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…ん? ……あれ?

「アリア。おなか一杯になったの。そうなの。良かったわね」


 お母様の声だ。何を言っているかは分からないけれど優しい声。ミルクを飲ませてくれる手。優しく撫でてくれる手もいつも一緒。幸せな感触とおなか一杯に眠くなる。ふわぁ……おやすみなさい。




「アリア! 立っち上手だなー! お!? 歩くのか!? 歩くのか!? 歩…まだ駄目かぁー。尻餅も可愛いぞ! はいはいも最高だ!」


 これはお父様の声だ。やっぱり何を言ってるのか分からないけど喜んでくれているのは伝わってくる。バランスを崩してぺたんと座り、歩くのは諦め、はいはいで近付くと私を抱き上げてくれる手が下りてきた。抱っこー。




「お嬢様、よく食べて下さいますね。なんて可愛いのでしょう」


「苦手なものを食べるとべーってするのも可愛いです」


 これはコック長の声だ。あと、メイド長? ふふふ。と、近くでお母様の声も聞こえる。囁くような静かな声。離乳食だ。何が口に入れられるか分からないどきどきとはらはらが、ある意味たまらなかったなぁー。御馳走様。




「お嬢様! 今日は何で遊びますか!? ぬいぐるみ!?」


「積み木!?」


「追いかけっこ!?」


「絵本もありますよー!!」


 これはメイドさん達の声。休憩になると私と遊んでくれる。そして休憩が終わるととぼとぼと去っていく。お仕事中でも主人や上司の目を盗んで笑顔で私に手を振ってくれるメイドさん達。様々な女性が皆笑顔で面倒を見てくれた。




「お嬢様。…え? 高い高いですか? 内緒ですよ? そーれ! そーれ!!」


「ん? 今日はくるくるですか? 誰にも言っちゃ駄目ですよ? くるくるー」


「お嬢様ー、待て待てー!! 待ーて! あ!! びっくりしちゃいましたか!? すいません!!」


「あ!」


「あなたお嬢様を泣かせたの!!? 何て事を…」


「やだぁ…。信じられない…」


「最低ー」


「ち、違うんだぁー! 誤解だぁー!!」


 家には沢山の男性もいた。最初は赤ちゃんアイで物凄く大きな声の低い怖い人と刷り込まれて近付けなかったけれど、そこは一度人生経験してるそこそこの大人だったので、まあまあ大丈夫だろうと近付いたらメイドさんとは違うアクティブな遊びを色々としてくれた。今しかできない特別な遊び。これは新鮮で楽しかったなぁー。




「お嬢様。今日もお疲れ様でした。足下お気を付けて」


 これは馬車を降りる時の。




「そうです。正解です。良くできましたね」


 これは家庭教師が。




「美しいターンでした。素晴らしい」


 これはダンスの…。




 …ん?






「アリアネル。君といるといつも楽しいよ。空気がきらきらと輝いて見える」


 これは王子様だ。この国の第一王子。何でか知らないけれど割と幼い頃に王子様とご対面をしていた私。それからまぁ、時々会わせて貰ってお茶をしたりお話をするようになった。王宮の使用人の方々にも家と同じ様に可愛がって貰ったなぁー。




「アリアネル。もっと遊んでよー」


 これは第二王子。ご誕生の際には親族でもないのに特別にご対面させて頂いた。小さな小さな赤ちゃん。可愛くて可愛くて堪らない。ベビーベッドにしがみついてずっと寝顔を見てた。




「アリアネルー!! 帰っちゃやだ!! やだー!!」


 これはお二人の妹の王女様。ご誕生の際には…同上。




「アリアがいると皆が幸せな気持ちになる。ずっとそのままでいて」


 これは、幼なじみの男の子。子どもの頃からやけに大人びていて優しい子だったなぁ。




「アリアネル様」


「アリアネル様ー」


 それから、それから…。




 きゃー。


 きゃー。




 ……あれ?

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