58.
(※マーシー視点)
「あなたには、ある部屋に入っていただきます」
「え……」
私は指導員の言葉に驚いた。
どちらかといえば、拍子抜けというのが、一番近い感想かもしれない。
別に部屋に入ることくらい、何の罰にもならない、そう思っていた。
しかし、その考えは甘かったと、私はすぐに知ることになった。
「どうして私が、こんなことをしなくてはいけないのよ……」
私は狭い部屋に閉じ込められていた。
そこには風呂とトイレと机とベッド以外、何もない。
運ばれてくる食事は、最低限のものだけだ。
もともとこの施設の食事は質素なものだったが、それがご馳走に思えるほど、最低限のものしか与えられなかった。
そして、私が苦しんでいる理由は、それだけではない。
その部屋で私は、あることをやらされていた。
それは、反省文を書くことだ。
しかも、量が尋常ではない。
十万文字書かなければ、私はこの部屋から出ることができない。
その間、誰にも会うことができず、話すこともできず、死なない程度の食事と睡眠以外は、ひたすら反省文を書いていた。
まさに、地獄だった。
しかも、反省文の内容は、この施設に来てからだけのことではない。
私がこの施設にやってくるまでに行った悪事についても、書かなくてはならないのだ。
これが、苦痛だった。
それはつまり、カトリーに対して行ったことの、反省文を書かなくてはいけないということだ。
これは、最悪の屈辱だった。
しかし、書かないわけにはいかない。
書かないと、ここから出してもらえないのだ。
狭い部屋に一人というのは、なかなか気が滅入る。
しかも、過去の行いを振り返り、それを反省文にしなくてはいけない。
下手な体罰よりも、私にとっては苦痛だった。
しかも、十万文字?
完成までに、いったい、どれくらいかかるの?
始まってからまだ二日だが、まだ二千字しか書いていない。
こんな生活が、ずっと続くの?
早くこの部屋から出たい。
誰でもいいから、他人と話したい。
みんなと同じように、食堂のご飯を食べたい。
時々様子を見にやってくる指導員に私はそう訴えた。
しかし……。
「そんな余計なことを考えていないで、しっかりと反省してください。いくら言葉で誠意を見せても無駄です。きっちりと十万文字の反省文を書くまで、そこから出すつもりはありません。反省文も書かず、出してもらうことしか考えていないあなたには、さらに罰が必要ですね。反省文は、プラス二万文字で、十二万文字でお願いしますね」
彼は、笑顔で答えた。




