裏切った。しかもあのタイミングとあの場所で」

「あれは急にアナスタシアが我慢でき……」

「できなかったのはあなたでしょう?」

「そ、そ、そ、そ……」

「いい加減にして頂けませんかね。既成事実まで作ろうなんて気持ち悪い」


 私は睨みつけてから離れると目の前の人は目を見開いて叫び出す。


「あ、あ、あああーーー!」


 そんな中、今度はアルト様が笑顔で目の前の人に頭を下げる。


「あなたにはお礼を言いますよ」


 そして、叫ぶのを止め、目だけ動かす人に続けて言葉も。


「私はずっとお慕いしている方がいたのですが、その方には婚約者がいましてね。だから、幸せを願い遠くで見守っていたのです。しかし、ある日、相手の婚約者が馬鹿な事をしましてね。おかげで私にもチャンスが巡ってきたんです。なので……改めて本当に馬鹿をしてくれてありがとうございます」


 そう言い終わるなり、こちらをじっと見つめてこられて。熱い眼差しで……と、思わず私が頬を赤くしてしまうと父が声をかけてくる。


「うむ、後は私達がやっておくから二人は話をしてくると良い」

「お父様……」

「アーガイル公爵、ありがとうございます」

「ふっ、チャンスをやるだけだからな。勘違いはするなよ」


 父はそう言いながらも屈託のない笑顔をアルト様に向ける。そんな父にアルト様は騎士の礼を。


「わかってます。ただ、誓わせて下さい。私は必ずお嬢様を幸せにしますと」

「うん、アリーナ、良かったな」

「はい……」


 私はそう答えるとアルト様にエスコートされながら、空き部屋を出ていったのだ。

 後ろで誰かのすすり泣く声が聞こえた様な気がしたが決して振り返らずに。



 あれから、王妃と廃嫡されたネイダンは僻地にある小さい屋敷に一生、幽閉となった。

 父いわく、馬鹿な事を考えないように生活の全てを自分達でやらせながら。しかも、教えるのが偏屈なお年寄り達らしく、二人とも苦労するだろうとも。


 ちなみに陛下は肩身が狭くなり、周りにキツく当たられるため、最近は王太子になった第二王子に早く玉座を譲りたいと泣きながらお父様に訴えているらしい。

 ただ、もう少し、仕事を頑張ってほしいと父が怖い笑顔で言ってるので、当面、陛下は父を含む大臣達のストレス発散に使われるのだろうけれど。

 椅子に座る暇もなく。


 私達と違って……と、今日も私とアルト様は薔薇園で楽しくお喋りをしている。正式に婚約しているので堂々と。


「そういえばここでアリーナ嬢を初めて見たのですよ」

「まあっ。そうだったのですか」

「あの時、あなたの後ろには白薔薇が沢山咲いていて良く似合ってましてね」

「ああ……。あれであだ名が付いてしまったのですよね……」

「白薔薇姫ですよね。ちなみにその名付け親を私は知っていますが」

「えっ、どなたですか?」


 私は興味があったので尋ねるとアルト様が自分自身を指差す。

 私は思わず笑ってしまった。


「ふふふ、なんだか想像できません。まさか、そんな悪戯をするなんて」

「いえいえ、私がつい呟いてしまったのを周りが広めてしまったんですよ」

「まあっ。そうだったのね。それじゃあ、仕方ないですよね。微笑みの貴公子と呟いてしまった人と一緒で」


 そう言って私が悪戯っぽい笑みを浮かべるとアルト様は驚いた後に笑いだす。

 あだ名以上の素敵な表情で。

 だから、私はそんなアルト様を見て、つい呟いてしまった日を思いだしたのだ。

 こちらを見て惚れ惚れするぐらいの微笑みを浮かべていたあの日を。


 てっきり、白薔薇を見て微笑んでいたのかと思っていたけれど、今思えばアルト様は……


 そう思った直後、目の前であの時と同じように微笑むアルト様に私はあらためて今までにない幸せを実感するのだった。



fin.

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― 新着の感想 ―
[一言] すごく面白かったです!
[一言] 第一王子に既成事実を作れと言った王妃様もかつては厳しい王子妃教育を受けたはずなのに、この醜態は何ですかね? それとも、過去の厳しい教育を受け終えて、その教育が厳しい物だと知っているから息子に…
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