60.
「シンシアさん、どうしたんですか? そんなに慌てて、何かあったんですか?」
私は彼女に尋ねた。
「大変よ、カトリー。彼女が、この学園に帰ってきたの……」
シンシアは、深刻そうな表情でそう言った。
彼女が帰ってきた?
えっと……、彼女というのは、いったい……。
あ、もしかして……。
「育児休暇をしていた数学の先生が、帰ってきたんですね? それは嬉しいです。私、数学は苦手ですけれど、あの先生の授業は聞いていて楽しいですし……」
「違うわよ! そんなことで私がわざわざ、この教室に来るわけないでしょう? カトリー、あなただって、本当はわかっているんでしょう!?」
シンシアは私の顔を覗き込みながら言った。
確かに、彼女の言う通りだ。
彼女が帰ってきたと聞いた瞬間から、それが誰のことなのかは、すぐにわかった。
でも、そんなことは認めなくない。
認めなくないから、帰ってきたのは違う人だと思いたかった。
私の学園生活の大きな障害だった彼女が、この学園に帰ってきたの?
せっかく、ハワードとつき合い始めて、幸せな学園生活を送っていたのに……。
いや、まずは、シンシアに確かめなければならない。
私の予想が外れているとは到底思えないけれど、それでも、勘違いだったらいいと思いながら、シンシアに尋ねることにした。
「シンシアさん、帰ってきたというのは、まさか……、マーシー・オバーフさんですか?」
私は、恐る恐る尋ねた。
そして、私の問いに対するシンシアの返答は……。




