魔法って難しい、と言いたいけどそれよりも痛い
僕は今こたつに入りながら男と見つめ合っている。
正確には僕が男を見ているだけかもしれない。というのも、目の前の男は両目に革製の眼帯をしているからだ。それでも見られてる気がするんだけどね。
「あの、どちら様ですか?」
ちょ、答えろよ、黙ってないでさ、不審者さん。
「少年、魔法の基本は分かるか」
だから誰だってんだよ。しかも、少年ってよりは青年だよ。それより第1声が唐突な質問ってのは何なんだよ。
「魔法の条件とか種類とかに応じてパズルみたいに魔方陣を展開していって、魔法のイメージを引き出すみたいな感じだよね」
「甘いな、少年」
甘い、ケテルがくれた菓子食うか。たくさん貰ったけど、何があるかな?
袋で貰ったので、こたつの上にひろげる。
色々あるな、ほとんどは甘味だな、スナック菓子もあるな。とりあえず、この塩飴舐めとくかな。
「その認識は誤っている。本来、魔法とは不定形の技術なのだ。使用者が魔力を望んだ形に変える技術なのだ」
変人がこちらに歩きながら、話している。
分かった、この神あれだ。ケテルが呼んだ魔法の先生だ。ケテルと同じで、全身黒だし。
「その上で、型というのは邪魔になる」
声には出しませんが、そろそろ止まった方がいいと思うよー。こたつにぶつかりますよー。
「そしてこの」
音無しで、転倒した。しかもこたつでじゃない、自らの足で転んだ。顔からいったけど大丈夫なのか。てか、見えてなかったのか。
男はゆっくりと立ち上がる。そして、眼帯を外し。
「こんなもの、着けてられるかぁ!」
地面に向かって投げつける。パチンッという乾いた音がなる。眼帯はめんこじゃないんだぞ。
てか、そんなこと言うなら着ける必要ありますか。
「見苦しいところを見せてすまない。ケテルから呼ばれてきた、転生神ビウンだ。今日から君に魔法を教えることになった。よろしく。今日は特にやることはない。これを読んでおけ」
そう言って紙の束を渡すと帰っていった。
ケテル、これは明らかな人選ミスだよ。
指示があったし、読んでみるか。
しばらく読んで分かったことは魔法はイメージが思っていたより重要ということ、それと
この束読んでも意味がないということだ。なぜこんな結論に至ったかというと、25枚野上全てにイメージが重要ということしか書いていないからだ。
こんなに別々の観点から書かなくても、イメージが重要ってのは分かるよと言ってやりたい。
僕はもう寝ます。
アラームの音で目が覚める。これもケテルから貰ったものだからデータ残ってないけど、まあ、多少はね。アラームを止める。ん? 画面に見慣れないアプリがある。何も入ってないはずなんだけど。ウイルスとかじゃないよね。いや、そんなはず無いけどさ。
不審に思いつつアプリを開く。何だこれ? カレンダーかなんか? 画面には、今日、明日、明後日、明々後日と表示されている。今日の部分をタップする。すると、24時間のスケジュールっぽいものが出てきた。これってまさか、僕の予定が見れるってこと。でも、僕は弄れないから、予定は決まってるのかな。
で、今日の予定は7時半から12時まで魔法の学習か。空白は自由ってことかな。スクロールしていくと連絡という欄があった。そこには「ケテルだ。午後1時に俺んとこ来い 」と表示されている。
昼まで変人、午後からケテルとか、今日は忙しくなりそうだな。ジャージからローブに着替えておくか。
ビウンが予定の10分遅れで来た。
「渡したの読んだか?」
「読んだけど、あれってイメージが大事ってことだけだよね」
「ああ、それが理解できていれば大丈夫だ」
今日は眼帯なしか。本当に何だったんだよ。
「今からいくつかの方法で魔法を発動させる。見ててくれ」
魔方陣が僕の上に展開する。あれ? 体が重い?
「これが魔方陣を使った魔法だ。目に見える型があるため、魔法のイメージが創りやすい。属性などパーツごとにイメージを定着できていれば、応用はできるが、大多数の者は完成した魔方陣にイメージを定着させているため、応用ができない。記憶力が乏しく、挫折した者もいる」
説明長いよ、もっと短く。
「少年、潰れろ」
は? って重いよ! 急に重くなったんだけど!?
「これは詠唱だ。今のは対称と属性を指定しただけだが細かく条件を指定するには、もっと長くなり実用性が低いと言える。気取った詠唱をしようとするあまりに長くなり、挙げ句の果てにはイメージを膨らませ過ぎて暴発させたという事例もある」
早く止めてくださいませんかねぇ!
ビウンはなにもない場所に文字を独自の文字を書き始める。
「潰れるんで、止やめてくださいませんかねぇ!」
「すまなかった。まあ、このように魔法の発動には複数の方法があることが分かってもらえたと思う。」
ああ、十分分かったよ、肉体でな!
「今の主流は魔方陣だが、戦場でどんな動きからでも魔法の発動の可能性がある事を忘れないで欲しい。そうすれば、対応も容易だろう。しかし、なんの兆候もなく発動する事もある」
「それって、もしかし、あぁぁぁ!」
重い、重いぃ! ちょっ、手加減してくれよ! やっぱり無詠唱みたいなやつじゃん! てか、潰れる言ったのに、何でまたやるの! アホだろ、この神!
「少年にはこの技術、無基点発動を覚えてもらおうと思う!」
いや、それより、助けて!




