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種馬ズ  作者: 雪だるま
第一章

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39

深夜一時。


種馬ズ楽屋。


ライブ後。


全員疲れていた。


ドームツアー。


番宣。


映画。


ドラマ。


CM。


雑誌。


配信。


全部重なっている。


しかも最近は、

『勝ち馬が憎い』八十万突破でさらに仕事が増えた。


スタッフですら死にかけている。


だから。


最初は。


本当にただの雑談だった。


ハルがソファでゴロゴロしながら言った。


「ねぇ〜」


「ん〜?」


黒崎が水を飲む。


「種馬ズっていつまでやるんだろうね」


静止。


空気。


少し止まる。


神谷が顔を上げる。


レイはスマホで自分のグッズ市場を見ていた。


「のだぁ?」


ハルは悪気なく続ける。


「だって今すごいじゃん」


「まあな」


黒崎も苦笑。


「ドーム埋めてるし」


「うん」


「でもさ〜」


ハルは天井を見た。


「いつか解散するのかなぁって」


その瞬間。


レイ。


「解散!?」


大声。


「のだぁ!?」


黒崎。


「声でかい」


だが。


少しだけ空気が変わった。


アイドル。


解散。


避けられない話題。


しかも。


今の種馬ズ。


完全に国民的人気。


つまり。


“いつ終わるか”を周囲が気にし始める時期でもある。


神谷が静かに言う。


「……ずっとは無理だと思う」


現実的。


黒崎も頷く。


「まあなぁ」


レイ。


「のだぁ……」


少し真顔。


実際。


最近。


芸能界上層でも、

「種馬ズをどこまで続けるか」

みたいな話は出始めていた。


若い。


売れてる。


だからこそ。


“ピークで終わるか問題”。


そして。


レイが言った。


「吾輩ぁ」


「うん」


「四十歳で“飼い主ぉ♡”は嫌なのだぁ」


静止。


数秒。


ハル。


吹き出す。


黒崎も笑った。


神谷ですら少し口元が動く。


「確かに」


「絵面終わってる」


レイは真顔。


「怖いのだぁ」


「そこだけ冷静だなお前」


実際。


四十代種馬ズ。


かなりキツい。


しかも。


曲。


『勝ち馬が憎い』


『愛しの人参』


『種馬も辛い』


どう転んでも生活感がある。


「のだぁ……」


レイは遠い目。


「吾輩、将来は高級マンションでダラダラしたいのだぁ」


「夢が俗」


「働きたくないのだぁ」


黒崎は少し考えた。


「俺は……」


全員見る。


黒崎。


少し笑う。


「三十五くらいかな」


「おお〜」


「そのくらいまでやれたら十分かなって」


現実的。


かなり現実的。


ハルは即反応。


「えぇーーー!」


「長い方だぞ普通」


「でも寂しい!」


黒崎は苦笑する。


「まあな」


神谷は静かに言った。


「……俺は途中で消えてそう」


「怖いこと言うな」


「なんか山奥住んでそう」


「ちょっと分かる」


神谷。


本気でありそうだった。


観葉植物と猫だけの生活。


普通にやりそう。


その時。


レイ。


急に真顔。


「……のだぁ」


「何」


「解散したらぁ」


「うん」


「グッズ市場どうなるのだぁ?」


「お前本当に最後までそれかよ!!」


楽屋爆笑。


だが。


その発言。


妙にリアルだった。


実際。


国民的アイドル解散。


市場。


めちゃくちゃ動く。


プレミア。


伝説化。


価格高騰。


レイ。


少し興奮。


「解散商法なのだぁ♡」


「最低」


「限定グッズなのだぁ♡」


「お前だけ最後まで俗物だな」


レイは真顔。


「芸能界は資本主義なのだぁ」


その時。


楽屋外。


スタッフ。


静止していた。


「……今」


「うん」


「解散って聞こえた?」


空気凍結。


数秒後。


地獄。


「えっ!?」


「マジ!?」


「まだ早い早い!!」


「スポンサーどうすんの!?」


「ドームツアー!?」


「CM契約!?」


芸能界。


大騒ぎ。


何故なら。


今の種馬ズ。


経済効果がデカすぎる。


テレビ局。


スポンサー。


配信。


ライブ。


グッズ。


全部が種馬ズ前提で動いている。


解散などされたら困る。


めちゃくちゃ困る。


しかも。


業界は知っている。


人気グループほど、

ある日突然終わる。


だから怖い。


そして。


数時間後。


なぜか。


社長室。


種馬ズ全員集合。


社長。


真顔。


「お前ら解散すんの?」


「のだぁ!?」


レイ、

秒速否定。


「まだなのだぁ!!!」


「まだって何だよ」


黒崎が頭抱える。


ハル。


「雑談だよぉ!」


神谷。


「……別に決まってない」


社長は腕組み。


かなり真顔。


「冗談でもやめろ」


珍しく重い。


「今、お前らで何百人食ってると思ってんだ」


静止。


現実。


アイドルグループ。


売れれば売れるほど、

背負う人間が増える。


スタッフ。


スポンサー。


テレビ局。


イベント会社。


制作。


全部。


社長はため息をついた。


「まあでも」


少し笑う。


「終わる時は来るけどな」


静かだった。


その瞬間だけ。


全員少し黙る。


今は売れている。


忙しい。


騒がしい。


でも。


永遠じゃない。


アイドルは特に。


だからこそ。


今が眩しい。


その時。


レイ。


ボソッ。


「……のだぁ」


「何」


「解散ライブの倍率やばそうなのだぁ♡」


「帰れ!!!!」


空気が全部壊れた。


黒崎は頭を抱え。


神谷は静かに笑い。


ハルは転げ回って笑っていた。


そして。


社長だけは腹を抱えていた。


「がっはっはっはっ!!」


結局。


このグループは、

最後までこんな感じなのかもしれなかった。

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