第四十一話 賢者、賢者になって聖王国へ帰る
激戦だった。
最初の戦いで、俺達は先日俺達の最大の障害だった状況にぶち当たる。
だが、体調万全となったアイナ、そして二度の実戦を経た俺、絶倫の湯の与えてくれるパワー、そして最後に、四十八手アプリ……!
全ての力が合わさった時、障害など無きに等しかった。
俺達の力は壁を乗り越え、ついに一つに……!
というところでニナが起きてきて、こっちを見て悲鳴を上げたので、朝飯にする事にした。
今日でここの食事ともお別れと思うと、名残惜しい。
以前の世界に比べると素朴だが、それでも素材を生かした美味さがあったように思う。
なるほど、選ばれた人間しか利用できぬ、至上の温泉郷である。
俺達五人は、この五日間で完全に癒されたと言えよう。
「再戦しましょうか……!」
「望むところだ!」
甚大なダメージを受けたはずだが、未だ意気軒昂なアイナ。これが若さと言うものか……!
セレーネともクリスとも違う。
まあかなり歩きにくそうだが。
そして、目を覆うニナと、がぶり寄りの如く見つめるセレーネ、状況が変わるたびに小さく悲鳴をあげるクリスを前にして、激戦。
何で見られてるんだ!?
冷静になればそう言うことなんだが、まあノリである。
しかし恐ろしいな四十八手アプリ。
今の俺達のテンションですら、この体位は早過ぎると思うようなものもたくさんある。
まだまだ高みがあると言う事なのか……。
結局、その後たっぷり二時間戦って一息ついたら、新たな挑戦者クリスとセレーネに襲われ、決着は昼過ぎであった。
疲労にかすむ目でスマホを確認すると、十五時である。
朝食の時間を抜いて、七時間! 七時間である。
絶倫の湯が無ければ死んでいた。
今も腰が割りと死にかけている。
勝負は敗北であった。
新チャンピオン誕生である。
俺は三人娘に運ばれて部屋に到着すると、アイナに膝枕されながらご飯を食べさせてもらう。
極楽極楽。腰は地獄だけど。
夕方近くにラシムが迎えにやってきて、俺の様子を見て呆れていた。
「何故保養地に来て、あんたはぼろぼろになってるんだ?」
「ま、まあその」
「セブン様は男として立派に戦われたのです! その勇姿には涙を禁じえませんよ! そう言うことで悔しいですけれど聖王女殿下の目論見どおりに事が運んでしまったというわけです!!」
「……?」
事情が良く分からないラシムは首をかしげているが、この場にいる俺達にとっては悶絶ものである。
ある意味赤裸々に語った形だ。
馬車に運ばれて、暗くなっていく中を聖王国へ帰る。
馬車には結界の魔術が施されているのだそうだ。魔物の類なら近寄る事ができず、名のある悪魔でもなければ結界を容易には破れない。
そして襲撃者が名のある悪魔なら何をしようがおしまいなので問題ない。
揺れは腰に響く。
俺は呻いた。
アイナも響くのが辛いようで、呻いていた。
「きっとぉ、この後、聖王女様から直々に査問が行われますぅ……!! 私達は何も隠し立て出来なくなりますよお……!」
「聖王女様の精神制御魔術……! 悪魔すらも口を割るという恐ろしい査問方法ですね」
クリスとセレーネが恐ろしい事を……!
実際、未だにアイナとクリスは聖王女様のお付という立場だし、セレーネは王宮勤めの魔術師なのだ。
君主の言う事に逆らう事などできまい。
温泉郷での恥ずかしい、あんな事やこんな事が根掘り葉掘り聞かれてしまうのだ。
俺達が呻いていると、ニナがなにやら考え込んでいた。
「なあ旦那」
「どうしたんだい、ニナ」
「今回さ……みんなその、えっちなことをした訳じゃんか」
「うっ」
「うっ」
「うっ」
「うっ」
ニナの言葉で、俺と三人娘が言葉に詰まる。
「……あたいはしなくて良かったの?」
「ニナはまだ早い」
俺はちびっ子の肩を優しく叩いた。
「そ、そうかあ……」
首をかしげながら、ゴーラムをぎゅっと抱きしめるニナ。
……良かった。
あれ以上人が増えたら、体が持たない。
ハーレムはダメだな、危険だ。
かと言っていまいる面子には情が沸いてしまっている。
俺がどもったり詰まったりせずに会話できる女の子が、四人もいるのだ。
手放したくはない。
俺は我侭になってしまったようだ。
ちなみに、馬車操作をするラシムの手綱捌きには、一切の遠慮や手加減など無かった。
馬車は素晴らしい快速で街道を駆け抜け、お陰でサスペンションでも吸収しきれない衝撃が、俺とアイナを始終苦しめた。
「な、なんで私だけこんなにきついのお……!?」
「個人差があると言いますが、アイナさんは特に男性を迎え入れる際に痛みが強いタイプだったようですね。恐らく初夜で失敗されたのもそれが原因かと」
「初夜!」
なんと心躍る響きだろう。
その言葉にはロマンがあるね。失敗したけど。
俺が喜んだので、セレーネがなにやらメモし始めた。きっと、俺が初夜とかそういう響きが大好きだって覚えられた。
そして懐かしき聖王国への帰還である。
なんだかあちこちに出張ってばかりで、あまり聖王国にいた記憶が無い。
しかも、
「明後日にはラスベリアに発ってもらいます」
「ひええええ」
俺達五人は声を合わせて悲鳴をあげた。
間に一日しか挟まないのだ。
しかもその一日と言うのは、アイナとクリスとセレーネが王宮に召集され、なんと聖王女様が一日仕事を休んで、ひたすらこの三人に温泉郷での顛末をねっとりと語り聞かせるためだと言う。
その日は一日、ニナと遊んで過ごした俺だったが、戻ってきた三人娘のげっそり具合を見て、俺が呼ばれなくて良かったと心底思ったものである。
かくして、俺達の休暇は終わりを告げた。




