二十、
二十、
「小さなサイリウムが、土壌に咲いた花々を生かすのでしょう。私が手にした、添える世界には少年の頃を思い出し、不浄の地を祈りで迎える夕焼けの羊飼い。紫の薔薇をバラではないと言い張るような理屈だった面立ちは、むしろ必要ないのだと。」
瞳を開けると、そこはいつかに見た草原だった。
目の前に掴めそうなまやかしを見て。輝く氷花。浮かぶ君の小説は、挿絵を無くした仮初の聖水となる。ナザレ。呼吸を止めた奏者へと。私は窓辺で腰を下ろして。これから繰り出す夕焼けを呼ぶのだろうか...。
「唄声が聞こえる気がしても、それは私の知らない物語となる。」
「そうかな。」
顔の見えない青年だった。闇が覆う月光も雪に沈んだ。此処は夢の世界。それが分かりきっているのに、私は何を問う?操られても構わぬ良心。きっと、理解されない秒針を両親にも言えなかった。癒えない傷跡を、婚約者にも求めるのだろう。けれども、それは汽車。
私を置いて、帰ってしまうのだろう...。
「そのために、俺は生まれたかい?」
「違うわ。」
貴方はきっと、私を知らなかった。お互いを支えるために、私の心が生み出したもの。人魚姫は、泡になって黄金を背負う女王となった。光が拒んだ再生であれど、私は夕闇の指先で耳を塞いでいる。
「草原の星屑を私は、夢と二つのものとして。」
「俺は奏者たる、永遠ならば起死回生を己のものとして。」
「涙を植えたのは。」
「涙を拭いたいと願ったからか。」
忘れられない夜明けの微睡みを掴む...。
「っ...。」
起き上がって、溢れ出した涙を拭う。
「どうしてだろう。」
分かっているのに向き合えない心が、彼との関係まで知らずにいろと、囁くのか。船がゆったりと私を乗せて進む海上。小瓶からサラサラと流れ出す青い砂に、溜息を込めた姫君。私は意味もなく広げた手の平に、涙の透過を望んだのだった。
これは、果たして夢なのだろうか...?




