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種馬ズ  作者: 雪だるま
おまけ編

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52 飼い主回

金曜十八時五十九分。


都内某所。


会社員、三浦菜々美、二十六歳。


スマホを握り締めていた。


震えていた。


本当に。


指が震えている。


理由。


あと一分。


種馬ズドームツアー当落発表。


現在の種馬ズ。


チケット。


異常。


本当に異常。


ドームですら当たらない。


しかも今回は。


・レイ主演ドラマ超ヒット後

・『勝ち馬が憎い』80万突破後

・全国ニュースで特集

・ライブ演出が神という噂


全部重なった。


つまり。


地獄。


SNSでは既に阿鼻叫喚が始まっていた。


『絶対無理』


『積んだ』


『徳が足りない』


『今年の運全部使う』


『当たったら寿命縮む』


宗教。


かなり宗教。


菜々美も今回、本気だった。


有給確保。


ホテル予約。


美容院予約。


うちわ制作。


全部済ませている。


つまり。


落ちたら終わる。


十九時。


通知。


【抽選結果のお知らせ】


「っ……」


息止まる。


タップ。


読み込み。


長い。


長すぎる。


「お願いお願いお願い……」


そして。


表示。


【ご当選】


静止。


脳。


停止。


数秒。


そして。


「ぎゃあああああああああ!!!!!!」


絶叫。


マンション。


響く。


隣人に壁ドンされるレベル。


だが止まらない。


「うそぉぉぉぉぉ!!!」


涙。


本当に涙。


「当たったぁぁぁぁ!!!」


飛び跳ねる。


スマホ抱きしめる。


床転がる。


意味不明。


しかし飼い主たちは大体こうなる。


何故なら。


本当に当たらないから。


菜々美は震える指でSNSを開いた。


タイムライン。


地獄。


『落選』


『全滅』


『死』


『レイ許さない』


『飼い主失格』


『転売ヤー滅びろ』


阿鼻叫喚。


その中で。


菜々美。


恐る恐る打つ。


『……当たった』


数秒後。


通知爆撃。


『おめでとう!!』


『生きて帰って!!』


『徳積みすぎ』


『羨ましい』


『レイ見たらレポして』


『呼吸して』


もう戦場。


菜々美はスマホ見ながら笑ってしまった。


だが。


本当に嬉しかった。


何故なら。


種馬ズのライブは特別だ。


ただのアイドルライブじゃない。


笑う。


泣く。


叫ぶ。


情緒壊される。


しかも。


最近のレイ。


ライブで異様に仕上がっている。


顔。


煽り。


熱量。


全部強い。


「……やばい」


菜々美はソファへ座り込んだ。


「本当にレイ見れるんだ……」


実感が来る。


その瞬間。


また通知。


母。


『何叫んでたの?』


菜々美。


即電話。


「ママぁぁぁ!!!」


『うるさっ』


「当たったぁぁぁ!!!」


『何が』


「種馬ズぅぅぅ!!!」


『あんたまたそれ?』


「またじゃないの!!」


半泣き。


「レイがぁぁぁ!!」


『はいはい』


だが母は知っている。


娘がどれだけこのライブを楽しみにしていたか。


以前、レイのライブ映像を見ながら泣いていたことも。


『そんな好きなの?』


「好きとかじゃないの!」


『何』


「人生なの!!」


重い。


かなり重い。


だが飼い主たちは割と本気でそう思っている。


ライブ当日。


東京ドーム周辺。


異常。


人。


人。


人。


馬グッズ。


人参カチューシャ。


『勝ち馬が憎い』Tシャツ。


狂気。


菜々美は朝から緊張していた。


美容院。


ネイル。


全力。


何故なら。


「レイに見られるかもしれないから」


完全に恋。


だが周囲も似たようなものだった。


「やばい緊張する……」


「今日レイ機嫌いいかな……」


「神谷近く来たら死ぬ」


「黒崎のファンサ浴びたい」


「ハルの笑顔で浄化されたい」


宗教団体。


その時。


ドーム入口。


巨大ビジュアル。


レイ。


ドアップ。


『飼い主たち、餌代ありがとう♡』


歓声。


「ぎゃああああ!!!」


「レイーーーー!!!」


「顔がいい!!!」


「うわぁぁぁぁ!!」


まだ始まってない。


なのにもう壊れてる。


菜々美はチケットを見ながら少し震えていた。


アリーナ。


かなり良席。


「……死ぬ」


本気だった。


席着席。


周囲。


全員同類。


知らない女同士なのに会話成立する。


「どこ推しですか?」


「レイです」


「分かります……」


「今日ビジュやばい予感しません?」


「します……」


開演前なのに涙目。


その時。


暗転。


悲鳴。


地鳴り。


そして。


巨大スクリーン。


【種馬ズ】


歓声爆発。


菜々美。


「うわぁぁぁぁ……」


涙。


もう泣いてる。


そして。


炎。


ステージ。


レイ。


「飼い主たちぃぃぃぃ!!!!!!」


東京ドーム崩壊。


「ぎゃあああああああ!!!!!!」


菜々美。


完全に壊れた。


「レイーーーーーー!!!!」


レイ。


今日も顔が良すぎる。


スタイル良すぎる。


しかも。


めちゃくちゃ楽しそう。


「餌代払ったのだぁ!?」


「払ったぁぁぁぁ!!!」


「よろしいのだぁ♡」


歓声。


涙。


笑い。


全部混ざる。


その瞬間。


菜々美は本気で思った。


(生きててよかった……)


そしてライブ後。


放心状態。


周囲。


みんな死んだ顔。


「やばかった……」


「レイいた……」


「実在した……」


「無理……」


菜々美もフラフラしながら出口へ向かう。


スマホ。


SNS開く。


『種馬ズ最高』


『人生救われた』


『レイ顔良すぎ』


『また働ける』


TL。


感情の墓場。


菜々美は少し笑いながら呟いた。


「……またチケット戦争かぁ」


その顔は。


かなり幸せそうだった。

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