60 楽しそう
「えっと、正義の味方の必殺技?」
嘘は言っていない。
「そっか!正義の味方、ローファスさんにぴったりだ!イケー、ローファスさんっ!アーンパーだ!」
ああああ、ああああ。気持ち的には吐血。
なんだかとってもパンが食べたくなってきました。
いろいろな具の入った菓子パンや総菜パン。
そうだ!今日はお弁当用に一夜干しの干し肉を挟んだパンを作るんだった。野菜も入れよう。レタスとか合うかな?
あ、レタスで角煮を巻いて食べてもおいしそうだし。畑にあったかなぁ?
「カーツ君、畑に行ってくるね。お米はそろそろ炊いてもいいころだと思うんだけど、頼んでもいいかな?火加減とか分かる?」
「もちろん!任せてよ!」
カーツ君がガッツポーズをして小屋に戻っていった。
二人の激しい訓練で、当たりの地面はぼこぼこ穴が開いてる。だけれど、なぜかダンジョンのある崖は無傷だ。
ダンジョンの入口が落石でふさがっちゃうといけないから避けてるのかな?
なんて見てたら、亀なんとかがダンジョンに向かって飛んで行った。
「あーっ!醤油ダンジョンが!」
いや、違う、初級ダンジョンでもないな、ポーション畑ダンジョンだっけ?
なんでもいい!ダンジョンがなくなっちゃったら、私、どこで働けばいいの?まだまだレベルが5歳児以下なのに!
それに、醤油が!みりんが!料理酒が!
と、思ったら、ダンジョン入口付近に衝突した火の玉はそのまま霧散した。
掻き消えた。
ダンジョン入口は無傷。
おや?
ダンジョンって、不思議存在?入口の岩山とかほかの岩と違う作り?
魔法で守られてるとかなにかあるのかな?
ファンタジーだぁ!でもよかった。
大地震が起きても、ダンジョン崩壊ってこともないんだね。この世界から醤油が消えてなくなる心配をしなくてもいいんだね!
よかったー。
よじよじと、畑へ続く岩場を上っていく。
あれ?もしかして、ダンジョンの上に位置する畑も不思議空間?
畑ではたと首を傾げた。
日本のスーパーは季節を問わずいろいろな野菜が売っているからあんまり疑問にも思わなかったけど……。
この畑って、旬を無視して、いろいろな季節の野菜が食べごろになってません?
それとも単に、この世界の野菜は私の知っているものに似てるけど、ちょっと違うのかな?
「まぁ、いっか。おいしく食べられる野菜がいっぱい、それ大事」
えーっと、レタス、レタス。
「あった!」
たまになってるレタス発見です。食べごろの一つを取って、それから何か使えそうなものを物色。
大根、これ、辛い大根かな?甘い大根かな?サラダにできるかな?
あ、サラダにしたとして何かけて食べる?ドレッシング?……マヨネーズの材料もないし、ドレッシングにしてもサラダ油とかほしいなぁ。いいや。また今度。もし辛い大根だったら煮た方がいいしね。
レタスとトマトを持って岩場を後ろ剥きで降りていく。
しまったな。背負い籠みたいなの無いと辛い。
降りていくと、ローファスさんとブライス君の特訓は終わっていた。
あけ放たれた小屋から声が聞こえてくる。
「あのね、ご飯はね、熱いの。ちょっと覚まさないとおてて火傷するのよ!ちゃんと手を洗ってから、お水をつけてにぎるのよ」
キリカちゃんの声が聞こえてくる。
そっと邪魔しないように小屋の中をのぞくと、ローファスさんが背中を丸めてキリカちゃんの指導に従いご飯をお皿に移しているところだった。
そうだ。今日は皆で焼きおにぎりを作って、ハズレポーションの効果が歩かないか確かめるんだった。
「だめなの、ローファスさん、そんなにご飯つぶしちゃったら硬くなるのよ」
キリカちゃんが立派な先生役だ。
「あ、そうだな、なんか粒の姿が見えない」
粒の姿が見えない?それ、もう団子……。団子は団子で美味しいんだよね。
「うわー、手にいっぱい米粒がっ」
「カーツお兄ちゃん、ちゃんと手にお水をつけてからって言ったでしょう?」
「あ、忘れてた!」
「おいブライス、お前上手だな」
「いえ、ユーリさんのように三角にはなりません……どうすれば三角になるんでしょう?」
「ほら、キリカ一つできたの!」
ふふふ、楽しそう。
主人とは一緒に料理することなんてなかったなぁ。男子厨房に入らずって考えだったから……。
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