13
色とりどりの花火が、快晴の空に打ち上がる。
それが収穫祭の開始を告げる祝砲。
ローウェンスの民が待ち望んでいた一日が始まったのだ。
街は狂喜じみた歓声に包まれ、人々は杯を片手に乾杯をする。
この日ばかりは無礼講で、魔導師さえも柄になく騒ぐほどだ。
ただ度が過ぎることを踏まえた上で、王宮から派遣された騎士たちが至る所に配置されている。
毎年酔った勢いでの喧嘩、人込みに紛れた窃盗など、貧富の差が激しいこともあり、影では騎士たちの気苦労も絶えない一日でもあった。
「さて…どうしたもんか」
王宮の自室でアシェスは腕組みをしつつ、ベッドの上であぐらをかいていた。
思わず洩らした言葉の原因はアシェスの視線の先にあった。
「……………」
目を輝かせながら、窓から見える活気づいた街並を見下ろす少女。
スフィアにとっては十年ぶりくらいになる収穫祭。
やはり浮かれてしまうのだろう。
窓枠を掴む手に力がこもっているのが伺える。
視線をあちこちに飛ばし、焦点が定まっていない様子だ。
酷なことだが、人込みに紛れて襲われる危険があるため、スフィアは王宮待機というのが当たり前の処置だった。
「ねぇねぇアシェス!すごいね!あんなに人が集まってるよ!声がここまで聞こえるもん」
「あ~…そーだな」
そんな喧しい場所に出向かわなくて良いというのは、アシェスにとっては喜ばしいことであったが、目の前に居る少女を見ていると不憫な気持ちになっていた。
「行きたいのか?」
「え?あ~…ううん」
泳いだ目で言われても説得力など微塵もない。
アシェスはかったるそうにベッドから立ち上がった。
「行ってみるか?」
目線は合わさず不機嫌そうな顔をしながらスフィアに呟く。
「えっ…?ダ…ダメだよ!お父さまにも言われてるし…」
スフィアは思わぬ台詞に取り乱したような言葉を漏らす。
「親父がどうこうじゃねぇ。俺が聞いてんのは、お前が行きたいか行きたくないかだ」
「い………たい…よ」
「聞こえねぇぞ」
耳をほじりながら、アシェスは棒読みな口調で言う。
それは試しているように素っ気ないが、うっすらと笑みを浮かべながら。
「私だってホントは行きたい!」
「ほれみろ、やっぱ行きてぇんじゃねぇか」
「アシェスが言わせたくせに…意地悪」
口を尖らせながらスフィアは外方を向いた。
(ここで手を拱いていても埒があかねぇしな…)
アシェスはベッドから跳ね上がるように床に飛び起きた。
「行くぞ」
「へ…?しゅ…収穫祭!?」
「焦んなよ。まずはその許可を取りにお前の親父んトコだ」
アシェスは首を鳴らしながら扉を開けた。
(リスクは覚悟のうえだ。だが、出てこねぇなら引きずりだしてやるさ)
「なんだと!」




