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僕と×××。と香織の物語「特別編 林間学校から始まる×××。」  作者: なお。


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 草野と岡田先生が迎えに来てくれたこともあり、僕たちは何とか下山することが出来た。その後、髙橋さんは衰弱していたので大事をとり病院へ搬送されることになった。

 僕と香織は僕の家に向かう。事前に遥陽と集まる約束をしてあったのだ。僕たちが家についたのは午前10時を少し過ぎた頃だった。僕と香織は母から裏口から入るように連絡を受けていたので、そちらへとまわり裏口から家に入る。


「ただいま」


「おかえり。なんか、大変やったらしいな。あんたらは大丈夫なんか?」


「今んとこはな。これからどうなるかはわからん。遥陽さん来てる?」


「遥陽さんは今日はいてないで。来はるんか?」


「そうやねん。まぁ、それも含めて説明するわ。取り敢えず、リビング行こや」


 僕たちは母による簡単なお浄めを受けてからリビングへと移動する。僕と香織がリビングに入るとテーブルにはティーセットと焼菓子が用意されていた。


「二人とも手洗ったら座り。お茶しながら聞かせてぇな」


 僕と香織は「はーい」と返事をし、手洗いうがいを済ませると椅子に座る。僕と香織が隣同士で向かいに母というのが定位置だ。

 母は紅茶をカップに注ぎ皆んなの前に、焼菓子のたくさん入ったカゴをテーブルの真ん中に置いた。


「で、生徒が亡くならはったらしいやんか。知ってる子やったんか?」


 僕と香織は静かに頷く。それを見た母の表情は曇り「そうかぁ、それは残念やったな…」と声を漏らした。


「実は亡くなったんは僕と香織と同じ班の生徒なんや。それも含めて順番に説明するわ。はじまりは…」


 僕は登山中に祠が壊れ「黒い靄」が出てきたことから、遥陽に出会ったことや助言をもらったこと、「髪の毛」にまつわる怪奇現象が続いていることなどを全て包み隠さず母に話した。

 僕の話を聞く母の顔はどんどん険しいものになっていったように感じた。


「おかん。何か知ってることあるやろ」


「いや…、そうやな。遥陽さんも関わってはるなら隠してもあかんか。そうや、知ってることあるで」


「やっぱりそうなんやな。で、それはなんなん?」


「それは遥陽さんが来はってからにしよ。その方が二度手間にならんでえぇし。それまでは楽しいティータイムや」


 母はそう言うとニカッと笑い丸いクッキーに手を伸ばすとそれを口の中へ豪快に放り込む。クッキーを頬張り、紅茶をすする母は「美味し」と微笑む。

 僕はいつものことながら場の空気を一気にぶっ壊すの得意やなと感心する。

 気づけば僕も香織もどこかホッとしている。二人は顔を見合わせ笑みを漏らすとクッキーへと手を伸ばした。


 ◇


 僕たちがお昼ご飯を食べ終えリビングでくつろいでいると玄関のチャイムが鳴った。

 母は玄関へと向かい、暫くすると遥陽を伴ってリビングへ戻って来た。


「遅くなってすみません。祠修復の打ち合わせが思ったより長引いてしまいました」


「いえ、全然大丈夫ですよ。僕たちはそのおかげでゆっくり出来ましたんで」


「そうですか。では、早速本題に入りましょうか」


「はい」と言い僕と香織はテーブルに向かう。四人が席に揃ったのを確認すると遥陽はノートとボールペンを取り出した。


「遥陽さん、御守りとお札ありがとうございました。あれのおかげで無事下山できましたよ」


「と言いますと、やはり何かありましたか?」


「はい。髙橋奈美から黒い靄と髪の毛が発現したんですよ。アレは香織に襲いかかったんやけど間一髪お札が間に合い事なきを得たんです」


「そうですか、それは良かった。で、靄と髪はどうなりましたか?」


「札が当たると消えてしもたんですよ。それがどこへ行ったかまでは僕にはわかりませんでした…」


 遥陽は大きく頷くと香織をじっと見つめる。何かを確認するように視たあと口を開く。


「香織さんを視る限りではここにはいないようです」


「それは一安心や。ということは…」


「そうですね。まだ、髙橋さんの中にいるか。もしくは、違う誰かの所へ移動しているか、ですね。まぁ、今ここで考えてもわからないので相手の出方を待ちましょう」


「そうですね。そういや、おかん。何か知ってることある言うてたんは何なん?」


「あぁ、その話な。その前に遥陽さんに確認したいことがあります」


「何でしょう?」


 母は一度姿勢を正し遥陽の方に真っ直ぐ向き直る。


「今回の依頼は本当に祠の修復だけやったんですか?」


「と言いますと?」


「この依頼は本来は恵に来たもので。封印が解けるから()()を祓うというものやったんとちゃいますか?」


 遥陽の頬がピクリと動く。サングラスの奥の瞳が心なしか驚いているように感じる。


「何故それを知っているんですか?」


「二人とも何の話をしてるん? それに、彼女()()ってなんなん…。二人は一体何を隠してるん? 私には全然わからへん…、あんたにはわかる話なん?」


「いや、僕にも全然わからへん。僕らの知らんナニカがあるんや」


 僕と香織は二人に説明を求める。順を追って話して貰わなければ到底わからない話に違いない。まず、依頼について遥陽が明かした。


「隠していて申し訳ありませんでした。守秘義務とニ人に余計な不安を与えたくなかっただけなんです。お許しください」


 彼は僕たちに頭を下げた。僕と香織は慌てて「いえいえ、大丈夫です。頭をあげてください」と伝え場をとりなす。遥陽も「ありがとうございます」と安堵した様子を見せた。


「で、依頼の話ですが。これは先ほどおっしゃられた通り私の姉である恵にきた物でした。封じられていたモノが悪霊と化しており、手の施しようがない。楽にしてやって欲しいと」


「その感じやと、依頼主の人も封じられていたモノが誰なのか知ってる感じやね」


「そうですね。わざわざ、姉を選んで依頼している事からもそうだと思います。ですが、姉は海外にいるので代わりに私が依頼を受けることになりました。因みに、私は詳細は聞いていません。姉からは知る必要はないと言われましたので…」


「そうやったんですね。で、その詳細を何故かおかんが知ってるって事か?」


 僕は母の方を見る。母は少し暗い顔をしているように見える。あまり話したくないことのようだ。しかし、母は覚悟を決めたのか僕たちの顔を見回した。


「あの祠に封じられてたんわな、私と恵の同級生なんや…」


「なんやて!」


「静かに! おばちゃん、続きお願い」


 香織に制され僕は口を噤み、母は小さく頷き続きを話し出す。


「あれは私らがまだあんたらくらいの頃やった。私と恵にはもう一人仲のええ友達がおった。名前は知世。背中まである長くて艶やかな黒髪がとても綺麗な子やった」


「長い黒髪…」


「あんたらが林間学校で使つこた山な、私らの時も使たんや。で、その時にあれは起こってしもたんや…」


「あれって…?」


 母はそこで下を向き目頭を押さえる。涙を堪えているのだろうか。


「私らは同じ班やった。あんたらと同じで男子三人女子三人が一組の班でな、皆んなで登山してキャンプしたんよ」


「おばちゃんも私らと同じことしてたんやなぁ」


「そうなんよ。でな、キャンプファイヤーも終わって就寝時間になった。私らもテントに戻って寝たんや。疲れてたしよく寝たわ」


「それも一緒やわ」


 母と香織はにこやかに話している。しかし、僕にはその先が気になりつい催促してしまう。


「で、それと今回の話がどう繋がってくるん?」


「ここまでは私の思い出話や。問題はこっからや。私は夜中に目が覚めたんや。横を見たらいるはずの知世がおらんかった」


「え? 夜中に消えたって…、まさか…?」


「いや、ちょっとちゃうねん。私はすぐに恵を起こして知世を探しに行ったんや。トイレとか色々探したんよ。そしたらな…」


「知世さんはどこにいたん?」


「彼女はな、暗闇の中を歩いて戻ってきたんや」


「暗闇の中から歩いて? おかん、知世さんはどっから帰って来たんよ?」


「彼女はあんたらも行った言うてたあの()に行ってたらしいんや」


「なんでまた夜中にそんなとこ行ってたんやろ?」


 母は懐かしむような切ないような表情をした。遥陽はずっと静かに話を聞いている。


「知世には当時お付き合いしていた人がおったんや。それは、同じ班の男の子やった。めちゃくちゃ仲も良くてお似合いやった。夜に泉で落ち合う約束してたらしい」


「あそこ綺麗やもんなぁ。夜やったら上から月光が差し込むんやろか? めちゃ幻想的やん」


「香織ちゃん、ようわかってるやん。そうらしいんやわ。だから、二人で行くて決めてたらしいんよ。でもな、彼女はそこで見たらあかんもんを見てしもた」


「見たらあかんもん?」


「相手の男の子が他の女子に告白されてるところや。しかも、告白のあと抱き合ってたらしいんや」


「いや、それショックすぎん? 仲良かったんやろ? 何でなん?」


「詳しくは聞けんかったからわからへん。兎に角、ショックで呆然としながら歩いて帰ってきた知世を二人で朝まで慰めたんや」


「で、下山中にそれは起こってしもた…」


 僕たちはついに事の真相が明かされるのだと息を呑む。


「朝になっても彼女は気の抜けたままやった。朝食も下山中の歩いている時もずっと心こかにあらずやった。で、山道の途中でな…、彼女が足を滑らせてな…」


「まさか…」


「そうや…、そのまま滑落して亡くなってもうたんや…。っく…」


 母はそこまで言うとついに涙を堪えきれなくなってしまった。両目から大粒の涙を流し嗚咽を漏らす。僕たちはそんな母の心が落ち着くのをゆっくり待った。


「もう大丈夫や。でな、知世の付き合ってた男の子は泉での告白断ってたんや」


「えっ! 抱き合ってたんやろ? どういうこっちゃ!」


「諦めるために最後に抱きしめて欲しいって言われて仕方なく抱きしめただけやったんや。その後も知世を待ってたらしいんや」


「それを知らずに知世さんはそのままお亡くなりになったんか…」


「そうなんよ…。で、その事故があってから数ヶ月後に夜な夜な長い黒髪の霊が目撃されるようになった。だから、滑落した場所に祠を建てて彼女を祀ったんや」


「その祀った人というのが、当時からそういう仕事をしていた姉という事ですか?」


「そういうことや。私らは知世を救えなかった事を今でも後悔し続けとる。もちろん、あの人も…」


「それは岡田先生のことですね」


「えっ? 岡田先生? なんでここで先生が出てくるん?」


「遥陽さん…、何でそれを…?」


「祠の修復を依頼されたのは岡田先生でした。彼がずっと知世さんの為に力を尽くしてこられたのですね」


「そうです。岡田先生は今でも知世の事を想ってくれてる。どうにかして救ってあげたいって思ってるんやと思う。だから、最期も私たちでってことなんかな…。私が知ってるのはこれで全部や。役に立つかはわからんけどな」


 母はそう言い終えるとお茶をずずずつと飲んだ。僕と香織は情報量の多さに暫し固まっていた。アレにまつわる話もそうだが、まさかの岡田先生の登場に気持ちが追いついてこない。

 その間に遥陽はノートにスラスラと情報を纏めていく。流石、手慣れたものだ。


「では、今後についてですが。いいですか?」


 僕たち三人は異様な達成感に満足していた。遥陽は「まだ何も解決してません。気を張り直して」と僕たちに軽く喝を入れる。僕と香織は姿勢を正すと「お願いします!」と言った。


「では、現状出来ることはありません。最初の方に言った通り相手の出方を伺います。しかし、ただ待っているだけではありません」


「というと?」


「祠の修復は進めます。祓うにしろ封印するにしろこれは必ず行います。あと、貴方達の自衛の準備です。御守り、お札を作るのと常にそれらを肌身離さず携帯すること」


「わかりました」


「あとは、学校でなり、友人たちの会話でなり得た情報を毎日私に教えてください。どんな些細なことでも構いません。毎日二人で纏めてメールでもLINUでもどちらでも良いので送ってください」


 僕と香織は「了解しました!」と敬礼する。その息ぴったりな様子に苦笑する遥陽。母は「なんでこれでこの子らは付き合うてないんや」と首を傾げて笑った。


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