少女と、大きな争い ⑥
――大丈夫なのかな、無事なのかな。
私はずっとそのことばかりを考えている。
送り出した後の仲間たちの無事を、ただ祈り続ける。私は神子。だからこそ、私の祈りは届けられることは多い。
それを知っているから、出来る限りこの祈りが神様に届きますようにってそう思っている。
ただね、神子という存在は絶対ではない。私が幾ら祈っても、無事で居て欲しいと思っていても――危険な目にあうことは当然あるのだ。それを知っているから、油断しないでねって沢山言葉を掛けた。
待っている私に出来ることはそこまで多くない。王様って立場になったからこそ私は立場をもっと考えないといけない。うん、ちょっともどかしい気持ち。だけどガイアスと一緒に王様になると決めたのは、私自身。
こういう時には、私がもう一人いたらいいのになんて思う。……でももう一人私が居たとしたら、それは私ではない別の存在ってことだよね、結局。
私達は身一つしか持たないから、出来ることって限られていたりする。
出かけて行った皆のことを考えると、落ち着かない気持ち。
眠れなくなって、私は部屋の外に出る。窓の外から見える景色は、輝く美しい星々。今日は静かな夜だ。
このあたりは時折、魔物の鳴き声とか当然聞こえてくる。
夜に活発化する魔物も当然存在している。そういった魔物は暗い場所でも視野が広かったりするんだよ。だから結構危険なんだって。
でもそう言う魔物もこの場所には近づいてこない。これも私が神子だから。
……私がこの国を大切にしている限り、私が寿命を終えた後もそうだろうってランさんは予測していた。
ただ、そうじゃない場合も想定した方がいんだよね。だからちゃんと見張りの人達も居る。魔物が来ないだろうと措定していても、この国に害を成す人たちがなかなか近づいてこられない状況だったとしても――それでも警戒をし続けることは重要だから。
襲ってくる何かがない状況だと時間を持て余すからって、鍛錬もしたりしている時もあるらしいよ。神子の力ってかなり強い方だと思う。でも絶対はないもんね。
本当に大丈夫なのかな……ってただそればかりを私は考えてしまっている。国が出来て、沢山の人達との関わりが増えている。それこそ私が想像出来ないぐらいの多くの人とこれから関わっていくんだなって考えると楽しみもあるし不安もある。
「ぐるぐるるる?(まだ起きているの?)」
私が窓の外を見ていたら、その場にレイマーがやってきた。私がこんな時間に起きていることが不思議みたい。それにしてもレイマーもこんな時間にまで起きていたんだなってそれにも驚いた。だってレイマーたちってそこまで夜行性じゃないのにな。
もしかしたら仲間であるグリフォンの一部が、仲間たちについていったことが心配でレイマーも眠れなかったのかも。
「うん。ちょっと寝れなくて。皆、大丈夫かなってそんなことばかり考えちゃっているの。もしかしたら……アトスさんみたいに帰ってこないことがあるのかなって」
アトスさんを失ってしまった時に、私はガイアスと誓い合った。
……それからあまり仲間を失わずに来られたけれど、ずっとそれが永遠に続くかと言えば違うとは思っている。だから警戒もしなければいけないし、油断なんてしてはいけないの。
「ぐるぐるるるるるう(気をつければ大丈夫なはずだ。仲間を信じるんだ)」
「うん。そうだね。信じていないわけではないんだけどなぁ。それでもやっぱり心配だよね」
怖いなとか、そんな感情ばかり。本当に誰かが傷ついたりしたらどうしようか。怪我なら私の力で治すことは出来るけれど……。命は失われたらどうしようもないし……。
「ねぇ、レイマー。私ね、皆のことが大切だし、私はガイアスと一緒に王様になったから……もし誰かが傷ついてしまったら何かしら対応はしなきゃいけないんだよね。その時、私……ちゃんと出来るかなぁ」
いつか選択しなきゃいけないこと。私がやらなければならないことで躊躇してしまうようなこともきっと起こりうる。
もしそれが起きたら……どんな対応をすべきだろうか。
これからすぐじゃなくても、私がずっと王様として生きて行くならそんなときが来るんだなぁ。
自分の手で、自分の意思で人と敵対しなければいけないタイミング。私はその時に、どんなことが出来るだろうか。
「ぐるぐるるるる(そうなった時に考えればいいだけだ。それに理由があるなら仕方がない)」
「まぁ、そうだね。でも私が例えばさ、誰かを守るために、人の命を奪ったりしたら結局それで悲しむ人がいるから……うん、だからもしそういうことになったらちゃんと自分は悪くないって思うんじゃなくて……全て受け入れた上でやらなきゃ駄目だよね」
向こうだって私達と敵対をする場合は、きちんとそのことを踏まえた上で向かってきているだろうし。
――少女と、大きな争い ⑥
(神子の少女は、夜にグリフォンと会話を交わす)




