表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種馬ズ  作者: 雪だるま
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/57

22 種馬ズ ファンネーム決定会議回

スターライト・クリエイティブ会議室。


空気は重かった。


机の上には大量の資料。


ライブ売上。


グッズ報告。


スポンサー案件。


そして中央。


大きく表示された議題。


【種馬ズ ファンネーム決定会議】


地獄である。


そもそも。


普通のアイドルグループなら、

もっと平和な名前になる。


「○○ちゃんず」

「○○crew」

「○○lover」


みたいな感じだ。


だが。


種馬ズである。


全部がおかしくなる。


会議開始三十分後。


すでに空気は終わっていた。


「だから“飼い主”は危険ですって!」


「でもファン側がもう使ってます!」


「“種牡馬オーナー”も危ないだろ!!」


「“シンジケート”は意味分かんないです!!」


「競馬界隈は理解します!」


「アイドル界隈が理解しねえよ!!」


スタッフたちが頭を抱えていた。


原因はもちろん。


ファンたちである。


最近。


種馬ズファンたちは勝手に自分たちを呼び始めていた。


『飼い主』


『種牡馬オーナー』


『シンジケート』


地獄。


しかも。


全部それなりに浸透している。


SNS。


『今日も種馬ズ最高だった♡ #飼い主集合』


『オーナー席神すぎた』


『シンジケート会議(オタク飲み会)』


完全に終わっていた。


しかも。


ファン同士で派閥まで出来始めている。


「“飼い主”はアイドルを下に見てる感じがして嫌」


「いや種馬ズ側が餌代とか言ってるし」


「“シンジケート”が一番知的」


「競馬感強すぎる」


「“オーナー”は金持ち感ある」


「でも長い」


地獄。


その頃。


会議室端。


黒崎が静かに頭を抱えていた。


「……なんでこうなるんだ」


神谷は無言。


ハルは笑っていた。


「飼い主かわいいと思うけどな〜!」


「お前は何でもかわいいって言うだろ」


「えへへ!」


そして。


問題児。


レイ。


「のだぁ〜〜♩」


スマホを見ていた。


「おい」


「のだぁ?」


「お前も意見出せ」


レイは少し考えた。


そして。


「市場規模的には“オーナー”が高級感あるのだぁ」


「市場規模って言うな」


「“飼い主”は親しみやすいのだぁ」


「急にマーケティング始めるな」


「“シンジケート”は賢そうなのだぁ」


「全部浅い」


だが。


レイも実はちょっと悩んでいた。


何故なら。


ファンネームは、

グッズ展開に直結するから。


「のだぁ……」


真剣だった。


「ファンネームはブランドなのだぁ……」


「転売目線やめろ」


「将来プレミア化するのだぁ」


「全部そこに繋げるな」


その時。


若手女性スタッフが言った。


「でも“飼い主”って結構ファン受けいいですよ?」


「なんで?」


「レイ君が“餌代払うのだぁ♡”とか言ってるから」


全員。


静かにレイを見る。


レイ。


「のだっ♡」


ドヤ顔。


黒崎が遠い目をした。


「元凶いたわ」


神谷が静かに呟く。


「だいたいレイのせい」


「のだぁ!?」


ハルだけ笑っていた。


「でもレイ君っぽいよね〜!」


「吾輩、愛されてるのだぁ♡」


「飼育されてる側だけどな」


会議はさらに荒れた。


「“飼い主”はちょっと距離感危なくないですか!?」


「いや種馬ズに今更距離感を求めるな」


「“シンジケート”は意味分からなすぎる」


「でもコアファンは好きそう」


「“オーナー”は金払い良さそう」


「そこを基準にするな」


レイが急に立ち上がる。


「のだぁ!!!」


全員見る。


レイは真剣だった。


「大事なのはぁ!!!」


「……」


「グッズ化しやすいかどうかなのだぁ!!!」


「帰れ!!」


だが。


実際問題。


そこは大事だった。


飼い主Tシャツ。


飼い主パーカー。


飼い主会員証。


普通に売れそう。


恐ろしい。


会議室が混沌とする中。


ガチャ。


社長が入ってきた。


全員静止。


社長は静かに言う。


「まだ決まってねえの?」


「いやそれが……」


「“飼い主”派と“シンジケート”派が……」


社長は数秒黙った。


そして。


「飼い主でいいだろ」


即決。


「えっ」


「だって分かりやすいし」


「いやでもイメージが」


「種馬ズだぞ?」


全員黙る。


強い。


正論すぎる。


社長はコーヒーを飲みながら続けた。


「今更上品ぶるな」


「……」


「あとレイが“餌代”とか言ってるし」


全員またレイを見る。


レイ。


「のだっ♡」


社長は頷いた。


「決まり。飼い主」


終了。


会議終了。


強制終了。


スタッフたちは力なく椅子に沈んだ。


「……決まっちゃった」


「飼い主かぁ……」


「もう戻れないな」


その横で。


レイだけは目を輝かせていた。


「のだぁあああ!!!」


「うるせえ」


「飼い主限定グッズ作るのだぁあああ!!!」


「始まった」


「首輪風会員証なのだぁ♡」


「やめろ」


「餌袋型ポーチなのだぁ♡」


「やめろ!!」


「“今日も養ってくれてありがとうなのだぁ♡”Tシャツなのだぁ♡」


「お前本当に商魂が逞しいな」


ハルはケラケラ笑っていた。


神谷は静かに水を飲んでいる。


黒崎は頭を抱えていた。


だが。


その日の夜。


公式SNS。


【種馬ズファンネーム正式決定!】


【“飼い主”】


投稿から五分。


トレンド入り。


『飼い主決定おめでとう』


『終わってて好き』


『もう戻れない』


『シンジケート派だったけど認める』


『飼い主として一生養います』


そして。


レイはそれを見ながら、

静かに呟いた。


「のだぁ……」


「何」


田村が警戒する。


レイは真顔だった。


「“飼い主限定初期グッズ”って今から作れば将来プレミアなのだぁ」


「お前だけはブレねえな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ