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「お前…いつから居た」
「う~ん…ちょっと前から…かな」
意表をついたのが嬉しかったのか、スフィアは屈託ない笑顔を浮かべていた。
「ごめんね、盗み聞きするような真似しちゃって」
「聞かれて困るようなことも言ってねーしな、別にかまわねーよ」
相変わらずの素っ気無い態度。
アシェスという男はこういうところだけは曲げることがない。
「腕…大丈夫?」
「痛みはない。お前が治してくれたんだってな。あの状況下で無理しやがって」
「うわぁ~アシェスってばそう来る?他に言うことがあるでしょ?」
呆れ果てたのか、眉を潜めて怪訝な顔を覗かせる。
約十日ぶりの再会。あの事件以来、初めての再会だというのに、スフィアはとても元気な姿を映していた。
言動も口調もいつも以上に明るく、弱々しかった姿が霞んで見えるほど。
あの短期間で、目下の少女は見違えるような成長を遂げたのか。
「あ~何だ…まさかそんなことができるなんて、正直俺自身がまだ納得できてないんだ」
「もう、大変だったんだからね!」
「お前には感謝してる。助けてやるつもりが、逆に助けられる立場になってりゃ、立つ瀬がねぇよな」
自ら口にしておきながら、本当にそんな気分になったのか、アシェスは視線を一時スフィアから離すように彷徨わせた。
礼を口にするのが照れ臭いとでも言うのだろうか。
「だがな、本当によくやった…お前は」
視線をスフィアの元に戻すと、その顔には陰りが見えていた。
「アシェスは…結局約束を破るつもりだった…。本当に…死んじゃうかと…思ったん…だから…」
泣いていた。
やはりそんな簡単には人間、簡単に強くなどなれはしないのだ。
アシェスは自分の愚かさを再認識させられた。
スフィアという少女は自分を押し殺してまでも、取り繕って他人を気遣う人間だということを。
アシェスは勝手な解釈で茶化してしまった罪悪感からか、スフィアの目線まで腰を落とし、頭を軽く撫でた。
「悪かった…ちょいと無神経過ぎたな。その…なんだ、ありがとな」
「アシェスの…嘘つき…!」
「う…」
涙声でそんな言葉を浴びせられれば、いくらアシェスといえどたじろぐしかなかった。




