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異世界コミュ障戦記~スマホでググって大賢者~  作者: あけちともあき
第六章 南方国家ガルム帝国編
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第五十五話 危険な温泉洞窟

 そう言えば、昨日からジュナと平気で会話できている俺達なんだが、ジュナの肌色はニナに近い。

 つまり、この国の人間としては色素が薄いのだ。

 彼女はガルム帝国人と、ディアスポラ人のハーフなんだそうだ。なので、バイリンガルってことだな。

 彼女に諸々の通訳を頼んでもいいのだが、俺が人見知りするので無理。

 ちなみに、年齢はラシムより三つ年上の姉さん女房だな。俺より八つも年下だ!

 この国では力があるものが異性を手に入れることが合法なので、こうしていきなりラシムが嫁さんをゲットするのもありっちゃーありなのだ。

 金で買ったしな。

 金も力の一つとみなされるんだと。

 解説終わり。


 という事で俺達は、今、そのジュナの旦那さんが一人で探索に入り、そして命を落とした、大変危険な温泉洞窟に来ています!

 魔力検知で魔力がびんびん感じますな。

 あー、これはいる。いますわー。


「あの、この人数で行くんですか?」


 セレーネの疑問は最もである。

 現在俺達は、俺、アイナ、クリス、セレーネ、ニナ、ラシム、ジュナ、そしてマリー、おまけでゴーラムの合計八人+左手の構成なのだ。

 幾らなんでも多いだろう。


「この人数で行くのよ」


 あっさり言い切った。

 

「この国で、なれない人間が単独行動は危険よ? お年寄りならともかく、まだ若いあなた達は必ず、襲ってきた誰かのものになってしまうわね」


 ガルム帝国怖い!

 ちなみに、あまり度が過ぎると国からおしおきされてしまうそうなので、そういった奪い合いは、きちんとした宣言の元に行われる事が多いんだと。

 どちらにせよ現代日本から来た俺の感覚からすると野蛮ですわ。ただまあ、フェアではあるのかなと思う。少なくともコミュ能力に支配された日本よりは、俺はマシかなーと。

 コミュ無双ではなく、腕力によってそれをひっくり返す事ができるわけなので。

 ちなみに俺は、腕力もコミュ力も無い!


「恐ろしい国です!! セブン様はひ弱なので、むしろ私達が守るくらいで無いと……」

「落ち着くのですアイナ。俺がそもそも外出しなければよいのです」

「名案ですセブン様!」


 いえーい、とハイタッチする俺達。

 マリーはニコニコして俺達を見ていた。


「ほんと、お似合いの夫婦よね……」


 かくして、温泉洞窟探検がスタートした。



 起動するアプリは、警報アプリ。

 地震や津波やらが起きると、それを感知した省庁からの電波を受けて警報を発するアプリだ。

 多分、今は俺のスマホそのものが、特定の現象を感知して警報を発する。

 これを、この間アップデートされたメニュー、”忙しい人向け”に設定。

 間欠泉やらがあるらしいではないか。

 そんなもの、ゆったり警報が鳴っていては間に合わない。

 この忙しい人向けは、警報がダイジェストで鳴るようになる。

 欠点は意味が分からなくなる事らしいが、何、この洞窟の危機は間欠泉だけだ。大丈夫だ、問題ない。


 一歩進んだ瞬間、ぶいっ!とブザーが鳴った。


『危険来ます』


 何が来るのよ!? と思ったが、とりあえず慌てて俺は先行しようとするマリーのを後ろからキャッチして引っ張った。

 すると、彼女が一瞬前までいたところに、噴霧上の間欠泉が吹き出す。


「あらー、危なかったわね……。よく分かったわね、セブン殿」

「あ、ま、まあその、これが俺の、力なので、柔らかいです」

「あら」


 マリーの声が笑みを含んだ。

 彼女をキャッチした……つまり後ろから抱きついたわけで、俺の手が彼女の柔らかくも豊かな胸をわしづかみにしているではないか。

 役得である!!

 いや、正直済まんかった。

 慌てて俺は距離を離す。

 マリーは最前列だったので、俺がやらかしたセクハラにはマリー以外気付いていないようだ。


「いいのに。でも、確かに大したものね。この間欠泉では、並みの兵士は気付けずにやられてしまうでしょうね」


 マリーはいわゆる、喰らって覚えるタイプなのだそうだ。

 治癒の魔術を含めた常軌を逸した回復能力を持つということで、ダメージを食らってみて、罠や攻撃のパターンを覚えているスタイルらしい。

 そのため、彼女は外見からは想像もできないほど、耐久力が高いのだとか。

 そして、彼女が身につけている装備はいかにも軽装だった。

 柔らかな革の鎧だけであり、それも守っているのは、胸の一部と腹部だけである。


「私の前の夫も、この洞窟に入り込んですぐ、間欠泉にやられて死んだと聞きました。この辺りのどこかに埋められているということですが、見るも無残な姿だったそうです」


 淡々と語るジュナ。

 前のご主人も、力ずくで彼女を奪ったという事だったので、あまり思い入れが無いんだろうか。


「旦那、なんかここ、人が入った事に反応して霧が吹いた感じがしたぜ!」


 おおっ! 最初は盗賊っぽいポジションで加入したもののやっぱり素人で最近はゴーラムをいじりながら俺になでられるちびっ子ポジションのニナ君!!

 どうやら彼女はなにやら感じるものがあったようだ。


「任せていいか?」

「おう! あたいがやったるぜ!」


 ニナがゴーラムを抱っこして前に立った。

 注意深く周囲を見て、足元を見ている。

 そっとゴーラムを床に置くと、ゴーラム(左腕)は、手のひらで地面に立ち上がり、見上げるような仕草でニナを伺った。いちいち人間的な左腕である。


「よし、ゴーラム、ちょっと進んでみてよ」

『ま”』


 頷いた!! 左手なのに頷いたよ! って言うかお前、俺のアプリが無くてもニナと完全に意思疎通してるじゃねえか。


 ゴーラムはてくてくと、人差し指と中指で歩いていくと、間欠泉が噴出した辺りに到着した。

 何も飛び出してこない。


「ゴーラム、右左に動いてみて」

『ま”』


 ゴーラムがてくてくと、右に左に、忙しそうに動き回る。

 何も起きない。

 ニナは、ゴーラムよりも上の高さを注視しているようだ。


「ここ」


 ニナが指差したのは、まだ湯気がけぶる空間の一点。

 洞窟の壁から壁へ、湯気を貫く細い線がある。


「ここに、薄い光の糸が通ってる。これに当たると、ぶしゅーっとくるんだよ」


 ニナは俺達に下がるように言い、自らも一歩下がった。そして、


「ゴーラム、ジャンプして!」

『ま”』


 ゴーラムがぴょいんと跳ねた。

 その上端……肘くらいが細い線を横切る……。その瞬間、先ほどと同じような間欠泉が四方八方から噴出した。


『ま”――』


 なんか熱いお湯を浴びて、ゴーラムが声をあげている。

 すぐにほこほこした感じで戻ってきた。


「これでバッチリだよ!」

「ニナ天才」


 俺はちょっと感動した。凄く盗賊っぽいじゃないか。やっぱりニナは盗賊だったのかもしれない。

 感謝も込めて、頭をぐりぐり撫でて、親愛を込めてハグである。今の俺はこんな事も許されてしまうのだ、ははははは。


「うわはー、旦那、今日は愛情表現がすごい!」

「ニナさん羨ましい!!」

「ねたましいですぅ!」

「興味深いですね!!」


 嫁達が三者三様の感想を漏らす。クリスの感想がやばい。

 かくして、勇者マリーに認められたニナは、晴れて我がパーティの先頭に立った。

 正しくは、ゴーラムを動かしながら、じりじりと奥に進んでいくのだ。

 驚くべき事に、マリーはしれっと灯り(ライティング)の魔術を使用できた。


「普通の魔術師くらいの魔術なら全部使えるわよ」


 さすがは勇者である。

 俺は照明アプリを起動する必要も無く、警報だけに集中する。

 とにかく、ブザーが一瞬なので、鳴った瞬間にニナに抱きついて下がらせるのが俺の仕事なのだ。


「ここは右上と左上から交差してて」


 ばしゅーっと間欠泉。俺達は交差する光の隙間を抜けた。


「こっちは床に光が通ってる」


 またぐ。


「わっ、ここ意地悪いぜ! この、あたいが通ったここだけ通って!」


 右と左と上と下に光の線が通っていた。真ん中の一メートル四方のみが安全圏と言う性格の悪さ。

 ラシムがひいひい言いながら何とか通過。

 あいつが一番でかいから、あいつが大丈夫なら問題ないだろう。


 かくして俺達は一階層を通過した。

 そう、下りがあったのだ。


「なんか、人工物めいてるよな。洞窟なのに……」

「セブン殿、私達が追っている悪魔は何者だったかしら?」

「あ、悪魔、ブロケル、は」


 ここでアイナ登場。


「悪魔ブロケルは水と鉱泉、そして知識を司る悪魔です。つまりこの洞窟に仕掛けられた、間欠泉を呼ぶ罠はブロケルが侵入者を阻もうとしていると考えられる、とセブン様は言っています!」

「あなた凄いのね……」


 マリーが目を丸くした。

 アイナ本来の能力は俺の言語の通訳と意訳だからな。

 今ではかなり複雑なニュアンスの言葉や、アイナが本来知らない言葉でも伝わるぞ。

 もうテレパシーだなこれ。


「ですけれど、悪魔は本来、人と交わる事ができる場所に存在するもの。こんな洞窟の奥にいるなんて聞いた事がないんですけれど……」

「ならば、この奥が帝国のどこかに通じていると考えるのが自然でしょうね」


 セレーネの疑問に、マリーはすぐに答えを返した。

 俺達は、すべる足元に注意して、ゆっくりとスロープを下っていく。

 周囲の壁面を明々と照らすマリーの灯りだったが、スロープの終端に至った途端、それが弱々しい輝きにしか思えなくなった。

 つまり、壁が消失したのだ。


 そこは、広大な空間。

 一面に湯気が吹き上がり、煮立つと表現するのが正しいほどの温泉が、中洲となった地面を囲んでいる。


 湯気でかき曇っていた視界が、突如吹いた生暖かい突風で晴れた。

 向こうにも光源が存在する。

 そこにいるのは、青ざめた肌をした一人の男。

 背中には、一対の青い翼を生やしている。

 悪魔ブロケルの登場だ。

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