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そんなことを洗い浚い話したところで、批判が波紋のように広がることは覚悟していた。

だが予想だにして、街人の反応は好感の声の方が多かったのだという。

何故なら魔獣騒ぎで傷ついた住民を癒す際、スフィアはまだ完全に戻らぬ体力を押して、街に溢れる怪我人を一人一人治療して回ったというのだ。

代行者という絶対たる力を持った姫、不遇の境遇を乗り越え、ようやくその姿を現わせるようになった。

だがそれは同情ではない、そのときに見た彼女の必死な…直向きな姿が、民衆の心に何かしら届いたのではなかろうか。

レイドはそう解釈したらしい。

国の主となるべき可能性を秘めた少女が、一般人相手に別け隔てなく手を差し伸べた。

貴族と呼ばれる人間から、裏路地に住む恵まれぬ人間まですべてに。

その差し出された手をまた、住民たちは握り返したのだ。

それはスフィアにとっても喜ばしいことだったらしい。

だが、すべての人間から認められた訳ではない。支持したのはほんの一部だ。

認められるまでの道のりはまだまだ先のことだろう。

しかし、孤独だった幼少からの日々。彼女にはその出来事がきっかけの一部となったのだろう。

誰かに必要とされる喜び。

それは生きている証に違いないのだから。

だから彼女は選択した。


「お前が選んだのは他者を傷つける力でもない。その真逆を行く、人を救う力だ。それは良い選択だったと俺は思うぜ」


「あ…ありがとう。アシェスにそう言ってもらえると、すごく嬉しいし、頑張れる気になる」


「代行者としての人生、この先何があるかなんてのは誰にもわからねぇ。けどな、これからはお前が国を護るんだ。…代行者というのは足枷なんかじゃねぇ、むしろ天命だったのかもな」


冗談ぽく言ったはずなのだが、スフィアは真剣に頷いていた。


「その決意…踏み外すなよ」


「うん、自分で決めたことだもの。最後まで全うするつもり」


力強く首を縦に振った少女に、アシェスは一つ軽い息を吐いた。


「さてと」


アシェスは鞘に納まるシュヴァゼルトを手に取り、陽避け代わりにと空へと掲げた。

空に浮かぶ太陽はだいぶ傾いていた。

急ぐ必要はないのだが、腰を上げた手前、今更のんびりしているつもりもなかった。


「その剣…アシェスの大切なものだったんだよね?」


「あ?ああ、お前が直してくれたこの剣…本当に感謝してるぜ。本当に助かった」


「あのときは無我夢中だったから…。人間を治癒する以外の事柄なんてできるとは思っていなかったけど、その様子だと上手く直せてたみたいでよかった」


鞘を眺めるだけでも手入れが行き届いているのが伺えた。

不精と言われているアシェスがそこまで大切にしていた剣。

スフィアはそんなものを直せたという事実が嬉しくて、自然に笑みを繕っていた。


「それとな…お前が救ってくれたこの身体。もう一度言っておく。ありがとな」

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