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あなたの仰ってる事は全くわかりません  作者: しげむろゆうき


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 つまりは貴族としてあり得ない行為を。

 もちろん私と違い。


「王太子殿下……私の事は家名でお呼び下さい。それともう、婚約者でもないので腕を掴むのもおやめ下さい」


 そう言ってこちらは貴族らしい振る舞いをすることができたので。腕を掴まれるという初めての行為に内心動揺しながら。

 まあ、ただし同時に疑問も感じていたのだけれど。今は王太子教育をやり直しているのだから貴族でもこんなことをして良いわけないことがわかっているはずなのに……と。

 ざわつく周りに気づけていればなお……

 そう思っているとネイダン様は腕は離さずに答えみたいなことを言ってくる。


「私とアリーナの仲だろう。何を気にしている?」


 ただし、勘違いした答えだったけれど。


「……殿下、何を仰っているのかわかりません」

「はあっ、僕の名前を呼んでくれよ。ああ、アナスタシアとの仲を怒ってるのか? だから、ずっと僕に会いに来なかったんだな。全く可愛い奴だ。はははっ」


 しかも、こちらの言葉を全く理解せずにと、私は小さく息を吐く。


 私が怒る?

 会いに行かなかったんじゃなく、もう会う必要がないから行かなかっただけなのに。

 ふうっ、というか元々、思い込みやよく勘違いをしている方だったけれども、ここまで酷くなるとは……


 だから、正直、守衛を呼んでさっさと対応してもらおうかと思ったのだけれど……考えた結果、再度、私は貴族としての振る舞いを見せることにする。

 やはり、これぐらいは自分で対処しなければと考えたので。先のことを考えてしまったら特に。


「勘違いなさっているようですが……私は王太子殿下とアナスタシアの関係にはショックを受けましたが、二人が愛しあっていたことに関しましては怒ってはいませんので」

「な、なんだ、それだったらもう僕達は元に戻れるじゃないか! 早速、このことを父上達に話に行こう。お前から話せばまた僕達は婚約者に戻れるしな! 全く大変だったんだぞ僕は!」


 きっと、今、対処できなければ将来、困るのは自分だから。間違いなくと、無理矢理掴まれた腕を解きながら距離を取る。


「私と殿下は二度と婚約する事はありません。今日あった事は黙っておきますので安心して下さい」


 そして、淑女の礼をしてその場を後に。

 これなら流石に理解できるだろうと思いながら。


「アリーナ! わがままもいい加減にしろ! いくら優しい僕でも限度があるぞ!」


 残念ながりこれでも殿下は理解せずに駆け寄ってきたが。

 ただし、私と殿下の間に割って入る人物、学院に本来いるはずのないアルト様のおかげで再び伸ばしてきた手は私の腕を掴めなかったが。

 それどころか、今ではアルト様によって姿自体も隠れて。


「すみません、遅れてしまいました」


 しかも、切長の目で優し気に微笑むアルト様に状況を忘れ、ドキッとしそうにも。

 「キャーー!」と、いつの間にかいた令嬢達の黄色い悲鳴が聞こえるまでだったけれど……と、我に返った私はすぐに礼を言う。


「あ、ありがとうございます。でも、どうして騎士である貴方が学院に?」

「王太子殿下と貴女が同じ学院にいたら何か起きるだろうと父上とアーガイル公爵に頼まれたのですよ」

「まあっ。そうだったのですね……」


 私はお父様とレンゼル様に心の中で感謝をする。後ほど直接お礼も考えながら。

 何か、お菓子でも作ってお渡しするべきかしらと。

 誰かの歯軋りでアッと状況を思いだすまで。


「おい、なぜ邪魔をするんだ!」

「嫌がってるからですよ」

「嫌がってるんじゃない! 僕の気を引こうとしているんだ! なあ、そうだろうアリーナ?」


 もちろん私は全力で首が千切れるほど横を横に振る。

 なのに、ちょっとだけ顔を見せてくる殿下はなぜか笑みを浮かべて何度も頷いてきたが。


「うんうん、わかってるからな。という事だからどけ!」

「いいえ、どきませんよ。おい、王太子殿下を連れてけ」


 そして、すぐ近くに待機していた騎士に連れてかれも。よくわからないことを喚きながら……と、私は溜め息を吐く。


「しばらくは学院は控えた方が良いですね」


 そう言ってくるアルト様に同意しながら。

 きっと、また現れるだろうから。

 こちらの言葉を理解せずに……と、私はアルト様に言われるままに早速、帰宅準備をする。

 アルト様のご厚意でちょっとした外国のお客様対応並みの護衛で……と、私は屋敷につくなり無理を言ってアルト様や騎士の皆様に紅茶とお菓子をお出しする。

 もちろん、私個人として足止めしているわけでなく父がきっとお礼を言いたいだろうから。

 そう思いながらもなんだかんだ皆様と談笑してしまっていると父が慌てた様子で帰ってくる。


「アリーナ! 大丈夫だったか?」

「はい、ハミントン伯爵令息のおかげで……」

「そうか。すまなかったな。しかし、なぜ貴公が学院に?」


 私はその言葉に思わずアルト様を見る。


「個人的に用があったのですよ。そうしたら、あんな事がありましてね」


 その言葉で首を傾げそうにも。

 まあ、アルト様の優しく微笑まれる姿に黙ってしまったが。


「そうか、とにかく助かった」


 それに、会話の邪魔するべきではなかったので。そう思っていると父はアルト様や騎士達に頭を下げるなりこちらに来て頭を撫でてくる。


「報告は聞いている。怖かっただろう?」


 そう尋ねてきながら……と、私は首を横に振る。


「いえ……」


 ただし、すぐにあの時の事を思いだし身震いしてしまったが。そっと、父の裾を掴みながら。

 まあ、だからなのか「くっ、あの馬鹿はいったい……何を考えているんだ……。王太子教育はやり直してるのだろう? 更に悪くなっているじゃないか!」そう父は怒りだしてしまったが。


「王太子教育をやっているのかも怪しいですね」


 アルト様の言葉で冷静になるまで……と、父は腕を組む。


「だが、王妃が責任を持つと言っていただろう?」


 「うーーん、そこが信用できなくて……」と、アルト様はしばらく考えこむような仕草をした後、何かを決心するような顔を向けてくる。


「アーガイル公爵令嬢、あなたは王太子殿下に思いは残っていますか?」


 しかも、そんな質問を……と、私は即座に否定する。


「いいえ。友情のようなもので繋がっているとは考えていましたけれど……あの件でそれも切れましたので。バッサリと」


 するとアルト様はほっとした表情を浮かべる。


「わかりました。では、私に良い案があります。ただし、少し危険な賭けですが……」


 更にはある計画も続けて口にされて。場合によっては我が公爵家にアルト様のハミントン伯爵家も危険に晒す内容を。

 もちろん私は即座に反対したが。


「駄目です。私が大人しく領地に籠っていればいつかは解決する話です。ですからそのお考えはおやめ下さい」

「しかし、何か手を打たないとあなたに執着している王太子殿下が何をするかわかりませんよ」

「ああ、それに王妃も怪しいからな」

「えっ、王妃様もですか?」


 私が驚くと父が頷いてくる。


「考えてもみろ。王太子教育を任されているのはあの王妃だぞ。馬鹿を甘やかすな。だから、ハミントン伯爵令息もそれを見越しての案なのだろう?」

「はい。そして、これが上手くいけば両方を黙らせる事ができる可能性も。いや、絶対、成功させますけれどね」


 そう言ってアルト様は優しく微笑んで来たので私はもう何も言えなくなってしまう。更に父の言葉でなおさら。


「それに王家は少し痛い思いをした方が良い。これは皆、少なからず前々から思っていることだからな。だから何があっても皆が協力してくれるから安心しなさい」

「……お父様、わかりました」

「うむ、じゃあ、早速動くか」

「はい」


 そして、父とアルト様は勢いよく立ち上がる。 

 まるで狩りに一緒に出かけるような雰囲気で。もちろん罠にかけるのは今回、獣ではないが。


 いや、やっぱり獣だったかしら。殿下はもう……


 そんなことを最近は思いながら領地で静かに過ごしていると、ある日、父が笑顔でやってくる。狩は成功したとばかりの表情で。


 「あの馬鹿との繋がりを完全に絶つぞ」


 しかも、そう言ってきながら。


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