第14話
「任務にもう行くんですか?だって、まだ入学して1ヵ月経ってませんよ」
「そうです、学長!こいつはまだ基本も出来てません」
紺野先生も初耳だったのだろう。
焦っている。
「私も時機尚早だと思いますが……こちらにも事情があるんです。だから……」
そう言って黒瀬学長はにっこり微笑む。
「神白君をリーダーとしてメンバーに加えておきます。昨日まで別の任務に出てもらったため、連続の任務になり、申し訳ないと思いますがね。これなら紺野先生も安心でしょう」
いや、全然安心出来ない!
むしろ問題点が増えている気が……
「ああ、それならいいと思います」
紺野先生は納得してしまった。
先生はあたしと神白君の間に起こったことを知らないんだな。
「では、任務の説明を」
そう言うとプリントが渡された。
「今回の任務はランクEです。3人中2人が初任務ということで、難易度は最低のものを用意しました。ランクについて知らないですよね」
リンとあたしは頷いた。
「ランクとは任務の難易度を表すものです。S、A、B、C、D、Eの五段階があり、SとAにはプラスとマイナスが付くこともあるので、全部で10段階評価になっています。今回は最低ランクなので、そんなに緊張しないでください。油断は禁物ですけど。分かりましたか?」
「はい」
「任務の内容は、この場にいる人と依頼主しか知りません。部屋を出たら他言無用です。情報漏えいは危険しか呼び寄せませんからね。このプリントも話が終わり次第破棄します。万が一、故意に情報を漏らした場合、厳重に処罰します」
黒瀬学長の真剣なまなざしに、ちょっと怯む。
「それでは、早速任務の説明をします。」
「今回は、ある会社の裏帳簿の所在を探す任務になります」
「裏帳簿って何ですか?」
「はぁ……呆れた」
神白君は馬鹿にしたような溜息をついた。
なんかムカつく。
「裏帳簿とは、脱税のために書かれた帳簿のことですよ。今回の依頼主は国税庁です。この会社が脱税しているということまでは突き止めたのですが……、肝心の帳簿を見つけることが出来ていないそうです。任務では裏帳簿の在り処を突き止め、写真かデータのコピーを持ち帰ってきてください。本物の帳簿ないしパソコンのデータは持ち出さないでください。ガサ入れ当日に証拠として取り押さえたいそうです。写真と情報を私に伝えたら任務終了です。後は私が国税庁の方へ連絡します。概要としてはこんな感じです。何か質問は?」
「セキュリティーはどうなっていますか?」
神白君が聞いた。
「そこの会社の社長は機械に弱いようなので、高度なセキュリティーは無いと考えても大丈夫でしょう。先ほどパソコンのデータと言いましたが、そちらの可能性も低いと思います」
「あたしも質問いいですか?」
「ええ、どうぞ」
さっきから気になっていた疑問を口に出す。
「この任務って、国からの依頼ですよね?」
「そうです」
「じゃあ、もし警察に捕まったらなんとかしてもらえるんですか?」
「いえ、普通に泥棒として捕まって、刑務所行きですよ。警察は任務について知りませんし。でも安心してください。任務中、あなたたちの学籍は抹消するので万が一逮捕されても学校に迷惑はかかりませんから」
要するに、助けは来ないってことか……。
「逮捕ならまだマシだぞ」
紺野先生は笑ってこう言った。
「ランクCからは、ヤクザの所に潜入って任務もある。失敗して捕まったら、山奥に埋められるか海に沈むぞ」
ぞぉぉぉ……
背筋が冷える。
「質問はこれで終わりのようですね。では最後に、初任務の2人にはウエストバッグを差し上げます」
真っ黒な鞄が手渡された。
「この中には便利な道具が詰まっています。これからの任務に役立てて下さい。任務から帰ってきたら、学校のロッカーで保管してくださいね。その中の端末に会社の見取り図を送っておきました。確認をお願いします。そうそう、服装の話がまだでしたね。任務は夜中の予定です。高校生だと分かる恰好は避け、出来れば遊んでいる大学生の様な服装でお願いします。こちらに偽の学生証を用意してあります。紺野先生、アドバイスを」
紺野先生はあたしたち3人を眺めると、
「赤城と鈴宮は化粧しろ。赤城は清楚系で、目元は盛るな。盛るとかえって高校生っぽくなる。逆に鈴宮、目元を盛れ。髪も明るいブラウンにしろ。小動物系の大学生をイメージな。で、神白は……お前、少しなら化けれるか?」
「はい」
神白君が左手を顔の前でさっと振ると、少しだけ顔が大人っぽくなった。
そんなに変化は無いはずなのに……雰囲気はまるで別人のよう。
お兄さんみたい。
それに、不覚にもカッコいいと思ってしまった。
「お前の場合タッパがあるから、顔をちょっと変えるだけですぐに大学生に見える。あとは服装に気を付けろ」
「はい」
もう一度顔の前で手を振ると、いつもの神白君に戻った。
「それでは、説明を終わります。出発は明日の業後です。では、よろしくお願いします」




