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25


一夜をジェスターのキャンプで過ごし、ようやく体力の戻ってきたアシェスはジェスターの手伝いをすることにした。

恩返しと呼べるかはわからないが、自分だけでなく大切な妹まで救ってくれた人間に、さっさと別れを告げて去るほどやさぐれてはいない。

遺跡や遺産など正直アシェスにとってみれば、もはや見たくもないほどの嫌悪感を抱いていたが、不思議と今はそんな気分さえ忘れるほどだった。

夢や願望を抱きながら生きる一人の少年の姿は、あの頃の両親の背中を思い出させたから。

ジェスターの気になるという遺跡を目指し、アシェスはエナを連れ歩き出した。


静寂の中、かすかに聞こえる水の流れる音を背にしながら、淡い緑の光が眼下に映る。

聞いていた通り、その内部は神秘的というよりも神々しく、不思議な気分にさせながら妙に落ち着く。

そこは不気味な静寂ではなく、聖地のような神聖な感じであった。

風の音も無い空洞の中で、ジェスターが偶像を探る音だけが辺りを支配している。

アシェスはこの時生まれて初めて、古代人の遺跡というものに触れた。

滅びた古代の人間たちが残した証。

ジェスターのように夢を募らせるものもいれば、アシェスのように畏怖の存在でもある。

昨晩までの生と死の狭間を潜り抜けたアシェスにとって、今のこの場にいる自分の立場を夢心地に感じていた。


ジェスターは偶像を食い入るように見つめ、手探りでその感触を確かめるように触れている。

何か文字が描かれていないか調べているのだが、見つけたところで果たして読めるかどうかは定かではない。

が、そんなことはお構いなしに、ジェスターは一つ一つ念入りに偶像を調べ上げている。

夢中になったジェスターはもはや声をかけたところで気付かないだろう。

まさに無我夢中という状態である。

声をかけることなど出来そうにないと諦めたのか、アシェスはエナを連れ辺りを見渡してみた。

ふと、エナが一つの偶像の裏付近で何かに気付く。

像の下部の崩れた石の間から、鈍く光るようなものが埋め込まれるようにしてそれはあった。

小石のようなもの。

部屋全体が緑の石で包まれる中、それは金色のような色彩を放っていた。

明らかに異質な存在。

壁からの光で照明はあるが、部屋全体を照らしているはその光は、地面まで明るく照らしきれるような光量ではない。

影になるような部位も重なり、それ故に見落とされていたのだろうか。

広い上げた小石は握り拳ほどのものだったが、とても軽く感じた。

いや、感じたというよりも感じないほど軽い。

小石とはいえそれなりに重みを感じるはずなのだが、まるで鳥の羽を手のひらに乗せているような軽さ。

力を込めずとも、軽く握れば砕けてしまいそうな軽石。

しかし実際に握ってみてアシェスは驚きを隠せなかった。

硬いのだ。

不思議に思い、試しにと床に置き体重をかけ踏み付けてみるがびくともしない。

宝石の類なのだろうか。それにしてもこの軽さでこの強度は、不自然で仕方がなかったのだ。

ジェスターにその欠片を見ると、目を丸くし驚きを隠しきれないでいた。

とある書物で書き記されていたものと合致するらしいのだ。

話によればそれは『ゼピス創石』と呼ばれる錬金の石というものらしい。

ヴェルナンの民が造り上げたという、この世界で絶対なる強度を持つ石。

高熱でも生半可な温度では決して溶けず、強大な力を与えても壊れることがない。

今の世では加工することさえままならないという。

魔鋼技師と呼ばれる高位の魔術士だけが、姿形を変えることが出来たというのだ。

この石はかなりの魔力の持ち主でなければ別の物へ形を変えることが出来ない代物なのだが、その貴重さゆえお目にかかれることなどほとんどない。

その欠片がこのような場所に落ちているとすると、台座に置かれていたのがゼピス鉱石だというのは間違いない。

王都の人間はこれを持ち去ったというのか。

用途はわからない。けれど公表しなかったことを思えば、何か重要な代物に違いなかった。

ジェスターは試しに熱系の魔法で、ゼピス創石に力を注いでみた。

しかしやはりびくともしない。

何百度という高温を与えたというのに関わらず、その熱を吸収すらしていなかったのだ。

直後に触れた石は冷たいままだった。

この石を思うように作り替えられるのなら、きっと凄まじい武器や防具などを生み出すことが可能だろう。

温度による劣化をものともせず、なおかつ壊れることがない。それでいて軽い。

夢のような鉱石だ。

危険な遺産とは違い、これは宝そのものに過ぎない。

アシェスはゼピス創石を巾着袋に仕舞いこんだ。

今更この発見を王都に報告などはする気はない。危険性のあるものではないし、すでに枯れた遺跡と認定された場所での発見であるため、とやかく言われることもないだろう。

ジェスターの眼力で結果的に思わぬお宝を手に出来たのだ。

実際に用途できるかどうかは定かではないが、彼にとっては十分すぎる発見だった。

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