シスター、ランチをつくる
「ヘレン、やっぱりその髪飾り、とっても似合うわ!」
私はやや興奮気味に、隣を歩くヘレンを見つめる。彼女のこめかみには、先程私が選んだ髪飾りがとまっている。
「でもお姉様、ヘレンにはちょっと素敵すぎます……。お姉様なら、お似合いでしょうけど……」
彼女は不安げに、瞳と同じ色の花を模した髪飾りに触れた。
少し大人びた印象のそれは、太陽の光を浴びて美しくブルーに輝く。今日訪れるカイック平原にも、おそらくこのような花が咲き乱れていることだろう。
「そんなことないわ、ヘレン。もうあなたも16歳だもの。これくらい大人らしい髪飾りでも、ばっちりよ!」
「そ、そうですかぁ?」
学園の校門まで、並木道が繋がっている。今日は一度校舎の庭園に集まり、その後皆で平原へ向かう。
ふと周りを見ると、同じように校舎へ歩いている生徒達が、こちらをちらちらと見ている。
冴えなくて地味な姉、首席で美しい妹。皆が注目するのは当たり前だった。ここ数日、一緒にいるとこんな感じである。
私は鼻が高かった。どこに出しても恥ずかしくない、自慢の妹。内気なヘレンの負担にならない程度に、ぜひ注目して欲しい。
「ソフィー、おはよう」
心地よい、低い声が響く。ぱっとそちらを見ると、ロルフ様が立っていた。
「おはようございます、ロルフ様」
「ああ。……妹君も、おはよう」
「おはようございます」
ロルフ様はあまり笑わない。けれど、そのお立場や雰囲気、容姿も相まって、ご令嬢からの人気は高い。
私がロルフ様を尊敬し始めたのは、入学して2日目だった。その誠実さに触れて、あっという間に憧れてしまったのだ。
「お姉様?」
「ヘレン。ごめんなさい、考え事をしていたわ」
「ソフィー、約束通り何も用意していないが……。いいのか?」
心配そうに眉を寄せるロルフ様に、手に下げていたバスケットを掲げる。
「ええ、4人分お食事を用意させていただきましたわ」
「お姉様がお作りになったんですよね!」
「え、そうなのか?」
彼が驚いたように目を見開く。口元に手を添え、動揺しているようだった。
赤の他人が作ったものは、食べたくないのだろうか。
「その……、楽しみだ」
「えっ」
頬がわずかに熱くなる。そんなふうに言われるとは、予想もしていなかった。
ロルフ様も頬を赤らめ、視線を外した。
「……」
「ヘレン? どうかしたの?」
「……西の方へ行くのは初めてなので、緊張してしまって」
不安げにこちらを見つめる彼女の頭を撫で、安心させるように微笑んだ。
「大丈夫よ、とってもいい所だから!」
ヘレンはとても賢いけれど、心配性だ。
私は久しぶりにそれを痛感して、四六時中一緒にいられることに嬉しくなった。




