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2章ー4…王太子は駆ける







 シリルは馬車を降り、シアンテ公爵邸タウンハウスの玄関に立っていた。


 渋い表情をしたシアンテ公爵が出迎えるために屋敷の奥からやってきた。



 「これはこれは!殿下わざわざこんなところまでお越しいただきありがとうございます。ただアポイントメントはいただいておりませんが何かございましたのでしょうか?」



 「突然の訪問にも拘わらず出迎えてくれて感謝する。今日は先週の夜会の事をリュドミラ嬢に謝罪したくて参った。」



 「それはそれは。てっきり破棄の件かと勘違いいたしました。失礼いたしました。


 ただ大変申し訳ないのですが、娘は今王都にはおりません。また戻りましたらご連絡致しましょう。」



 「いない??・・・リュドミラ嬢は・・・どちらに行ったのか教えてもらえぬか?」


 「殿下。娘は心の病を患っております。あの夜会の後、私共の声掛けにも反応してくれず、ずっと泣き続けて心を壊しておりました。致し方なく娘の心の安全の為第二の故郷へ送り出したのです。

 娘は病が治りましたら戻ってくる予定です。少なからず娘の病に関しては殿下にもお心当たりがおありの様ですので、居場所をお伝えすることはできかねます。ご容赦下さい。」



 「・・・・そうか・・すまない。原因は私で間違いないだろう・・・リュドミラ嬢の回復を心より願っている。」



 シリルは後ろ髪惹かれる思いでシアンテ公爵邸を後にした。



 「・・・殿下がどう動くか。私はその行動で判断いたしますよ。」


 シアンテ公爵はキッカケはシリルの前に転がした。それをどう受け取り行動するのか。それ次第によっては強制的な婚約破棄でも構わない。


 娘を守る父親の、強い意思が瞳の奥には潜んでいた。






***

 




 「・・・・・」


 「・・殿下。朝からだんまりはご遠慮いただけませんか?」


 あの夜会の夜以降ミラはシリルに対しての物言いが少し雑になった気がする。それは男として情けないからだろうか。

 溜息を吐き今朝の事を伝えた。


 

 「今朝リュドミラに会うために侯爵邸へ行ってきた。」



 「そうなんですか?!シアンテ令嬢には会えましたか?!」


 嬉しそうに聞いてくるミラにさらに気持ちが重くまりながらも話を続ける。


 「彼女はすでにどこかに行ってしまったらしい。」



 「なんですって?!ど・・・どこに行ったか教えてはもらえなかったのですか?!」


 「・・・無理だった。私のせいだから教えるわけがないと言われてしまったよ。ただ第二の故郷とは言っていた気はするが・・・彼女の故郷など聞いたことがないからわからぬ。」



 「・・・そんな・・・いつ戻ってくるかもわからないんですか?」


 

 「リュドミラは心の病を患ってしまったらしい・・・恐らく私が原因だ。病気が治るまで王都には戻らないらしい。」



 「・・・そんな・・・本当に結婚できなくなっちゃうんじゃないですか?!」



 「・・・恐らくな。そのつもりはあると公爵の顔には書いてあった。」



 「・・身から出た錆とはまさにこのことなのでは?」



 「ミラに言われなくても・・それ位わかっている。」


 渋い表情で黙り込もうとしているシリルを見つめながら、どうしたものかとミラは考えあぐねていた。


 しかし、ミラはシリルよりもリュドミラの事をわかっていると自負していた。彼女は隠し事などないかのようにたくさんの事をミラに教えてくれたからだ。



 「第二の故郷・・・うーん・・実はシアンテ令嬢に色々昔の話は聞いていたのですが、シアンテ令嬢も白色病で10歳まで闘病していたそうなんですよ。」



 「な!なんだと?!」


 「なっ!!大きい声出さないでください!びっくりするじゃないですか!!」


 「・・・すまない。」



 ミラの言葉に明らかにシリルは動揺していた。



 (白色病・・殿下にとってどんなかかわりが?私がミラでいることと関わりがあるのかしら?)



 「それで何か聞いているのか?」



 「はい。実はシアンテ令嬢も、私と同じように、サマステリアで過ごしていたそうなんです。恐らく生まれてしばらくしてから10歳までと考えると、かなり長い期間なのではないかと思うんですよね。第二の故郷になりませんか?」



 シリルは嫌な汗が体中から流れ落ちるような感覚に陥っていた。



 (白色病・・10歳・・サマステリア・・まさか・・そしてシアンテ公爵の親族はサマステリア領主リストン辺境伯か?!)



 「リストン辺境伯爵邸だ!!彼女はそこにいるに違いない!」



 「ど・・・どうするんですか?!」


 ドキドキしながらミラはシリルに問う。



 「私は王宮に戻り偵察部隊を連れてサマステリアへ馬で向かう!恐らく1日半くらいでつけるはずだ!ミラは行きたいのであれば騎士団の護衛をつけるから馬車で来ても構わない。どうする?もしかしたらアルテンド伯爵の息のかかった者たちが大勢潜んでいるかもしれない。危険かもしれないぞ。」



 「行きます!!私もシアンテ令嬢にお会いしたいです!!大切な友人ですから!」


 

 「わかった。ならば騎士団に連絡をしておいてやる。気を付けてくるんだぞ!」



 「はい!ありがとうございます!!」



 シリルは王宮へ戻るとアルテンド伯爵の偵察部隊として向かわせていた部下たちを召集し、すぐにサマステリア偵察部隊を編成し直した。そして馬にまたがると颯爽とサマステリアに向かってシリルは駆けだすのだった。



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