生き方
僕は暗い場所のベッドの上で目覚める。天井にはどこまでも遠く闇が続く。
「おう、起きたか」
「ケテル、ここはあの部屋か?」
そこは夢の中でケテルと話した部屋と同じだった。
「今は肉体ごとだがな」
「そうか、トキちゃんは?」
「いるよ、呼んできてやる。お前は寝とけ」
ケテルは闇に消えていった。
トキちゃんも無事か。僕も死んだと思ったけど、生きてたし。でも、エリアと戦って分かったけど、僕ってまだ弱いな。あれで五四〇位ぐらい、しかも戦闘が本職じゃない転生神で、でしょ。辛いな。
「呼んできたぞ、俺は出てくから、ゆっくりと話してろ」
ケテルの後ろにトキちゃんがいる。なんて言えばいいのか……
「起きたんだね」
先にトキちゃんが口を開いた。
「うん、起きた」
「あんた、なんで殺す必要があったの」
あいつは僕を咎める。しかたないでしょ
「殺らなきゃ、守れなかったから」
「変わってなかったんだね」
あいつは僕を非難する。そりゃそうだよ、あいつは完全な悪以外は殺したくないんだから。今、あいつの中で白と黒両方が完全に悪じゃない。つまり、そいつらにも自分なりの正義があるから、人や神を救っていきたいスタンスだ。それを最初から無理だってのは今のあいつを否定することにも繋がる。
「まあ、これが僕の生き方だから」
「やっぱり、歪んでるよ、あんた」
また言われたよ。それ前に結構言われた気がするのですが。
「歪んでても、僕は僕の存在を証明したいから」
「から、から、から、ってあんたは言い訳ばかりだね、自分のために動くところは変わらない。いい加減変えたらどうなの」
そう言って去っていった。
自分のためか、やっぱりあいつは僕の事を分かってるな。でも、それが変わったら、僕が僕でない何かとして存在することになるけどね。それも分かった上で、言ってるんだろうな。まあ、とりあえず僕は今の僕の存在を守りたい、それだけでいいや。
暫くしたら、ケテルが帰ってきた。
「お前トキに何言ったんだ?」
「特に何も言ってないよ」
「そんならもっと考えてから喋った方がいいぞ」
え? まさかそんなに怒ってた、心の中はガチギレでしたか。
「で 、まずはお前の魂についてだ」
「何かしたのか?」
「いや、大したことはしてねぇ。お前の魂の核となる部分が一部が消失してるから、俺の魂で埋めてる」
「それは大丈夫なのか?」
「ああ、お前の魂自体が再生するにつれて俺の魂は力の層に出ていく」
「今思ったけど、核とか力の層とかって何?」
「核ってのは精神で、力の層ってのは、その周りにあって、精神の望みを聞いて動くもの、まあスキルとか魔力だな。魂じゃないが肉体もある意味力の層って言えるかも知れねぇ。」
つまり、いつも撒き散らしてるのが力の層で、今回は、やり過ぎて核まで削っちゃったぜ、て事か。
「それって僕の思考がケテルの思考に影響されたりはしないよな!?」
「もちろんしねぇよ。あくまで再生するまで支えるだけだ。」
はぁ、よかったよ。これでもちろんイエスとか言われたらどうしようかと。それこそ、僕が僕でなくなるって事だよ。生き方的な意味じゃなくて、本当に。
「まあ、こっからが本題だ。お前にはもっと効率のいい戦い方を学んでほしい。そのために魔法を全力で覚えろ。そして、魂を吸収すれば、お前はコスパ最高になる」
コスパ最高戦士古城靈、うん、格好よくない。
「なんで魔法なんだ?」
「流石に知らなすぎだろ。まあいい教えてやるよ。まず魔法ってのはなぁ、昔にどっかの神が魔力を発見して、作った効率のいい技なんだよ」
「それは、魔力が力の層にある使っても回復する力だからって事?」
「その通りだ。あと、イメージだけできればってのもあるな。昔はお前みたいなことできる転生神もいたんだが、使いにくくて、効率の悪いことする意味がねぇってやめてった。そんなこんなで今の転生神はほとんど魔法を使うわけだ。」
やっぱり僕しかやらないんだ。
「それで、魔法か。でも僕は魔力少ないよ」
「白の転生神から奪ったろ」
「そっか。そういえばそうだったね。でいつからやんの?」
「今日からだ、俺の知ってる中で一番魔法得意な奴呼んでくっから。あと、ある程度使えるようになったら、実戦にも出すからな」
おお、黒なのにブラックじゃない。白は2日で実戦だったのに。なんて黒側はホワイトなんだ。
「じゃあ、俺は帰るから」
「ちょっと待って! ゲームはいいから! せめて甘味を!」
帰ろうとするケテルの足にしがみつく。
「お、おう。両方やるから。放せ」
「あ、じゃあ僕ベッド派じゃなくて、布団派なんでそれもお願いします」
「お、おう」
やったぜ。最低限度の生活は確保したぜ。ケテルはため息をついて呆れてるけど。