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色とりどりの花火が、快晴の空に打ち上がる。

それが収穫祭の開始を告げる祝砲。

ローウェンスの民が待ち望んでいた一日が始まったのだ。

街は狂喜じみた歓声に包まれ、人々は杯を片手に乾杯をする。

この日ばかりは無礼講で、魔導師さえも柄になく騒ぐほどだ。

ただ度が過ぎることを踏まえた上で、王宮から派遣された騎士たちが至る所に配置されている。

毎年酔った勢いでの喧嘩、人込みに紛れた窃盗など、貧富の差が激しいこともあり、影では騎士たちの気苦労も絶えない一日でもあった。


「さて…どうしたもんか」


王宮の自室でアシェスは腕組みをしつつ、ベッドの上であぐらをかいていた。

思わず洩らした言葉の原因はアシェスの視線の先にあった。


「……………」


目を輝かせながら、窓から見える活気づいた街並を見下ろす少女。

スフィアにとっては十年ぶりくらいになる収穫祭。

やはり浮かれてしまうのだろう。

窓枠を掴む手に力がこもっているのが伺える。

視線をあちこちに飛ばし、焦点が定まっていない様子だ。


酷なことだが、人込みに紛れて襲われる危険があるため、スフィアは王宮待機というのが当たり前の処置だった。


「ねぇねぇアシェス!すごいね!あんなに人が集まってるよ!声がここまで聞こえるもん」


「あ~…そーだな」


そんな喧しい場所に出向かわなくて良いというのは、アシェスにとっては喜ばしいことであったが、目の前に居る少女を見ていると不憫な気持ちになっていた。


「行きたいのか?」


「え?あ~…ううん」


泳いだ目で言われても説得力など微塵もない。

アシェスはかったるそうにベッドから立ち上がった。


「行ってみるか?」


目線は合わさず不機嫌そうな顔をしながらスフィアに呟く。


「えっ…?ダ…ダメだよ!お父さまにも言われてるし…」


スフィアは思わぬ台詞に取り乱したような言葉を漏らす。


「親父がどうこうじゃねぇ。俺が聞いてんのは、お前が行きたいか行きたくないかだ」


「い………たい…よ」


「聞こえねぇぞ」


耳をほじりながら、アシェスは棒読みな口調で言う。

それは試しているように素っ気ないが、うっすらと笑みを浮かべながら。


「私だってホントは行きたい!」


「ほれみろ、やっぱ行きてぇんじゃねぇか」


「アシェスが言わせたくせに…意地悪」


口を尖らせながらスフィアは外方を向いた。


(ここで手を拱いていても埒があかねぇしな…)


アシェスはベッドから跳ね上がるように床に飛び起きた。


「行くぞ」


「へ…?しゅ…収穫祭!?」


「焦んなよ。まずはその許可を取りにお前の親父んトコだ」


アシェスは首を鳴らしながら扉を開けた。


(リスクは覚悟のうえだ。だが、出てこねぇなら引きずりだしてやるさ)


「なんだと!」

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