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「わたし…必死だったんだからね…!アシェスが死んじゃったら…そんなの、絶対…嫌だから…!」


言葉どおり必死だったのだろう。

目の前に居るスフィアという少女は、代行者でありながら『ただ一人の少女』に過ぎない。

ただそれだけだ。

きっと、体力が尽きかけたその小さな身体で、必死に治癒を試みたのだろう。気力だけを振り絞って。

上手くいく保障もない、だがやらなければ死ぬ。

目の前で人が脱け殻のような姿になるというのは、誰もが直視したくないことだろう。人が一番直面したくない場面だ。

絶望と不安が苛む中、それでもスフィアは治癒を完了させたのだ。


行き交う人の群れ。

何人すれ違ったのだろう。

そんなくだらないことを考えさせるほど、スフィアは泣き止むことはなかった。

十日以上も耐えてきたものが、一度に溢れてきたのだろう。その涙はとめどなかった。

ようやく泣き止む頃には、陽が傾きかけた頃だった。


「落ち着いたか?」


「……うん」


「そうか、悪かったなスフィア。お前が必死で拾ってくれた命。それを軽く見すぎてたみてぇだ、俺は」


「わかってくれれば…良いの」


「俺だって死にたかったわけじゃない。そんな簡単にくたばるなんて俺じゃねぇからな。それが例え…人殺しと呼ばれた罪滅ぼしの代償だったとしても…だ」


「違うよ…アシェスはこの国を救ってくれたの。だからそんな言い方は…嫌い。アシェスはローウェンスの救世主…だよ」


「はっ…俺には一番ピンと来ねぇ通り名だな、そりゃ」


アシェスは首筋に走るむず痒さを散らすように、首を何度も左右に振った。

スフィアを見れば、ようやく枯れた涙腺の元、眼球が真っ赤に充血していた。


「しかし…こんな顔みたら誰がこの国の姫だと思うんだろうな。酷いツラしてるぞ」


「…ッ!」


アシェスの仕返しを含んだ言葉に、スフィアは両手で目を覆うように隠し、声にならない悲鳴を上げた。

すぐさま文句を口にしようとする、その口を指で制する。


「お前、王位継ぐんだってな」


「あ…うん。知ってたんだ…」


「ああ、ジェスターから聞いた。決めたんだな、自分で」


「うん!私はこの国を継ぐ。まだ先のことはわからないけれど頑張ってみるつもり。国の皆が…私を認めてくれたの。わたしはそれに応えてみたい」


仮儀式の際、スフィアの姿を民衆の前に曝し、レイドは事の経緯を街人全員に語ったという。

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