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関所を抜け、ローウェンスを後にする。
その先は木々生い茂る森林地帯。時折吹いた風は涼しさを含んでいた。
鬱蒼とする茂みから、がさりと物音がした。
「?」
闇にうっすらと浮かび上がる人物像。なんとなく予測があったのか、アシェスはその姿が完全に見える前に口を開いた。
「ネクロ」
「さすがですな、アシェスさん」
潜んでいたのではなく、待っていたのだろう。
いつものような唐突さはなく、わざと見つかるように物音を立てての登場。
アシェスはたまらず吹き出していた。
「まったく…どいつもこいつもお節介な奴ばかりだ」
「ええ、まだまだ突き合わさせてもらいますよ。終演だと思われたあなたの旅は、まだ終わらないのでしょう?」
それはどこか無邪気さを感じさせる物言いだった。
「そうだが、脈絡のない旅だ」
「ええ、けれどそれは今までと変わりはないでしょう。どうやら…私は嬉しいのでしょうね、またあなたのお役に立てると思うと」
「お前ってさ、実は俺に違うことを期待してねぇか?」
「ははは、どうでしょう。しかし、あなたの近くは退屈しない。これだけは言えますな」
包み隠さず赤裸々に。
呆れたアシェスは、やれやれと首を小さく振って嘆息していた。
「まあ…また厄介事に巻き込まれるようなことがあったら、世話になる」
「ええ、そのときは是非ご指名、お願いしますよ」
了承を得てネクロは再び茂みの奥の闇へと消えた。
(まったくネクロの奴も何を期待してやがんだか…。ま、本音は何もねぇのが一番なんだがな)
知識の足りない自分には影ながら心強い男などと考えながら、アシェスは吹き抜ける風に身を任せ立ち尽くしていた。
「これから涼しくなるな…」
舞い散る木の葉を見上げ、アシェスは清々しさを肌に感じていた。
~完~




