36.
(※エリオット視点)
「画家の卵が作った卵かけご飯、歯科医師の息子が作った鹿肉のワイン煮込み、演劇部のロイくんが作った激辛パスタ、ほかにもたくさん……、いったい、何なんだ、このメニューは……」
僕たちはカトリーのクラスに来て、席に座ってメニューを眺めていた。
「すごい! 全部駄洒落になっていて面白いですね!」
テーブルを挟んで向かい側の席に座っているシンシアは、楽しげな表情でメニューを眺めている。
「まあ、確かに面白い。でも、演劇部のロイくんが作った激辛パスタは、無理やり駄洒落にした感が否めないね」
「誰じゃ、そんな水を差すようなことを言っているのは」
笑顔のシンシアが、水の入ったコップにストローを差しながら言った。
「さて、何を頼もうかな」
「何にしましょうか」
「料理名のインパクトはあるけれど、画家の作った卵かけご飯って、要は画家の卵がご飯の上に卵を乗せただけだよね」
「確かに言われてみればそうですね。でも私、卵かけご飯結構好きなんですよ」
「それに、なんだ、鹿肉のワイン煮込みって……。学園祭で出す料理のレベルをはるかに超えているだろう」
「ちょっと値が張りますけれど、おいしそうですよねぇ。よし、決めました。私は画家の卵が作った卵かけご飯にします」
「うーん、じゃあ僕は、歯科医師の息子が作った鹿肉のワイン煮込みにしようかな」
「決まりですね」
僕たちは料理を注文した。
そして、しばらく待っていると、料理が運ばれてきた。
「それでは、さっそく食べましょう。いただきまーす」
出来立ての料理を食べ始めた。
僕は一口食べた瞬間、驚いた。
なんだ、これは……。
美味しい、美味しすぎる!
鹿肉を食べるのは初めてだけれど、まさかこんなに美味しいなんて……。
料理人の腕がいいのだろうか。
彼はこのレベルの料理を作れるようになるまで、いったいどれほどの努力をしたのだろう……。
親に歯科医師を継げと言われながらも、それに反発して、長年の夢である最高の料理人を目指して、日々腕を磨いていた……、そんなストーリーを妄想しながら、僕は料理を味わっていた。
「あぁ、美味しかったですねぇ」
「そうだね。本当に美味しかった」
「さてと、次はどこへ行きます?」
「うーん、そうだね……」
考えていると、近くの席から悲鳴が聞こえた。
そちらを振り向くと、一人の客が床に倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
僕とシンシアは、倒れている彼女に駆け寄った。
彼女は苦しそうな表情をしていて、意識がもうろうとしていた。
いったい、どうしてこんなことに……。




